第185回 アナッポリ

2024.1.30
いしだのおじさんの田園都市生活

剣スコに足をかけ、サクッ!
掘った土は、横に。
天地ガエシではなく、アナッポリ。
掘っては置き、掘っては置き、後退り。
スコップの幅の溝ができる。
5メートルほど下がったら、前進して溝の中の土をすくって上げる。
次に、溝の横を崩して、幅を広げ、その土をまたすくって上げる。
溝が広がったら、また、サクッ、サクッ、深くする。
の、繰り返し。

息が上がらないように、ゆっくり掘り進む。
疲労がたまらない程度のペースと力の入れ方。
ポケットのスマホからはミュージック。
今日は、ジョンレノン、アンソロジー。
そうして動いていると、10度以下でも身体が温まる。
ちょっと楽しくなってくる。

今、畑は、いろいろ豊作。
ネギ、大根、ブロッコリー、キャベツ、白菜の収穫。
サツマイモ、ジャガイモ、菊芋、里芋はストック。
そろそろ終了するが、人参もある。
食卓に常に自家野菜が載る。
(家族は、もう、無感動、、、)
喜んで食べてくれる友人へのおすそ分け。
校内居場所カフェなどへのカンパ。

菜花、ほうれん草、パクチーもそろそろかな。
初夏に収穫の玉ネギはネットと藁に守られている。
そして、そろそろ、畑の新年。
春一番、やはりジャガイモの植え付け、だろうな。
もうすぐじゃん。
もう店に種芋がならんでいるが、何を選ぼうか。
キタアカリ、メイクイン以外も何か植えるかな。
前後して、レタスの植え付けや大根の種まき。
小松菜、蕪、ルッコラなども、、、
と、考えながら、スコップをサクッ。

昨年の今ごろは、ユンボでアナッポリをしていた。
秋に「小型車両系建設機械(3トン以下)の運転の業務に係る特別教育」を受けた。
いわゆる「ユンボの免許」。
教育は受け、試験も通ったが、実際に運転せねば、身にはつかない。
そこで、友人Kちゃんから小さいやつを借りて、畑に溝を掘りまくった。
こんな機械を貸してくれて機会を与えてくれる友人に感謝。
の、気持ちは大根やキャベツ。

厚着をして、ブインブイン。
ユンボの上ではほぼ手しか動かさないから、寒い。
2本のスティックを前後左右に動かしてアームとバケットをコントロール。
3ヶ月ほどで100時間くらい。
そこそこの運転能力が身に着いたかな。

今年も一声かければ貸してくれるだろうと思いつつ、、、
今のところスコップ作業を楽しむことにした。

この穴、というか溝、なんのためか?
畑のあちこちに散らかっている残渣を放り込んで片付ける。
日々、台所から出る生ゴミを処理する。
落ち葉を被せる。
屑炭も投入。
流行りの菌ちゃん農法のようだが、俺流の、例によってモドキ。
そして、埋め戻す。
予定。

一人で畑にいる時間。
大切な時間だ。
気持ちが落ち着く。
やっぱり、土の上、青空の下は、いいもんだ。
野菜がちゃんと育っているから、なおさらだ。
これが不作だったら、メゲながら、それでも畑はいいなと、半分負け惜しみになるのかも。
生産活動をしているという実感が持てると安心がある。

一方で、ヒマがあると畑ばかりに時間を費やしているのも、
ドウナンダロウと思っていたりする。
が、マ、イッカと開き直ってもいる。
カルティベイトもいいんだけど、カルチャーもなぁ、、、
たまには映画やライブなどに出かけていく時間も作りたいなぁ。
ゴジラ、見たいなぁ。
と、思いながらも畑に向かう。
マチガイなく楽しいから。

また、ザックリと土を掘り起こしながらも、不耕起栽培もやってみたいんだけど、、、
なんて、考えたりもしている。
『妙なる畑に立ちて』を手にしてからかれこれ30年の課題。
今いいネギが育っているところには、藁と落ち葉がたっぷりと敷いてある。
ネギもまだまだ残っている。
このまま春先までネギを食べまくって、耕さずに夏野菜を植えたらオモシロイかも、
なんて、思うのだが、
あまり自信が無いし、そんなにコダワリもないから、トラクター!かも。
不耕起の方がかえって手間がかかり、こなしきれないんじゃないか、と危惧したり。
ビニールマルチに慣れ過ぎている傾向もあるな。
作物によってやり方をかえるという手を使うかな。

昨日、フキノトウを収穫して、フキ味噌を作ってもらって、味わった。
早い。
もうすぐ、クシャミとムズムズの季節。
そして、畑の新年が来て、世の中の新年度という順番。
四十にして惑わず、でもなく、六十にして耳順う、でもなく、
年中惑いながら、春になるとさらに惑う日々。
でも、畑ではワクワクしていたい。
できる、と、思う。
そして、さて、仕事をどうするか、で、ますます惑う日々。

(家でも惑っている、畑はサードプレイス:石田周一)