第48回 選米の儀と新米食べ初め

2021.1.31
その他

★ 里山レシピ(農閑期) 蒔く→ 道具づくり→ 採種

冬は農閑期。と言っても、野良仕事にお休みはないのです。

師走の12月。田んぼは、藁を敷き畑おさめ。

畑では、この時期に芽を出したマメ科に藁囲いで養生。収穫と種採りが終わった後のオクラを倒し、畑の土に敷く。

家では、来年に使う道具を作り、自家採取した種を仕分けして保管する。

マンションのベランダや部屋の中も、田んぼや畑の生き物と同じように、いろんな種類の種があり賑やか。

 

こちらは、モモレンジャー。

風船カズラの種ですよ。

三つに分かれ、各部屋に種が入ります。

 

終盤に実ったヘチマ。

タワシへ加工中。
きれいに繊維が採れるかな?

うちの里山。週末1反の野良しごとは、田んぼ、畑、ベランダ、居間、台所へと続きます。

 

田んぼは一人では出来ない

自宅の神棚用につくったしめ縄。一ヶ月経ちますが、色は変わらず紅白の2色のまま。神様の門をかざっています。

5種の新米。籾付で保管します。うちでは、食べる時に籾摺りをする「今摺り米」です。精米も食べる都度に行います。

昨年は「あきさかり」「チベット黒米」「紅染めもち」「朝日」(コシヒカリやササニシキの先祖)、「初霜」(寿司米で使われる事が多いと聞きます)の五品種を作付けしました。

田んぼは、二十数年も続く自然農の会の区画。
各自の区画は各自で管理しますが、月一回の共同作業で区画全体の整備を仲間で行います。

最近は共同作業の日に暗渠(あんきょ)作業をしたりと、かなり土木びと化しています。

 

多品種栽培の面白さ

今年の収量の傾向は、早生品種の伊勢あかりなどを作付けした仲間は、登熟期の高温障害で収量が減っているようです。

わたしたちの作付けは、大きく減ることはなく例年通りの収穫量でした。

早生が1品種、初めての作づけが1品種の合計5品種。
品種が多いと、脱穀や唐箕がけを5回に分けるなど、品種ごとの管理を行うため手間がかかりますが、(でも、育ち方がそれぞれ違うから、観察が楽しい!!)リスク回避も出来たようです。

 

田んぼは、水の管理が大事だから雨や日照りで水位がどうか、お天気の動向にみなで気をもみます。

各区画に大きな鳥よけの網を皆で張り、網が台風で網が飛ばされないように張った網を外すか検討したり。

カルガモは可愛いのだけど、ジャンプして田んぼに飛び込むから、稲を倒されることもあります。
(ありがたいことに、私たちの区画では、カルガモが草刈りをしてくれ、猛暑の草刈り作業をすることなく助かりました。)

水位調整や、仲間の区画にカルガモやスズメがいたら報告が届いたりと、苦楽を共にする仲間です。

 

撰米(せんまい)の儀

撰米の儀はお米の収穫の後の新年一月に執り行われます。みなで集まり年貢米の選別作業です。
今年は、新型コロナ対策のため、各自で行いました。

年貢米は収量の8パーセントを会に納めます。みなから集められたお米は混ぜて一つにし、その一部が田んぼを行っている仲間に再分配されます。

計量中

計量

 

撰米の道具

撰米の道具

 

石ころ、ゴミ、不出来な米を取り除きます

 

取り除いたもの

 

♡ようやく新米をいただけます。「今摺(すり)米」

玄関を開けたら籾摺(もみすり)機。
マンションに納屋が付いていたらなぁ。玄関も大事な野良道具の置き場です。
あ、ちなみに車は移動納屋。週末一反の野良暮らしの工夫です。

新年を迎え、自然農の田んぼの会で執り行われる撰米の儀が終わると、いよいよ新米の食べ初め。

お米はその都度、精米していただくのが美味しいですよね。
我が家のごはんは、「その都度、精米」+「今摺(すり)米」。
玄関に籾摺り機が常駐していますから、ありがたいことに、今さっきお米から籾を外したお米を炊いていただくことが出来ます。♡

ミックス米を精米中

 

新米は、まずその年の出来具合を確かめたいから白米でいただきます。

その次に、玄米、三部づきなど、精米を変えて味比べをします。

▼紅染め、あきさかり、チベット黒米入りの糠の色。こーんなに違います。

左:チベット黒米を中心に5種米、 右:紅染め

あきさかり

 

▼紅染めを精米し、炊き比べ

紅染め炊きあがり(玄米)

 

紅染め炊きあがり(白米)

 

白米にした紅染めの研ぎ汁

 

白米にし研いだ後の紅染め

 

玄米:紅染め

 

マンドラゴラ牛蒡の内と外!

日本一うまい牛蒡こと大浦太牛蒡。
こぼれ種がアスパラガスの近くで根を張るものだから、地中で切磋琢磨しマンドラゴラになりました。

皮は頑丈そうですが、煮ると味わい深いのです。
こちらはマンドラゴラファミリーの中で、細いもの。

煮ると艶のあるやわらか牛蒡に仕上がりました。

 

里山レシピ

里の恵みの感謝を、お節に込めて。

◎「射込み牛蒡」
ごぼうに込められた願いは、幸せが長くしっかり根付くこと。

大浦太牛蒡は芯に空洞ができるタイプ。
マンドラゴラを見てみると、しっかり空洞が出来ています。
これは!レンコン同様、将来の見通し良しというおまけ付きですネ!。

これ、1本分のマンドラゴラ!

牛蒡の空洞にテンペを詰めて。ジックリ煮込みます。
甘めの付けと牛蒡の香りが美味しい。

◎「煮しめ(筑前煮)」
根菜を中心に縁起のよい食材を一つの鍋で煮込む。
由来は、家族が仲良く暮らし、末永く繁栄するように。

筑前煮の人参。切り込みだけ入れたねじり梅もどきでしたが、
梅は春告げ花。一つづつ包丁を入れて、ねじり梅を作り直すことに。
少し、手を入れるだけで、きれいですね。

◎「紅白なます」
紅白の水引になぞらえ、根菜が地中に根を張り育つことから、一家の平安を願もの。

ありがたいことに、カボスが豊作だったから採りきれず、熟すまでカボスを残すことができました。豊作の感謝をゆず釜に込めました。

*** 来年に持ち越し

縁起物のクワイやチョロギ、田んぼや畑を掘れば採れるけれど、手が回らない。
収穫した野菜は土を洗い、選別し、料理するもの以外は養生して保管。
お米もお野菜も、収穫してから食べるまでがひと仕事ですネ。
そうそう、自家採種ですから食べることより来年用の種採りが優先。
うっかり調理してしまったら、今年の作付けができませんものね。段取りが大事。
自前の野菜で揃えるお節は、少しづつ品数を足してゆこう。

甘いものの重。ぜんざいは、畑で採れた小豆を煮て。

・・・
ありがたいことに2021年も引き続き、週末のノラしごとが始まります。
お正月に自前のお野菜で用意したお節を用意できる幸せをかみしめて。
自然の摂理の中にある命の営み。
人間も自然の一部。
十二年目を迎える小さな森のある畑で、その知恵にどこまで触れることが出来るだろうか。
(中川美帆)