第90回 2019年上半期話題になった本から―ハンス・ロリング『FACTFULNESS』ほか

2019.8.1
雨の日も里山三昧

最近、印刷された本よりも、電子書籍を読むことが多くなった。
移動中、携帯しているスマホで読めるので、本を持ち歩くことが煩わしく感じられるようになった。
このため、電子化されている本を優先して購入するようになった。

話題のビジネス書は、発刊と同時に電子化されている。
やや専門的な本でも、経営学や経済学分野の電子化は進んでいる。
新書は、刊行後少し待つと電子化されるようになってきた。
いきおい、以前と比べると、そうした本を読むことが多くなった。

以下に示した本は、どれも今年上半期に出版され話題になったものだが、私はすべて電子書籍で読んだ。

ハンス・ロスリング『FACTFULNESS―10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP、2019年) 
グローバルな問題を考える際に事実として知っておいた方がいいデータが、13のクイズとともに説明されている。貧困、格差、環境などに関する重要なデータが紹介されており、SDGsに取り組もうとするときにも役立つ。
私にとって著者のハンス・ロスリングという人は、この本を読むまで、TEDでプレゼンする人というイメージだった。そのプレゼン(たとえば、「地球規模の人口増加について」)は非常にインパクトがあるもので、授業の中で何度も学生に見せたことがある。
本書で出される13のクイズの平均正答率は、3問に過ぎないという。クイズは3択形式なので、当て勘でも1/3、つまり、4~5問は正答できるはず。それよりも低い正答率となるのは、思い込みがあるからだというのが著者の主張である。
そこで、副題に「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」とあるように、人びとが陥りがちな10の思い込みを明らかにし、正しくデータを見る方法を説いている。
著者の説明は、TEDでのプレゼン同様、とても明解だ。しかし、正答率が低くなる理由は、10の思い込みというよりも、中国とインドに対して抱きがちな誤ったイメージという要因に集約できそうに思う。
本書では、数量的に平均的に世界を見るので、人口の多い国の影響が大きくなる。つまり、これらの国の現在の姿をもとに答えると、正答率は上がるだろう。日頃、グローバルな市場動向を見ている人にとっては、中国やインドのインパクトの大きさはよく理解しているはずだから、本書による知的刺激は弱いだろう。しかしながら、今でも、中国やインドが遅れた貧しい国だというイメージを持っていると誤答しやすく、本書の啓蒙効果は十分に発揮されるに違いない。

大澤真幸『社会学史』 (講談社現代新書、2019年)
社会学者の中で著者の本は、よく読んでいる方だと思う。

デービッド・アトキンソン『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』(東洋経済新報社、2019年)
イギリス出身の著者は、現在日本に住み、文化財の修繕・補修を手がける会社を経営している。ゴールドマン・サックス社員時代は、日本経済の「伝説のアナリスト」としてその名を高めたという。
近年は、『新・観光立国論』(2015年)『新・所得倍増論』(2016年)など、

望月優大『ふたつの日本―「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書、2019年)

黒川創『鶴見俊輔伝』(新潮社、2019年)

東浩紀『テーマパーク化する地球』(ゲンロン叢書、2019年)

(松村正治)

雨の日も里山三昧