石田のおじさんの田園都市生活

第60回 ヒエ取り

2013.9.1
いしだのおじさんの田園都市生活

あーあー、泥だし、臭いし、もー
・アッタリマエだろー、ヒエ取りしていたんだから。
(「早くビール飲みたいぞ」)
またぁ、草取りの話ぃ。読者も飽きて呆れて離れちゃうよ。
・夏はとにかく草取りなんだよ。もう、開きなおって、草取り。
勝手にして。
・田螺(たにし)も取ったよ。
どーすんの、それ?
・アテにしたらいいかと・・・
アテ?
・酒のツマミのことだよ。関西弁。
(「ビールの後は日本酒かな」)
ええー、でも、子どものときは食べたよ。
・田んぼのサザエ!(ホントかな?)
そんなに美味しかった記憶はないけど。イナカモンでしょ。
・俺は居酒屋で食べたことがある。食べてみる?
寄生虫とかいそうだから、やめてよ。
・ むむむ、残念。(でも、ちょっとホッとする)
(その後、職場に持って行って金魚の水槽に放す。
姿がかわいくて、みんなの人気者になっている。
でも、田んぼから遠く離れてカワイソウ。いつか帰してやろう)
それにしても、汗ビッショリですねぇ。着ていたものがグッショリ。気持ちワルゥ。
・ 体重、朝より1.5㎏減っているよ。
(「だからぁ、ビール、ビール、ビール」)
ダイエット?いいかも?いや、すぐにビールで戻るでしょ。
(この晩、ビールそれなりに飲んで布団に入ったけど、
なんだか誰かにいや何かに呼ばれているようで、眠れず、
こっそり家を抜け出して、徒歩5分の焼き鳥屋でホッピーを数杯、
マスターや常連さんに農作業の報告。
三鷹市民に横浜の田舎の話、ウケてないようだが・・・)
・ま、ね。それに汗だけでなく、稲の水滴とかもあるよ。
(脱いだ服が重たい)
で、ヒエはきれいになくなったの?
・結構生えていてね、ちゃんと抜いている手間が無かったから、鎌で刈ったんだ。
それでいいの?
・ま、しかたないよね。
ふうん。
・やつら根性あるから、切り株からまた伸びてくるよ、きっと。
(実際、1っ週間後にはちゃんと穂もつけていた。うわぁ)
それじゃ、退治した意味が無いんじゃない。
・う~ん。まぁ、一時的にでもキレイになって、そこそこ弱ってくれれば、まずは・・・
そ。
・ヒエは稲よりグッと背が高いから田んぼにあるとカッコ悪いし。
だから取ったの?
・いや、まぁ、そういうわけでもなく。
ハギレ悪いねぇ。
・ 種が落ちないように、稲刈りのときに邪魔にならないように、などなどだよ。
とにかくヒエは生命力がハンパジャナイ。
(焼き鳥屋では、「ヒエって食べられないの」との質問があり、
宮本常一『忘れられた日本人』には、
飢えをしのぐ為に食べたが消化されずにそのまま・・・
なんて話を焼き鳥食いながら・・・
食えるのは、アワとかキビだよ。などなど
さらに、米とヒエを掛け合わせて生命力のある植物を作り出して、
勝手にどんどんできる穀物があったらいいね、うんうん、
とかなんとか、結局は与太話)
ヒエって、どこの田んぼにもあるの?
・除草剤がしっかり効いていればそんなにないと思うけど。
(でも、今年はケッコウ見かける。なぜか、ちょっと、ホッとする)
へぇ、除草剤って怖いかも。
・いや、ちゃんと安全基準があるよ。
でも、守らない人もいるでしょ?
・う~ん。どうだろう?でも、田螺もいるし、蛙もたくさんいたよ。
それは、守っている、っていうか、薬が効かなかった田んぼでしょ。
・そうだね。まぁ、消毒もしていないしね。横浜は基本的に低農薬だよ。
米どころはそうじゃないんじゃない?
・山梨も低農薬だよ。
そうじゃないところもあるでしょ?きっと。
・自分で米を作れば、いいんだよ。心配なら。
それで谷っ戸ん田やっているわけ?
・いや、不安や心配からやっているわけじゃないよ。でも、そういう人がいてもいいけど。
いろんなひとがいるといいんでしょ。
・「食の安全」を「買うこと」を前提にするよりも「自分で耕す」がいいよね。
そう言ってもそういう機会自体がなかったりでできない人が多いでしょ。
・ま、我が家もぜんぜん自給できていないもんね。
そーでしょ。
・でも、できるかできないかで話していたら、話そのものができない。
どういうこと?
・とりあえず、方針とか方向性で話をするわけ。
(焼き鳥屋では、「我が家は自分で田んぼをやって食べている」と、
かなり話を膨らませて話していたりする法螺吹き男)
田んぼをやる理由はその人ごとに違っていいよね。
・そうだよ。生物多様性ならぬ人間の多様性だよ。
でました「多様性」。
・そう、人間の多様性。
どーいうこと?
・それをそれぞれが考えるのが多様性。
またまたイミフメイ。
・簡単に意味が分からないのが多様性。
こじつけていない?
・こじつけて全員一致するよりは、バラバラでいい。
ますます、わからない。
・わからない話こそ、話すに値する。「そうそうそう」なんてすぐに同調して空気を読んだり、空気を作ったりすることこそ、問題。ホントはわかっていないのに・・・
なに、コーフンしてんの?
・いや、ゴメン。
こじつけもよくないよね。
・はい。そうです。こじつけじゃないつもりだけど。
「多様性」にはこだわっているでしょ。
・そうだね。あと、イッチダンケツが基本的にキライ。
だからリーダーシップが取れない。
・悪かったね。おおまかにベクトルを合わせるリーダーでいいと思っているわけよ。
どうして?いつから?
・青葉台中学で、制服が無かったから、自然と多様性こそ大事だと・・・
それも、こじつけっぽいけど・・・
・ま、田んぼをやる理由に話を戻すと、ね、・・・
はいはい。
・なんで田んぼやっているか、自分でもわからない。だからやっているともいえる。そこに価値がある。
(焼き鳥屋でもそんな話でまわりを煙に巻く。備長炭の煙)
やっぱり、よくわからない、話・・・
・そうだよね。話すからわからなくなる。これは、ホントは皮膚感覚なんだ。
またまた。
・ あなたは、田んぼで汗をかいていないし、泥に足を取られながらヒエ取りもしていない。
そういう人に伝えることが大事なんじゃないの?
・ そりゃそうだ。それこそ多様性だ。
でしょう。
・ 一本とられました。もう一本ください。
だめ、飲みすぎ。
・ええー、こんなに汗かいてきたのにぃ・・・トホホォ
(で、焼き鳥屋に行くことになったのか?)

(本名は、石田周一)