石田のおじさんの田園都市生活

第70回 林業って

2014.6.30
いしだのおじさんの田園都市生活

「林業をやりたい」なんて、ヒデが言っていたんだけど。
・よかったじゃん。大賛成。
ええー、できるの? そんな? ちゃんと食べていけるの?
・そういう考え方がよくない。林業は立派な仕事だ。
それはそうかもぉ、だけど。尊い仕事でも不安定なところに我が子を、、、
・だから、そう言う考え方がまったくよくない。
はいはい。
・スケールがチガウよ。いまどきチヤホヤされている職業とは。
どういう意味?
・パソコンをカタカタやっているような仕事より人間的だよ。
そういう言い方もイカンでしょ。
・そうだね。仕事はそれぞれだね。
でも、なんでだろう?急に。
・ウッジョブを見たからね。やっぱ、映画はいいよね。
なんだ。そうなんだ。短絡的。
・ま、そうかもしれないけど、、、
どこがよかったのかな?
・聞いたら、「全部」とか、あいかわらずのボキャ貧だったけど。
でしょ。
・あとは、クライマックスのお祭りのシーン。
お祭り男だもんね。
・ま、おもしろかったなら、映画としては成功だろ。
連れて行った方としては、ね。
・いや、映画を作った方としては、って、言っておるのだよ。
あそぉ。でも、林業がわかっているのかな?
・いや、わかっていないだろ。でも、いいんだよ。
そうかなぁ?
・俺は少しは林業もわかるから、そっち側から見るけど、そう言う視点は少数派でしょ。
原作者と映画製作側は林業への思いもあっての作品でしょ。
・そうだね。でも、あいつには「なんかオモシロいかも?」ぐらいでいいんだよ。
そう?
・いや、俺はヒデが林業に興味を持ってくれたら、っていう期待あった。正直。
でしょ。
・でも、見ている途中はヒデには難しいかな、って思っていた。
じゃ、意外な感想?
・そう、あいつ、いつも都会と田舎じゃ都会が好きだって言っているし。
都会育ちだからね。
・でも、畑でも楽しそうだし、似合っているし。
トラクターも運転しちゃうしね。
・そうそう、けっこうセンスがいいんだよ。マリオカートで鍛えたか?
そうやって農業や林業に向かわせるんだ。
・いいじゃん。あいつはデスクワークよりガテンが似合うタイプだよ。
やだ。
・自然相手の仕事、自然を守り、自然を楽しみ、いいと思うなぁ。
なんか具体的にあるの?
・東京チェンソーズ、っていう会社があるよ。
へぇ。なんか怖い名前。
・カンチガイしていないか?
林業でしたね、林業。
・農大(探検部)を卒業した若者が作った会社だよ。
そんなのがあるんだぁ。
・そういう会社が存在すべき必要性がまさにあるから、ね。
そう?
・東京桧原村だから遠くに行ってしまうわけでもない。
都会で遊ぶこともできる。
・そうそう、って、話が変な方に行っているけど。まぁ、一例だよ。
ふうん。前は、消防隊員がいいとか言っていたじゃない。
・そりゃ、人様のお役にたてるし、格好いいし。
安定しているし。
・ま、それもあるけどね。
自衛隊は?
・今、ヤバいでしょ。「自衛」じゃなくなるかも知れない。
そうだよね。
・被災地支援に意義を見出して入隊する若者も多いのに、ね。
うん。
・戦闘をするかもしれないところには行かせられない。
うん。
・でも、自衛隊でいろいろ資格を取ってしまうっていうのもいいらしいよ。
どっちなんだ。いいのか自衛隊で。
・いや、ダメだよ。ヒデの場合、命令に流されて危ないことになる。
ダメだよね。
・いや、これは本来、日本がそういうことになってはイカンという話だ。
そう?ヒデだけの問題じゃない。
・ヒデと同世代の一人だって戦闘はさせたくないよ。
うん。 ゲームならいいけどね。
・いやぁ、ああいう戦いゲーム自体が良くないよ。
そうかなぁ?
・ゲームクリエーターとか、なってほしくないね。
いいじゃない、クリエイティヴならば。儲かるし、、、
・まぁ、職業選択は自由だよ。好きなものを見つけてほしいね。
このあいだは、お笑い芸人になりたい、って言っていた。
・だはっ。くだらんテレビばかり見ているからだよ。
職業に貴賤はないでしょ。
・そうだけど、、、芸事はアタリハズレある、ギャンブルみたいなもんじゃん。
ギャンブラーだしね。あいつ。
・ま、祭りの射的が好きぐらいならいいけど、、、
仕事で稼ぐ、ってことをぜんぜん、わかっていない。
・じゃ、次はまたそういう映画を見るか。
いいのがあるかなぁ
・俺も、5年生や6年生のころ、よく映画に連れて行ってもらった。
へぇ、何見ていたの?
・『ゴッドファーザー』とか。
えっ、あんな職業はヤバすぎでしょ。
・いやいや、いちばん行ったのはチャップリンだよ。
へぇ。
・ヒデにも見せたいな。『街の灯』『ライムライト』『モダンタイムス』『独裁者』
そうだね。今なら小学生料金だし、、、
・そうか。料金問題もあるんだった。
大事な問題。
・俺は伯母さんに連れて行ってもらっていた。
いい伯母さんだね。
・ホコテンが始まったころの銀座。
へぇ。
・三越のところにマックの1号店。
ふうん。
・ケンとメリーのスカイライン。

・三愛ビルの日産ショールーム。

・ソニービルのドレミファ階段。

・昭和40年代の銀座。
ふぅん。
・ああ、懐かしい。あのころは都会もよかった。
けっこうシティボーイなんじゃん。
・そうだよ。今だって、都会人だよ。
そうかなぁ?
・あのころは都会もまだ牧歌的だったんだよ。
よくわかんないんだけど。
・今週は週5日、ホトトギスの鳴く新治の畑で作業していたよ。
そういうのが牧歌的でしょ。
・うん。でもなぜか牧歌的に浸れないんだよね。イマヒトツ。
どうして?
・時代の雰囲気が都会的なんだろ、きっと。
???
・いや、俺の生活が、かもしれない。
そう、、、どういうこと?
・金のことばかり考えている。
イヤな人。
・困ったな。
、、、
・、、、

(石田周一)

この文章をあらかた書いて、、、
いや、こういう会話をして、そのあとに、
『林業男子』(山と渓谷社)を発見購入して、
今、半分くらい読んだ。

東京チェンソーズの実際、
東大卒の林業ガール、
年収1100万円からの転身、
などなどオモシロい。
もっと早く読んでおけば、、、
とも思ったけれど、
ま、ね。

いしだのおじさんの田園都市生活