第三十五話 棚田と谷戸田(その2)

2016.11.1
水の流れは絶えずして

前回は和歌山で見てきた棚田のお話をしました。わたしは棚田と谷戸田は、成り立ちや土地利用から分けて考えたいと思っていましたが、もう一度棚田について確認してみました。例えば、農水省関東農政局の棚田百選のホームページ(http://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/tanada/)では、
「棚田(たなだ)とは、傾斜が多く平地と比べて生産条件の不利な、中山間地域と呼ばれる地域において、急傾斜の斜面(斜面勾配が1/20以上)に開発された水田のことです。」と紹介されており、棚田100選では、栃木県茂木町石畑の希少昆虫ハッチョウとんぼが生息している谷地田が選ばれています。
また、棚田ネットワークのホームページでは、「棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に作られた水田のことをいいます.....」とあることから、一般的には、谷戸田は棚田の一つと見られているようです。

さて、棚田と谷戸田の違いは何でしょうか。一番大きな違いは、棚田は基本的に尾根斜面に広がり、谷戸田は谷の底につくられることだと思います。このため、棚田に水を引いてくるということはとても大変で、棚田より標高の高い谷から、延々と何キロもの水路を築いてこなければなりません。

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一方谷戸田は、谷底にあるという立地から、湧水からの流れを直接引き込むことができるため、あえて水を遠くから引いて来る必用はありません。しかし、横浜で谷戸田が形成される源流域は水量、つまり湧水の湧出量が多くないため、広いエリアに水を供給することが困難で、そのため、上流にはしばしばため池がつくられています。

ところで、一口に谷戸田といっても山の深さによってその形態が異なります。例えば横浜南部の三浦丘陵を刻む瀬上や氷取沢では、谷底平坦面にある水田から尾根頂部までの比高差が50m以上あるため、全体として奥深い谷の印象を受けます。一方で、多摩丘陵や下末吉台地を刻む新治や恩田の谷戸では、水田と尾根頂部との比高差が20~40mぐらいで、尾根斜面の傾斜も横浜南部より緩いため、明るく開けた印象を受けます。

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谷が深く感じる瀬上沢

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比較的開けた感じがする新治の谷戸田(上)と鎌倉山崎の谷戸(下)

谷戸田は横浜の原風景を象徴していると思っていますが、コラムを書いていて、横浜市内や周辺に棚田はないのだろうか調べてみたくなりました。