第191回 ニワトリと暮らしたい

2024.7.31
いしだのおじさんの田園都市生活

「この子たち、ほんと、可愛いんだよなぁ、、、」と、
そのおじさんは、その子たちの頭や首回りやお尻の辺りを撫でている。
その子たちは広い庭を自由気ままに歩き回っている。
土をツンツンしたり、
木陰で休んでいたり、
生を謳歌しているようだ。

そう、ニワトリ。
みんな雌。
うん、確かに可愛い。
特に、フリフリ歩く後ろ姿なんて、、、

実は、
そのおじさんは、数年前までニワトリを飼っていたそうだ。
3万羽あまり。
その子たちは、並んだケージに入れられて、ほぼ身動きできない一生を送っていたという。
おじさんは、ニワトリたちをタマゴを産む機械のように思っていた、という。
稼いで、家族を養うための手段。

こういう飼育方法は、ヨーロッパなどではもう認められていない。
「動物の福祉」に反する、ということだ。
しかし、日本では、、、
おじさんは、3万羽では経営が厳しくなって養鶏場を閉じた。
文字通り桁違いの規模の効率的な経営をするビジネスに負けたカタチだろうか。
「福祉」に反することも、(農相を買収して)大規模にやると、、、
ビジネス!
そして、タマゴを買って食べる人たちは、ニワトリの暮らし方までは気にしてはいない。

おじさんは、この庭でおこなわれる予定の子どもたちのイベントを気にして、
閉じた養鶏場で使っていたコンテナを運んできてくれた。
それは、薪で炊くドラム缶風呂への階段にピッタリで、
そんなさりげない気遣いに、俺はいたく感動した。
自由なニワトリの庭から歩いて5分ほどのところに立派な鶏舎が今も残る。

この1ヶ月で、地方に移住して暮らしている友人家族2組を訪ねた。
(犬と畑に束縛されながら、ヨクソンナコトデキタ、ありがとう)

移住してまだ半年、保育園児もいる長野県のTさん一家。
数年をかけて、いくつもの移住先候補地を訪ね、いろいろ検討しての移住だった。
半年で、すっかり地域に受け入れられているようだ。
若手として期待され、獅子舞の踊り手に指名されたりもしているという。
それをこなしてしまう持ち前のバイタリティー!スゴイぞ!
インスタグラムがよく更新されるので、なんとなくの様子はわかる。
が、現地を訪れ、暮らしの様子を見て、リアルに感動した。
俺は、いきなり家を買っての移住はリスクもあるのでは、
と、親心?というか余計な心配をしていたが、全くの杞憂だったようだ。

三重県のMさん夫妻は、NORAではお馴染みの里山シンガーソングライター
前述のニワトリの話はここでのこと。
前々から行きたかった「満月ライブ」に休みが合ったので、久しぶりの新幹線。

想像を超えるその暮らしは、
俺と入れ替わりで小学生32人と引率8人を泊められる規模。
いつも画面で見ている車田を生で見られて、夢心地。
「満月ライブ」は、地域の行事のような雰囲気も良く、
ニワトリが歩き回り、川の流れの音とカエルの声もライブだった。

どちらも、田んぼをやっている。
どちらも、住まいに隣接している田んぼだ。
どちらも、家の周囲に豊かな水の流れがあり、カエルが鳴いていた。
蛍も飛ぶそうだ。

Tさん(主に母)は数年休耕していた田を初心者として作付けている。
地域のオジサマたちがいろいろ口や手を出してくれて、稲の生育も順調。
(俺も、ときどきアドバイスとエールを送っている。)
それを成り立たせている彼女のキャラとバイタリティーがオモシロい。
もちろん、保育園児もお父さんもこの暮らしを全身で楽しんでいる。

Mさん夫妻は、
「自分たちの食べる分+αをゆっくり楽しんで作ろうとして始めた、が、
いつの間にか、小さな田んぼで面積が増え、
去年からは大きな田んぼも任されて、ちょっとたいへんになってきた」
と、言いながらも、あちこちから機械をもらって、大きな倉庫も確保して、
(これ、ホント、うらやましい、ナイスな状況)
茶畑もいくつか任されているという。
一方で野菜畑は獣害が多く、なかなか困難な状況にあるようだ。
いろいろと任されるのは、若手がいない地域の事情もあるのだろうが、
彼らの誠実さと突き抜けた明るさ(強さ)なのかな、と、思った。

そして、そして、どちらの家にも庭にニワトリがいた。
Mさんのところは前述の通り、ニワトリとの暮らしも長く、歌にもなっている。
今は4羽の雌鶏が日々タマゴを産んでくれている。
ご馳走になった。
味もだが、共に暮らす仲間からのプレゼント、というシチュエーションが、美味かった。
ありがとう。
ごちそうさま。

Tさんのところでは、6羽の雌鶏を迎えて、まだ半月あまりという状況だった。
が、保育園児は、もう、コッコちゃんと友達で、抱っこもできる。
カエルやミミズをつかまえて食べさせている姿も、もう、自然体。
小屋をDIYしたお父さんは、チキントラクターも作ってしまった。
庭から少し離れた畑までの散歩?で、坂道でそれを父が引き子が押している姿!痛快!

こんな、ニワトリのいる暮らしを垣間見た俺、
今、ふつふつとニワトリと暮らしたい、と、思っている。

つづく

(移住もいいなぁ、と、、、石田周一)

追記
Mさん夫妻は、ニワトリたちにそれぞれ名前をつけている。
初代は、ミーとケイ。
Tさんのところでは、名前はつけない方針とのこと。
その違いは、、、???