石田のおじさんの田園都市生活

第69回 自給を考える その1

2014.5.31
いしだのおじさんの田園都市生活

山梨、どうだった?
・初心者を指導しての田植え、って感じかな。
エラそうに。
・いやいや、子どもの頃に家の作業を手伝わされたという人もいたよ。
農家出身?
・それがイヤで都会に来たのになぁ、って、言っていた。
リアルだね。
・あとはほとんど田んぼに入るのも初めての人ばかり。
何人くらい?
・12人でね、2日に分けたけど、正味で4時間半くらいで、1反8畝(1800㎡)植えたよ。
手植えですね。
・機械なら一人で1時間くらいだよ、なんて言いながらね。
それを言っちゃあ、、、
・紐張って横並びで号令一下。あれは、俺も初めてだったよ。
初心者?
・ま、ね。25年以上田んぼやっていて初めて。
横並びの集団行動、って、キライなはず、だよね。
・そう、ダイッキライ。するのも、させるのも。でも、思ったほどではなかった。
どういうこと?
・小学生とかにああいう田植えをさせたら田んぼが嫌いになるんじゃないかと、、、
うん。
・見ていて心配になることがあるだけど、ね。でも、やっぱり田植えは楽しかった。
みなさんも楽しめた?
・うん。感想を聞いたらね、みんな「楽しかった」とか、「気持ち良かった」とか。
場所が良かったんじゃないの?
・そうだね。森に囲まれて、静かで、「無心になれた」という感想もあった。
無心ですか?
・稲を植えれば米になることは知っているから、食うことに結びついた仕事で。
うん。
・まぁ、田植えだけに没入できたわけで、それが「無心」かもしれない。
無心になれる場だったんだね。
・横浜から、仕事から、生活から、離れて、、、ね。
非日常だったわけだね。
・うん。ホントは農を日常にしたいわけだけど、先ずは、入り口だから、、、
とにかく田んぼにはまることが大事?
・そうだよ。「五感を使っている実感があった」っていう感想もあったよ。
横浜では?
・山梨の前日は林くんの田植えを見学したよ。
見学?いっしょに植えなかったの?
・今回は遠慮しておいた。
なんで?
・林くんのお米、めったに買わないしね。
お得意さんは手伝いに来るの?
・いや、そういうわけでもないようだし、、、
ハギレ悪いね。
・お得意さんは、林くんの作るお米に満足してお金を払うんであって、
別に田植えをやってみたいわけではない。
・そう。
田植えをやってみたいのは、また、別のママ友とか、、、
・俺とか、、、
石ちゃん、ママ友と仲良くしたいの・
・イヤ、イヤ、何言ってるの?手伝いだよ、手伝い。
ママ友の手伝い?
・そう。
林さんの手伝いでしょ。
・手伝う、と、邪魔をする、のサカイメがはっきりしないから、、、
そうなんだ。
・だから、邪魔しているママ友を手伝いになるように指導する。
何を言っているんだか?
・ハハハ。いずれにしろ、田植えは見ているだけでも、テンションあがるよ。
日本人の血が騒ぐ?
・いや、俺の場合、両棲類に近いのかも、、、泥と水があればイキイキする。
ははは。私も両棲類とお付き合いして、田植えの季節、意識するようになりました。
・日々、田んぼを見ていられる暮らしがいいよ。三鷹には田んぼがないじゃん。
まったくないわけでもないでしょ。ホタルもいるし。
・あるね。公園内の体験水田が。でも、農家が生産をしている田んぼは無い。
都内には田んぼあるのかなぁ。
・調布、府中、小平あたりでは見かけるね。
ネットで見ると都内全体では300ha 以上あるらしい。
・へぇ、スゴイね。横浜の160haより多いんだね。
神奈川だと4000ha、北海道は22万、新潟で15万。日本全体で250万。
・こっちの統計では全国で160万だけど、、、
あらら。
・水田面積と水田作付面積ではチガウみたい。でもずいぶん違うなぁ。
混乱する。
・そんなに減反、転作しているか?
想像できない。
・俺が知っているところ、というか今我が社が耕作している畑も地目は水田だ。
実際は埋めて畑になっているのに水田として数えられているところがあるということ?
・ま、そんなところかな?
統計って、よくわかりません。
・まぁね。国レベルの話を我が家レベルにするか。
どういうこと?
・我が家で食べる米を作るにはどれくらいの田んぼが必要か?
うん。
・1日5合くらいかな?消費は?いや、そんなに食べていないね。
多い日でそれくらい?1袋、5㎏が、10日くらいかな?
・5㎏は33合。1日3合として年間約1000合で、100升、10斗、1石かぁ、少ないね。
お昼はみんな外食だし、、、給食の人が2人いるし、、、
・夕食はコメ無しの人もいるし、、、帰ってこない人もいるし、、、
液体のコメの人もいるし、、、
・1石は150㎏、2俵半だから、、、面積にすると300㎡くらいかなぁ。
どういう計算?
・横浜は平均反収8俵くらい。125㎡で1俵、って便宜上の計算。
ふぅん。
・今、日本人の平均消費量が年間60㎏=1俵、なんだって。
話を戻すと、、、
・我が家が米を自給するとなると、かなりアバウトな計算だけど、300㎡くらい。
余裕を見て500㎡。
・林くんは一人で7500㎡くらいやっている。
つまりそれは15家族分くらい?
・稲作農家の全国平均は57000㎡だからその8倍くらい120家族分。
アバウト、アバウト。計算はニガテ。
・俺も、計算はニガテだけど、なんか計算したくなる。
そもそも何が言いたい?
・自給したい。
は?
・我が家として。
へ?
・田んぼをやって、自給したい。
なるほど?
・ま、今までも思っていたけど、また今後の課題だ。
そうですか。
・「耕して食べる」だ。
、、、
・宮沢賢治は1日に玄米4合食べていた。年間で220kg。我が家より多い。
食べ過ぎじゃない?
・と、今の感覚からは思えるけど、栄養失調ぎりぎりという説もある。
おかずが少なかった。
・牛乳や卵なんてめったに食べなかった。まして唐揚げなんかありえない。
野菜も十分ではなかった。冷蔵庫もなければ、ビニールハウスもない時代。
・うんうん。
一汁一菜?
・具の少ないみそ汁と沢庵数切れのイメージ?
それじゃ、うちの子たちなら、そもそもご飯が食べられない。
・それが現代人だね。
贅沢なのかなぁ?
・俺の職場の給食はご飯で150g。1合は炊くと330gだから半分以下。
それでお腹いっぱいになるんだ?
・まぁ、体調とおかずによりけりだね。
やっぱりおかずの存在は大きいよね。
・明治時代、軍隊に入れば米がたらふく食えたというのが、一食2合くらいだったとか?
そうなんだ。
・ざっくり1日1㎏で年間360㎏=6俵。
面積で1反の4分の3?
・それは現代の生産性での計算であって、戦前は今の半分程度。
じゃ、田んぼは倍必要。1人分が1反5畝?
・それを手作業のみでやる。
うわあ、それだったら軍隊に入ったほうがマシ。
・農家がコメを作っても作った本人は腹いっぱい食えなかった世の中でもあった。
軍隊はありがたい存在。
・それはどうかなぁ?でも、口減らしに軍隊に入ることもあったかも。
田植えと自給の話に戻しますか?
・FB情報でもあっちこっちで田植えをしているよ、シロウトが。
例えば?
・学校水田、公園の体験水田、里山の「谷戸田を守る会」、、、
へぇ。
・40年間放置されていた田んぼの復田作業をしている頑張り屋というか、物好きも、、、
もはや、シロウトさんの時代?
・そんなことないけど、シロウトさんが参加できる場が増えていることは確かだよね。
元祖シロウトのいしだのおじさんは?
・シロウトが大勢シロウトを連れて作業している。
ははは。
・このあいだFB上でちょっとオモシロイ話があった。
うん。
・援農をして作物や山菜をもらったら、自分は何のために働いているのか、って、、、
悩んだ?
・農家の食べることと生きることの直截的な関係を垣間見て、考えちゃったのかも。
そう、誰でも自分の仕事が小さく見えるときはあるよ。
・うん。
モノを産み出しているかどうかも、考えちゃう。
・お金で食べ物を買うのでなく、自分で作り出していたら豊かさを直截に感じる。
不作でも?
・不作なりに食べることを大切にする。
なるほど。
・やっぱり、食べ物を作ることは、生活らしい。
我が家もそれぞれの時間に追われて食べることがおろそかになっているかも。
・自給とはほど遠い暮らしをしているよね。
ま、普通の暮らしですけど、、、
・FBの彼女は、仕事に追われて食べることがオロソカになることで悩んでいる。
フムフム。
・でも、彼女は自給のために田畑で働くと、そこでまた忙殺されるのではないかと。
そうなの?
・いや、それはその農地や生産手段の状況にもよるけど、忙殺というほどではないよ。
半農半Xで行けるかな?
・兼業農家で自分の家の米を作っている人は他はフルタイムの仕事もできている。
そうかぁ。
・ま、でも、それは、あくまで「農家」で、生産手段は持っているわけだから、、、
自分でできない作業を委託したとしても、最後は自分の家の米になるしね。
・そう。どこまで自分でやったら「自給」と言えるかも微妙だよね。
なるほど。
・稲作農家だって、苗は農協に委託していたり、、、
うん。
・シロウトのほうがちゃんと苗づくりしていたり、、、
ふむ。
・「自給」や「我が家のコメ」の定義は微妙だね。
また、次回、考えますか?

(つづく)

石田周一

いしだのおじさんの田園都市生活