第179回 ヒカラビソウダ
2023.7.31いしだのおじさんの田園都市生活
佐渡から横浜に旅したJさんが、我が家で一泊してくれた。
いろいろな目的のある旅の途中で寄ってくれた、のだ。
旧知のYさんもいっしょに、我が自給野菜の夕餉を囲んだ。
Jさん、「お酒を辞めます」と、少し前にFBで表明していた。
それは、困ります。俺としては。
Yさんもほとんど吞まない人なので、、、
呑兵衛一人と、吞まない二人じゃ、、、
と、狼狽えていたが、
Jさん、禁を破ってくれたので、助かった。
自給野菜が主役の晩餐は、
ナスの煮浸し自家製ネギ味噌、
鶏ハムの豆板醤大葉味噌、
エビとレタスと新生姜の生春巻、
ミニトマトの豚バラ巻きシソソース、
豚バラ巻きは、ネギ、ズッキーニ、シシトウ、椎茸、、、
箸休めのズッキーニとナスの糠漬け。
ゴーヤと干しエビの和え物。
そして、自家製ピザ。
結局、ビールから始めて、日本酒、ワイン、、、
ゆっくり楽しんだ。
オシャベリも縦横無尽だった。
後日Jさんより、
「先日は「割烹いしだ」にて過分なるおもてなし、
加えて含蓄あるお話、青葉台の宵の短さが恨めしいばかりでした」
と、メッセンジャーをいただいた。
Jさん、お酒を辞めるのは、読書と勉強の時間の確保のためとのこと。
う~ん、
「呑みに行く回数を減らして、ゴルフの資金に」なんて友人がいたりはするが、、、
俺も、ダラダラ晩酌を控えれば、もう少し何か有意義な時間も、、、
でも、晩酌の楽しみが無かったら仕事も畑も頑張れないよ~、
というおじさんなのだ。所詮。
でも、読書に励んでいるJさんを意識して、少し勉強しようかなぁ、と思った。
尋常でない暑さと干乾びそうな日照り続き、
と、その他もろもろ、で、めげていたが、
書架から取り出したのが、山下惣一さんの著作。
対談星寛治『農は輝ける』、対談中島正『市民皆農』。
Jさんが「小農」について書いていたので『小農救国論』も。
図書館で『振り返れば未来』も借りた。
山下惣一さんは、昨年亡くなられてしまったが、多くの著書、多くの仕事をされた。
著書は、読みやすく、楽しい。
読みやすいのは、自身の百姓としての経験からの言葉だからだ。
文字通り、地に足が着いていて、机上の論理ではない。
そして、楽しいのは、リアリストとしてのユーモア、ヒューマニズムがあるから、かなぁ、、、
「星さんの講演に感動する人は多いが、星さんの講演で笑う人はいない、
が、私の講演ではたびたび笑いが起きる」とのこと、、、
長男として農家を継がされることがいやで家出をしたこと、
中学生時代の毎日の下肥え汲みで、恋に破れ、自殺も考えたこと、
百姓には学問不要、学歴は家を潰す、と、学びを否定されたこと、
新婚旅行は山のミカン畑、と、人生を賭けたが国の都合で夢破れたこと、
農業問題は農家の問題というよりも消費者の問題なのだ、と、、、
バブルの時代の農業潰し、寄生虫と言われ、ならば評論家はダニだと言い返し、
アジアや欧米にも足を延ばし、特に、アジアの百姓とはさかんに交流し、
校長井上ひさしさんのもとで教頭をつとめ、
、、、
百姓とは?「農」とは?を問い続け、
「儲けようと考えなければ楽しいもんですよ。どうです?皆で百姓になりませんか?」
と、「市民皆農」の境地に。
そんな、山下惣一さんの著書を少しばかり読み返し、Jさんを迎えた。
地方にいて少子高齢化を実感し、この閉塞に少しでも抗いたい、
そんなJさんとのやりとりが少しでも楽しいものだったらウレシイ。
しかし、石田、山下惣一さんの著作の傍らに太宰治も置いていた。
こうやって、バランスを取る悪いクセがある。
山下惣一さんは小説も書き直木賞候補になったこともある。
『減反神社』だ。
野坂昭如に絶賛された。
時代の閉塞状況と自分自身の閉塞に抗い、なんとか打開と前進を、と、思いつつ。
太宰の「トカトントン」を読み返す。
トカトントンには癒しがある。
ダラダラ晩酌はイカンと思いつつ、杯杯杯。
それにしても、乾いている。
長く日照りが続いている。
7月20日より前に出穂の始まった田んぼに水が無くなった。
谷戸のしぼり水の用水に水が流れていない。
野菜たちも色が抜け始めた。
精神も干乾びてしまう。
どこかにポンプはあるのだろうか?
ひたすら雨を待つしかない、のか?
(「かっぽう」というほどではないが、いらしてください。石田周一)