第184回 吞兵衛のイイワケ
2023.12.29いしだのおじさんの田園都市生活
最初の一皿で、グッと引き付ける。
hrmさんの流儀。
今回は、
柿の白和え、白菜の塩昆布和え、大根餅、大和芋磯辺揚げ、つぶ貝の煮物、
銀杏塩炒め、蓮根の真薯、を大きめの皿に配置した。
前回は、少人数だったから、か、これらを2皿にして、つぶ貝のところは、つくねと卵黄の醤油漬け、だった。
季節によって、生春巻きやキャロットラペの彩を活かしたり、もある。
そこから、多彩な料理が順々出てくる。
出てくるごとに、「わーっ!」とか「えーっ!」など、
歓声が上がることも、、、
そして、「美味しい」「ううむ」「旨い」と、
お酒も進む。
今回、年に1度以下の頻度で集まる5人の会があり、
約束の日の少し前に、石田は、次のようなメッセージを送った。
いよいよ○日(○)
お勉強忘年会!
単なる呑み会ではなく、お勉強もする!
と、ま、吞兵衛のイイワケですが、、、
今回のお勉強のテーマは「小麦」。
小麦の専門家3人に「私と小麦」もしくは「小麦と私」という、
学問的?私的?詩的?な話をしていただこう!
と、考えております。
3人は、
研究者 Yさん
生産農家 Hさん
もう一人は当日まで秘密
乾杯予定は19時。
勉強会はYさん到着の21時ころからで、
それまでは、小麦をテーマの料理で喉と舌でお勉強。
21時から1時間ほど3人にお話しいただこう、と、考えております。
参加予定は、Y、T、TS、H、石田、
と、秘密ゲストとFさん。
料理は、hrmさん。
会費○○○○円+飲み物かナニカ持ち込み。
よろしくお願いいたします。
期待に胸ふくらみ、当日。
乾杯は、知る人ぞ知る、あの、タルマーリーのクラフトビール。
Tの大学時代のサークル仲間がマーリーさん、で、
このサークルがグリーンにボランティアに来てくれていたことが縁。
もう30年近く前のこと。
美味い!
ありがとう!
2皿目に小麦登場。
hrmさんが焼いたパンに自作のレバーペーストとクリームチーズに春菊。
宮城県丸森町のつぶら農園の干し柿にチーズをはさんだもの。
3皿目、餃子と肉まん。
どちらも、小麦をこねて、
餡には私の畑の野菜をふんだんに使っている。
小麦は、いただきものの長野県産と青葉小麦。
青葉小麦はグリーンの畑で育ったサトノソラと別農家のユメカオリ。
ジュワ~と、野菜と肉汁を小麦が包み込み。
そのあと、
(三鷹の直売農家さんで買った)ルッコラと春菊のサラダ、
(私の畑の)レタスと人参のサラダ。
箸休めで、また、ビールが進む。
そして、メイン、青葉小麦の薪ストーヴピザ。
自家製トマトソースは自家製トマトではない、けれど、
ベーコンは福島ひぐらし農園の庭先豚で仕込んだ自家製。
ネギは、そこそこ太く育った自慢のやつ。
薪ストーヴの火加減が難しく、1枚目は少し焦げてしまったが、
これは、もうワインでしょう。
ああ、勉強はどうなるんだろう、、、
と、ずいぶん吞み食いしてしまった、が、
やっと、待っていたYさんも到着し、勉強会となった。
トップバッターは、
非農家出身で新規就農し、青葉区の有名農家、H農園のHさん。
1町歩以上の田んぼで数種類のお米を生産し、
野菜も数十種類を生産し、年間を通して直売しており、ファンがたくさんいる。
なので、小麦の生産や販売は仕事全体からすると小さな部分という。
特に、収益で言えば、委託で乾麺にすることでギリギリ赤字を回避しているという。
しかし、その小麦に大きな役割がある。
小麦は生長過程でも収穫後も土壌改良を担ってくれる。
畑にカッターをかけた麦わらをすきこむと、土がフカフカになる。
畑に小麦があることで、春と夏の野菜への病虫害の防除効果がある。
そんな縁の下の力持ちのような小麦。
いや、乾麺もめっちゃ!美味しい!んです。
小麦が畑で果たす役割も素晴らしいが、
HさんとH農園が地域で果たす役割もとても素晴らしい、と、思う。
ちなみに、Hさんは、前回のコラムで紹介したつぶら農園のAさんと同サークルの同期。
2番手は、秘密の特別ゲスト!
またまた、青葉区の重要人物。
「サプライズゲスト?いったい誰?」とみんな「???」をつけていた。
「Hさん、Yさん、知らない人じゃないよ。うふふ」
と、石田は、思わせぶりを、楽しんでいた。
その人は、青葉台の有名パン屋Cの店長Oさん!
Hさんとは、農を基にした様々な地域の活動の仲間。
小麦を研究しているYさんとも、出会うべきして出会って、縁がある。
Cは1972年に開業したパン屋で、私の両親もファンだった。Oさんは2代目店長。
高校時代に進路に悩んでいたときにこのパン屋と出会って、
以来、パン道に邁進し、そして地域の活動家にもなっている。
今、3代目を育てながら、「あおば小麦プロジェクト」に取り組んでいる。
生産量は多くない地元小麦をより多くの場でシェアすることを大事にしているという。
私も多少の縁がある社会福祉法人グリーンの生産する小麦など。
日々小麦に向き合っている、が、実は業界に多い小麦アレルギー、と、初めて聞いた。
小麦の扱いはなかなか難しいものがある。
保管や製粉などの管理は、もしかしたら栽培よりも気を遣う部分だ。
だが、それがまた魅力だと、語っていた(たぶん)。
素晴らしい!
生産の委託、収穫後の管理、そして、再生産できる経済性など、課題は多い。
しかし、多くの仲間がいることで、きっと楽しい展開をしてくれるだろう!
(石田は何をする?のか?)
3番手のYさんは、数年前に農林水産政策研究所の研究員から大学教授になった。
今や、農福連携研究のトップランナー。
まだ「農福連携」という言葉もないころ、NHKの番組を見てグリーンを訪ねてくれた。
研究を始めたころは、周囲は、「そんな研究してどうなる」という反応だったそうだ。
小麦の研究もされており、Facebookでは、パン、ラーメン、うどんなどなど、
国産小麦製品を毎日のように報告してくれている。
ここ数年で国産小麦の生産量は増えているそうだ。
確かにスーパーやコンビニでも国産小麦製品を多く見かける。
ラーメン店やうどんのお店やパン屋でも「国産」を売りにしている店も多い。
特にパンでは以前は北海道産の小麦以外は使いにくかったようだが、今では事情がチガウ。
この日のピザも青葉小麦「ユメカオリ」を使った。
Yさんは、品種ごとの特徴をよく知っており、ブレンドにも詳しい。
今、世界情勢が不安定になり、食糧安保の点からも国産小麦が増えてほしい。
下手に生産に助成をすると生産者が安易に走り、質が低下することもある。
などなど、、、
「話が上手だから、きっと学生にも人気があるのでは」とhrmさん。
薪ストーヴピザの次には牡蠣や烏賊もスキレットで焼かれ、、、
料理人、薪ストーヴクッキングに目覚めたか?
いいぞいいぞ!
また、勉強の種を探して、そして、集まろう、呑もう!
(年末に少し禁酒している石田周一)
最後までお読みいただいた方への追加情報。
わざわざイニシャルを使う必要もない、
いや、イニシャルでも、もうみなさんには伝わる?
なのですが、
はやし農園の林さん、
ベーカリーCOPPETの奥山さん
農林水産研究所から千葉大学へ行かれた吉田行郷さん
という豪華メンバーでお勉強忘年会でした。
タルマーリーのビールをプレゼントしてくれたのは、
東京農工大から農林水産省へ行った滝沢さん、
(吉田さんの後任として英国に赴任という縁も)
そして、神奈川県庁の辻本さんは今は箱根方面で活躍、
1996年、出版社コモンズ設立時、
明峯哲夫・石田周一編『街人たちの楽農宣言』が出版された。
辻本さんは、寺家での田んぼの共同耕作の原稿を書いた。
林さん、滝沢さんは、学生として農に関わることなどを、
座談会で語り、林さんは原稿をおこしてくれた。
そんな仲です。