石田のおじさんの田園都市生活

第16回 もちがつけて男は一人前

2009.12.15
いしだのおじさんの田園都市生活

年末の休日に友人宅でもちつきを楽しむ。

日当たりのいい庭に臼を出し、ヘッツイをすえる。
塩を盛り、お神酒を振って、火を入れる。
プシュッ、グビリと自分にもガソリン注入。
天気が良く風がなければ上着を脱ぎ、薄着になる。
きれいなタオルを数枚用意し、準備体操で体をほぐす。

しばらくして蒸篭で米が蒸せたら、
まず、一臼目は一人でこね、一人でつきあげてみる。
「よっしゃ、いいぞ」という感触があればいいが、
「ああ、俺も歳をとったなぁ」かもしれない。
自慢じゃあるけど、一人でこねからつきあげまで杵をふるえるモンはそうはいない。
勝手ながら、「もちがつけて男は一人前」ということにしている。

今でこそそんなことを言っておるが、
私がもちつきを始めたのは20代の終わりであり、
そこそこまともにつけるようになるのに10年以上かかった。
いや、今でも、その友人宅のばあちゃんには、
「ま~だ、半人前だなぁ」と言われている。

先日、グリーンの収穫祭があり、そのなかでもちつきもあった。
仲間たちと掛け声をかけながらのもちつきを楽しんだ。
職員でまともにもちがつけるのは私ともう一人。
かえしは母たちのなかに上手にできる数人いた。
職員には20代の若い衆も数人いるが、腕力任せのヘッピリ腰。
「へっへっへっ、まだまだワカイモンに負けないぜ」
が、言えて、ウレシカッタぜ。

田んぼを始めたころは、もち米を作っていたので、
子どもたちとももちつきをしていた。
いや、逆だ。
もともと米作りのきっかけそのものがもちつきだった。
とも、いえる。
もう20年以上も前、
障害児の療育の仕事としていたころだ。

その会では毎年、ある野外活動センターでもちつきをしていた。
障害児の兄弟児や父親を呼びこむためのイベントだったが、
やけに楽しかった。
そこで、だれともなく「このお米を自分たちでつくったら楽しいだろうね」と言い出した。
それだけで田んぼの活動が始まったわけでもないが、
ひとつのきっかけだったことは確かだ。

そのころ、そのセンターにはもちつき道具がなかった。
私は、友人に頼んで、もちつき道具とそれを運ぶ軽トラ、
そして、もちつきを指導してくれる彼の母を借りた。
そのころはそうやってなんでも勢いに任せてやっていた。
私もヘッピリ腰だったが、指導を受けながらもちをついた。

その友人とは、今毎年恒例のもちつきをしている友人であり、
彼の母が今では「ばあちゃん」だ。
そして、グリーンの収穫祭がおこなわれたのがその野外活動センター・・・
20数年の時を経て、活動が一巡りしたような、
そんな感慨を感じた。

今年、その友人宅でのもちつきでは、中3の彼の息子が頑張った。
体格はいいのだが、今までは食べること中心。
しかし、今年は親父の声かけに応じて杵を握った。
やはり、小さいころから見ているとチガウね。
なかなかの腰つきだった。
元服だね。

彼の友人たちも数人がチャレンジ精神を発揮していた。
(中学3年の私はそういうタイプではなかった)
私はかえしをしながらみんなをコーチした。
楽しかった。
代々の伝統を受け継ぐことができた。
いや、若者ゆえ、来年は来年。
期待はしない、けれど、待つ。

もちつきは楽しい。
コーフンする。
そして、もちは杵づきのつきたてに限る。

(いしだのおじさん)

社会福祉法人グリーン
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