石田のおじさんの田園都市生活

第15回 収穫の秋、そして「余剰」

2009.11.27
いしだのおじさんの田園都市生活

晩秋の3連休、私は、
1日目、小春日和の畑で、にぎやかに蕎麦の収穫。
2日目、冷たいノベンバーレインに、着込んで淡々と私事。
3日目、再び上着とシャツを脱いで、小麦の畑作りと種まき。
農作業の日が快晴で、Tシャツ姿がウレシク、いい汗をかいた。
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汗をかいて、ゆっくり風呂につかり、収穫した野菜で晩酌を楽しみ、
これでオヤスミナサイ・・・
が、理想的なシャーワセではあるが、
それも、モッタイナイということで、原稿を書くことにする。
いや、必要に迫られて、だが、楽しんで・・・

きょうのな~に谷っ戸ん田の参加者は少数精鋭。
少ない人数ながらも、それなりにいい作業をした。
本拠地から車で20分ほどの畑で、まずは堆肥撒き。
園主がユンボと軽ダンプで点々と山にした堆肥を
5人ほどでスコップなどで畑に拡げる。
700㎡ほどの畑にそれなりに撒き終えて午前が終わる。

ハンモックカフェのランチは、2色の薩摩芋の玄米ご飯にゴボウ汁。
ポカポカになって、しばし午睡。
雑木林がないのでユンボにハンモックをはる。

午後、堆肥の撒かれた畑にトラクターが入る。
耕耘された畑に管理機にプラウをつけて植え溝を切る。
溝が切れたらパン用小麦「ユメシホウ」の種を手で撒いて歩く。
撒いたら、足で土をかけていく。
と、書いてしまえばスイスイのようだが、
現実はそうではない。
管理機を歩かせていくにも一々苦労し、
プラウに翻弄されてコケる方もいたり・・・
それでも夕方に気温がぐっと下がる頃には種まきを終えていた。

プロが見たらタドタドシイ姿だっただろうが、
イヤイヤどうして、みなさん身のこなしが良くなっている。
人数が多いと、もう少し手作業を増やすのだが、
きょうは少ない人数に合わせてのダンドリだった。
おそらく、昨年の半分の時間と半分の人数。
つまり、機械を使いながら昨年の1/4の手間で同じ仕事をしたことになる。
しかし、昨年のみんなの作業能力ではここまでできなかっただろう。
そういうみんなの成長も実感し、作業を終え、ホッ、だった。

麦畑のとなりはジャガイモとキャベツの畑。
キャベツたちはムッチリとハチキレそうだった。
園主のテツさんは、
「このままおいといても、爆発しちゃうし、グリーンのみんなを青虫にするか」
と、口は悪いのだが、グリーンへのプレゼントを言ってくれ、
どんどんキャベツを収穫していく。
私は、「ありがとうございます。ウサギになります」と返事をする。
確かにこのままおいておいても、
まだ気温も高いので、キャベツは中央が割れ薹が立ち、
花が咲いたら食べ物ではなくなる・・・
と、いうことで、いただいたキャベツは約40ケ。

しかし、これは全くのプレゼントでもない。
グリーンでは、たまにはテツさんの手伝いもしている。
雨で仲間たちが屋内に閉じ込められると、担当はテツさんに電話をする。
「ハウス作業、ありますか?」
「じゃあ、上のハウスのカブを片付けておいてよ」
というようなことになる。
テツさんはハウスを8棟も所有しており、
たいていどこかに草取りや片付けの仕事がある。
雨の日も広々としたハウスで身体を動かせることがアリガタイ。
いくらかはお役にも立てているかもしれない。
そんなギブ&テイクの関係をつくれてはいる。

それにしても、このキャベツ、どうしようか?
先週、自給的ランチに回鍋肉を食べたグリーン。
「自分達のキャベツでウレシイ!」と盛り上がった。
キャベツは無農薬栽培の難しい野菜。
それが、今年は仲間たちの頑張りで豊作。
キャベツの豊作というのは滅多に無いことゆえ感激だった。
が、そこにまた大量のキャベツ。
まぁ、順序が逆でなかったのはヨカッタと思おう。
明日、このキャベツを見た調理担当者はビックリし、
どうやって食べつくすかを考えて立ちつくすかもしれないし、
キャベツを栽培した担当者は力が抜けてしまうかもしれない。

と、こんな具合に、野菜が余ることもある。
農家さんは「ダブつく」という言い方をする。
以前も、お盆のころに大量のトマトやキュウリをもらったことがあった。
いくらグリーンに大食いが大勢いても・・・
グリーンでもそれなりに自給できているときは、「余る」という感覚になる。
もちろん、手間をかけても結局はしっかり食べつくすのだが・・・
トマトはピューレにしたし、キュウリは塩漬けにして冬まで食べた。

そこで、今回、フードバンク「2HJ(セカンドハーベストジャパン)」と縁を持った。
フードバンクとは?
食べられるのに廃棄される食品を寄付などで活かす活動。
日本では流通している食品の3割近くが廃棄されている。
残飯も合わせると生産より廃棄の方が多いとも言われる。
しかし、一方で充分に食べられていない人たちもいる。
そうしたことから、廃棄を減らし人々に届ける活動がうまれる。

グリーンだって、潤沢に予算のある組織ではない、
いやむしろ常時いろいろ欠乏ゆえ、寄付はいつでも歓迎だ。
しかし、今回のように食べ物が余ることもある。
フードバンクのお役に立てることもあるかもしれない。
先日、2HJの担当者が来たときには、
やはりテツさんからもらった大根の葉が大量にあった。
沢庵の下漬けのときに捨てようとしていたものだ。
もらったうちの半分ほどを差し上げたが、歓迎してくれた。

そこで、私は担当者に言った。
「援農をしませんか?」
例えば、里芋の収穫に参加してくれれば、
農家は捨てるけど食べられて意外とウマイ親芋はもらえますよ、と。
そして、
「イチバンは、自分で作ることですよ。」
遊休農地の紹介や機械とオペレーターを貸すことも考えますよ、と。
担当者の目が一瞬キラリとした。

そもそも、流通があるから廃棄があるのだ。
食べ物を商品化するから廃棄があるのだ。
「豊作貧乏」というコトバがある。
「豊作」が「過剰」となり、「値崩れ」となり、
流通コストを考えると畑で廃棄、となることもある。
また、商品というものは生産費の安いところで作られ、
販売価格の高いところへ移動する。
だから、飢餓がおこるし、輸入食品の問題が起こる。
しかし、農作物、食べ物の本来の姿は「商品」ではないと思う。

3連休の農作業を終えて、こんなことを考えつつ、晩酌の2次会。
勤労に感謝して休むのではなく、楽しく働けることに感謝しての勤労感謝。

(2009/11/23記 いしだのおじさん)