水の流れは絶えずして

第四十六話 環境30年 SDGsを考える

2020.6.1
水の流れは絶えずして

最初から私事ですが、個人コンサルタントの仕事をしていると毎年4月は、年度末の慌ただしさから抜け出し、一年で最ものんびりできる時期なのですが、今年はコロナウィルスの影響で5月末までその状況が続いてしまいました。この間、自分自身が関わってきた環境問題や、将来のどのような社会を目指していくべきなのかなどなど、いろんなことを考える時間を得ることができました。
2018年末以来、しばらくの間コラムをお休みさせていただいていましたが、「環境分野」をとりまく社会情勢を振り返りながら、2030年の横浜を考えていと思います。

第1回目はSDGsについて考えてみました。
SDGs「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択されたものです。しばらく静観していたのですが、昨年から、SDGsについていろいろと学ぶ機会を多く持つことができ、よこはまかわを考える会の会報や教育文化研究所発行のJANなどに投稿もさせていただいたことで、その取り組み方法が少しずつ見えてきたように思います。

1.環境問題30年をふりかえる
さて、私自身が最初に環境問題と関わり始めたのは、高校生の時に所属していた科学部で、地域の河川の環境調査を行ったことでしょうか。その後、大学時代は地質学を専攻し、地盤沈下や地下水保全を学ぶ機会があり、卒業後5年間は民間コンサルタント会社に勤務しながら、研究会活動で地下水保全の調査なども行っていました。(このあたりは追々話題にしていきたいと思います。)

本格的に環境問題に取り組むきっかけとなったのは、1991年に横浜市に就職し公害対策局(現在の環境創造局)に配属されたことが大きかったと思います。そういう意味では、今年度は30年を迎える年になります。
私が横浜市に就職した1991年は、6月に公害対策局から環境保全局に改組された年でした。
公害対策では加害者と被害者、つまり発生源となる工場・事業所と市民生活との対峙が明確でした。公害対策基本法制定の背景には、高度経済成長期に生じた四大公害病を主とする公害問題と国民感情があったといわれています。
公害の時代から環境の時代へ移行した当初、環境問題や地球温暖化問題では、発生者が必ずしも企業ではないこと、被害者が明確でないことなどで、取り組みの難しさが議論されていたのを思い出します。

昭和の公害の時代から平成の環境の時代に移行して約30年、行政機関の部署名も公害から環境に変わり、大学では環境掲げる学部が多く作られてきました。しかし、このところ学生の関心も薄らいでいるようで、『環境』の看板を下ろす大学も目立ち始めています。原因の一つに、環境で就職できない、飯が食えない、といったことがあると思います。このあたりの話題は、別の機会に書きたいと思います。

2.SDGsにどうとりくむか
環境問題への関心が薄らいでいるようなことを書きましたが、実は薄らいでいるのではなく、「日常」になりつつあるのだと理解しています。
今の時代、環境に配慮した生活や企業活動を行うこと、つまり、自然環境や野生生物を保護・保全すること、ゴミを減らすこと、エコな生活を送ること、環境へ負荷を与えない企業活動を行うことが当たり前の時代となり、取り組みを行わない企業は価値を失うような時代になってきました。
環境活動に取り組む立場からは、とても喜ばしい時代になってきたと思うのですが、反面、環境問題だけを取り上げて活動しても、活動を次世代へ継承したり、発展させようとしたりするための魅力や価値を見いだしにくくなってきたことも実感しています。こんな時期、SDGsは環境分野の活動を考え直し、価値を高めるツールとして有効だと考えるようになりました。

SDGs、平成27(2015)年9月25日に、「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」としてニューヨーク・国連本部で開催された国連サミットで採択され、17の持続可能な開発のための目標(SDGs)と169のターゲットが平成28(2016)年から平成42(2030)年までの国際社会共通の目標として示されました。
SDGs目標とターゲットは、いろんなところで紹介されています。総務省のホームページを紹介します。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/kokusai/02toukatsu01_04000212.html
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

ところで、2019にスペインマドリードで開催されたCOP25で行われたスエーデンのグレタ・トゥンベリさんの演説に対して、アメリカや日本の多くの財界からの批判があったことを記憶している方も多いと思います。この社会の反応は、人間生活(安全保障)より経済発展を優先させていた公害問題が顕著となった高度経済成長期と重なるものがあると感じました。地球温暖化防止に向け先進的な取り組みを進めている企業も多くある中、経済優先の政治によって、地球温暖化ガスの排出量の削減にほど遠い現実があることが露呈した批判であり、加害者と被害者の関係が見いだしにくくなったといわれてきた環境時代において、結局は公害時代の社会構造と変わっていないのではと、考えさせられた出来事でした。今年に入って世界的な社会問題となっているコロナウィルスの影響により経済活動が止まったことで、地球温暖化ガスの排出量が急激に減少しているという報告が多くされています。多くの報告では、経済活動が再開すれば元に戻ると予測されていますが、新たの社会活動をどのように構築していくか、につながる課題だと思います。

「環境」問題とは、何か個別の事象+環境問題で成り立つ総合学問だと個人的には思っていす。環境への取り組みが当たり前になっている今日、この原点に立ち返り、他分野との連携や融合が必要なのだと思います。ただ、どのように連携ができるかが環境分野で活動する立場で見つけることが難しいのだと思います。SDGsは、それぞれの活動の対象となる目標と他の目標やターゲットがつながること、例えば、生物多様性と街づくりや健康福祉などとの連携などによって、環境活動の新たな価値を創出することのできることが期待できるツールではないでしょうか。
こんなことを考えながら、169のターゲットに対して、NORAの活動が関わることができそうなターゲットを概観してみる12の目標でから30ターゲット(1.5 2.1 2.3 2.4 2.c 3.9 6.1 6.4 6.6 7.2 7.3 7.a 8.9 11.6 11.b 12.2 12.3 12.b 13.1 13.3 14.1 14.2 15.1 15.2 15.4 15.5 15.8 15.9 15.b 15.c ゴール17)をピックアップすることができました。もちろん、考え方によっては他にも連携できる項目があると思いますし、どのように連携していくかは熟考が必要と思います。

このSDGsを「はやりの政策でしょ」と片づけてしまうことか簡単ですが、活用することで新たな活動につながることができないか、挑戦していきたいと思います。

水の流れは絶えずして