第五十二話 MDGs(ミレニアム開発目標)を少しだけ振り返ると
2021.1.31水の流れは絶えずして
SDGsの話を進めたいところですが、その前にその少し、SDGsに先だって2015年まで実施されていたMDGs(ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)の取り組みについて、2006年から2010年の5年間バングラデシュで発生している地下水のヒ素汚染対策のプロジェクトに参加していた当時、MDGsと関わる機会がありましたので少し紹介したいと思います。よく考えると、帰国してもう10年が立ってしまいましたが…
MDGsは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合して、共通の枠組みとしてまとめた国際社会共通の目標と理解されています。主に国連や政府が主体となって、発展途上国の極度の貧困と飢餓の撲滅など8つの目標を掲げ、課題解決のために先進国が途上国を支援するというスタンスで進められていました。
ヒ素汚染対策プロジェクトに参加した2006年当時は、MDGsについては全く知識もなく、最初の3年間は、地方都市の農村地帯で住民やNGO、地方行政のみなさんとひたすらヒ素対策を進めていましたが、2008年から首都ダッカで政府と仕事するようになると、MDGsの名前を耳にするようになり、参加している国際協力がMDGsに位置付けられていることを認識するようになりました。
ヒ素対策は、安全な飲用水の供給とヒ素中毒患者支援が主要な課題となっていたため、MDGs目標7「環境の持続可能性の確保」のターゲット7.C「2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させる」に位置付けられ、UNICEFが管理を担当していました。MDGsでは、国毎に達成目標が明確に示されており、定例会議で関係する国際機関やNGOなどに対して報告が求められ、進捗状況が共有されていました。このため、到達点を意識しながら違和感なく対策を進めることができたのですが、会議は水供給と医療関係とがいわゆる縦割りで行われ、同席することはほとんどありませんでした。しかし、実際の現場では、「安全な水供給」「ヒ素汚染中毒患者の治療」「ヒ素中毒にならないための啓発や教育」「水を手に入れるための収入向上」を総合的に考えながら横断的なプロジェクトを進めてきたことで、課題解決が進むことがわかっており、SDGsを先取りした対策になっていたのかも知れません。