石田のおじさんの田園都市生活

第62回 里山民主主義

2013.10.31
いしだのおじさんの田園都市生活

・涼しくなってきました。
なになに?
・熱燗、お湯割り、、、
呑むことばっかり考えてるのね。
・これは考えているわけではなくて、勝手に頭に浮かんでくる。
本能、ですか?
・そうだよ。むしろ考えないようにすること、それを考えるのは難しい。
あほくさ。
・涼しくなって、少しは読書とかしようかな。
暑いとできない?
・汗かいて、ビールで補給して、それで終わってしまう、一日が。
モッタイナイ!
・最近読んだ本。

・『キレイゴトぬきの農業論』
妙なタイトルですね。
・帯には、「全部カン違いです。」と、ある。
何が?
・有機=美味で安全、農家=清貧な弱者、農業=体力が必要
ふんふん。
・タイトルと帯で売れそうな本だよね。
そういうのキライでしょ。
・そうなんだけど、まぁ、買って読んだ。
おもしろかった?
・いちおう少しは現場を知っているから、俺なりのオモシロいがあった。
まわりくどい言いかたですね。
・4日ほどで読んじゃった。
そんなに速くもないじゃない。
・忙しい中でも読んだってこと。
はいはい。
・その前は、『ロジカルな田んぼ』
そっちの帯は?
・筆者が田んぼで笑っている写真が表紙。
何日で読んだ?
・そういう問題じゃないでしょ。
ははは。
・どちらも農家さん自身が書いている。
そうなんだ。
・野菜農家とコメ農家。どちらも脱サラ。
へぇぇ。
・前者は非農家出身の新規就農。後者は代々の農家のひと。
ふうん。
・いずれにしろ、現場から自分の仕事を言葉にしている。
魅力的ね。
・そうなんだ。評論家や学者とはチガウ。
内容は?
・野菜の売り方、というか売り方を考えての作り方、小規模なりのやりかた、
私にはなんのことだかワカラナイけど、、、
・まぁ、少々マニアックかもしれないけど参考になる。
へぇ。
・真似する気はないし、できないけど、発想法は参考にしたい。
石ちゃん、農家じゃないしね。
・それをいっちゃあ、話にならない。
どっちも直売?
・おコメの人はお店への直売だけどね。
顔の見えるオツキアイ?
・そういうことだろうね。いずれにしろ、、、
涼しくなったから読めた?
・まぁ、ね。その前にも読んだ本があって、、、
まだ、暑かったころ?
・それが、前月のコラムで松村さんが取り上げた本。
ま、珍しい!
・どういう意味だ?
アカデミックな理事長さんと与太話のおじさん。
・それはそれで、個性だからいいだろ。
まぁ~ねぇ~
・それが、他の人のFBでも話題になった。
アカデミックに?
・う~ん、そうでもなかったかな。FBは議論の場ではないから。
ところで、なんていう本?
・『里山資本主義』
なんだかよくわからないタイトル。
・ま、その難解なような、軽妙なような、矛盾しているような、、、
ですね。
・でも、NORAも「里山で起業しよう!」って、言っているわけで、、、
金儲けすることで里山にも陽が当たる?
・儲けなくてもいいけど、持続できる経済は必要、かな?
また、わかんないこと言う。
・さっきの「キレイゴトぬき」じゃないけど、清貧に甘んじなくてもいい。
やっぱ、儲かったほうがいいでしょ。
・でも、経済効率優先の風潮が里山というか自然を壊してきたんだから。
だから?
・ビンボウは困るけど、お金じゃない豊かさこそ大事。
う~ん。
・そういえば、その少し前には松村さんのFBでちょっとした議論があった。
FBで議論はできないんじゃなかったじゃないの?
・ある竹林で藪をキレイにしたら子どもたちがそこで遊んで竹の子が出なくなったので、立ち入り禁止にして、そして子どもたちに竹の子を掘ってもらうという話。
子どもは竹の子よりも遊べたほうがいいでしょ。
・そりゃそうだ。俺が子どものころはだんぜんそうだった。
石ちゃんのことは聞いていないけど、、、
・そもそも、遊びまわれる竹林と竹の子とでは、どっちが儲かるんだろう?
なにを言っているの?
・比較にならないだろうけど、一度、算盤はじいてみる意味はあるんじゃない?
どうやってはじくわけ?
・子どもを遊ばせていても一銭にもならない。
でも、なんとかパークにしたら、、、
・そう、一銭にもならない、と、言われているものを金に換える方法を、、、いや、いや、そういうことじゃなくて。
自分で言って自分で混乱している。
・うーむ。
もう一度、整理してみたら。
・うん。「子どもたちのため」を思ってか、「竹林のため」か、わからないところもあるけど、そのチガイの何が問題なのかを論じることもなく、立ち入り禁止にしてしまったことが、民主的でない、と、この俺の要約があっているか自信ないけど、、、そんな感じ。
そんな感じがわかりにくい。
・ま、竹の子が出なくなったら本来の竹林整備の目的からそれるから、立ち入り禁止なのかなぁ?
ふーん。
・いや、その決め方が一方的というか問題の共有こそが大事なのではないかと、、、
少しわかるかも。ま、竹の子を掘れることが竹林の価値ってことにばかり気持ちが行っていたってことかな?
・でも、竹の子が出なくなるくらい子どもたちが竹林で遊んだのなら、それはまたスバラシイと、俺は思うよ。と、いうか、子どもたちの立場に立つこともなく、そういう意見交換が無いなかでことが進んでしまったのが残念。
残念なことは世の中に多い。
・うん、多い。
わが身を振り返ってみても?
・うん、なんだろう、ね、わかっているでしょ、みたいな、、、
いえ、わかりません。
・価値、っていろいろあるはずなのに、もう、これでいいんだ、って、思い込んじゃって、それが集団化しちゃったりして、いわゆる空気を読むというヤツぅ?俺、ダメなんだよね。
石ちゃんはアマノジャクなだけでしょ。
・それはそれで重要なポジションなんだよ。
ふぅん。
・特に権力を持った人は、まわりもそう思って当然みたいに決めつけて、進んじゃう。
多様な価値観のはずが、、、
・そう、決断と行動は多様にできないから、ね。行動に移すときの判断が単純になってしまう、というか単純に見える。
民主主義じゃない。
・そもそも、里山には民主主義はないのかも?
ええーっ、どういうこと?
・だって、里山を作ってきた農家の暮らしは家長を中心とした封建的なものじゃん。
そっかぁ?
・竹林には人を入れないぞ、って、家長が言えばそうなるんだよね。
そうだね。じゃあ、封建的で前近代的な世の中でこそ里山は守られるんだ。
・いや、それは、、、
それじゃ困る?
・それは、まぁ、昔というか、昭和までの話で、、、
ハギレ悪いね。
・そうだな、、、我が家にも民主主義が無いし、、、
そうねぇ、決めるのは私だもんね。
・ああ、民主主義が欲しい、、、

(石田周一)