第五十話 地球温暖化の影響について
2020.10.31水の流れは絶えずして
公害問題から環境問題へと時代が移行してきた頃の1988年に気候変動に関する政府間パネル(ICPP)が設置され、1992年6月に環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット・リオサミット)にて気候変動枠組条約が採択されてから約30年、先日の菅首相の所信表明演説で2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを表明されました。3月に欧州気候法案(Climate Law)を正式に公表しているEUの欧州委員会に比べ、政策が遅れをとっている感はありますが、それでも歓迎すべき発言と考えたいと思います。やっと折り返し地点ということでしょうか。
さて今回は、この温暖化の影響を受けていると考えられる南方種の北上についての話題です。
今年のトンボ調査で、タイワンウチワヤンマがかなり増えてきていて、元々生息していたウチワヤンマの生息を脅かしてしまうのではないかという懸念が出されている、という情報がありました。以前は台風の後などに迷入種としてたまに見られていただけでしたが、ここ数年の間に定着しているようです。
南方からきたタイワンウチワヤンマ(左) 以前から生息しているウチワヤンマ(右)
尾のうちわの模様の違いで見分けることができる
南方種が北上してきたという話は、例えばナガサキアゲハやツマグロヒョウモンなどの話を聞いたことがあると思います。これらのチョウは、2000年頃から神奈川県でも定着するようになったようです。その他にも地球温暖化の影響と南方に生息する種の北上について多くの調査研究が行われていますので、興味ある方は、検索してみてください。
ところで、地質的な時間の長さで地球の気候変動をみてみると、氷河期が何十万年から数万年の周期で訪れており、温暖化の時には南方系の動植物が生息していたことが化石からわかっています。例えば千葉県館山市には、今より地球が暖かかった6000年前の縄文時代に作られた沼サンゴ層と呼ばれるサンゴの化石を見ることが出来ます。いわゆる縄文海進の時代、温暖化による海面上昇で新横浜付近まで海が入り込んでいた時代です。
このため、人為的な影響による温暖化でも南方種が北上してくるのは自然のながれなのだと思います。だたし、現在のような人為的な地球温暖化においては、気候変動の早さが早すぎるため、移動能力の小さな生物(植物)などは気候変動のスピード-について行くことが出来ず、生態系のバランスが崩れてしまうことや、南方種の北上によって農作物への被害が出ることへの警戒は必要と思います。
SDGsの目標13では、地球温暖化防止についてターゲットを設定しており、行動することは重要です。環境行動を起こすきっかけとして、在来種を保全するというターゲットがあってもいいと思います。