第67回 うちの畑からセミが生まれた

2022.9.1
映像の持つ力

ポポーが大豊作、あれっ抜け殻が・・・

8月20日、ポポーの実が68個も落果しました。

小さな森のある畑に着くとまず観察から始めます。
ポポーはどうなっているかしら?
実の重さで地面まで垂れた枝を持ち上げ樹下をのぞくと・・地面に実がいっぱい。

きゃぁっ救出しないと。観察は小休止、急いで車にバケツを取りにゆき落果したポポーの実を収穫です。

それにしても5日の間に68個もの実が母樹から離れ地面に返ろうとするなんて、ポポーさんいったいどんな作用が起きたのですか?

今年のポポーの初落果は5日前の6個。成熟期に入り数日の出来事です。これ以来、毎日、5から10個ほど落果しています。

さらに驚きの出来事が!! 地べたを這うように、ポポーの実を収穫していたら、幹にセミの抜け殻があるではないですか!。

今年は畑にセミが来てるねぇなんて話していたけれど、という事は、セミがうちの畑で生まれた? うちの畑で羽化したの?♡♡♡

 

 

2ミリ米粒ほどの卵がめぐる命の営み

セミの生態は一般的に、8月にメスが地面に近い木の幹に卵を産み、翌年の梅雨に孵化した幼虫が地面にもぐり成虫になるまで7年ほど地中で過ごすと言われています。

木の根が地中から吸い上げた水分を栄養にして、地中で成長した幼虫が、夏になると地上に出て羽化する。成虫になってからは長くて1ヶ月ほどで命をおえるようです。

逆算すると、うちの木を植える人、相棒くんがポポーを植えた年に産卵されたセミが、今年成虫になった可能性が高い。

コガネグモがセミを捕獲したとき、まさか、うちの畑から生まれセミなんて考えてもいなかった。畑に木を植えることで、気の長い命の営みに出会えます。

セミはコガネグモに捕獲され寿命を終えるまでに、子孫を残すことはできたのかな。

畑に果樹を植えると、セミのように7年という気の長い時間の周期で一生を送る、生き物の生態に出会うことができます。

 

 

地中のにぎわい

成虫になるまで地中で過ごすセミ、うちの畑をせっせと耕してくれるモグラや、腸を通して土壌を肥やしてくれるミミズの生態は実際のところよくわかっていないと言われています。

確かに、土壌は地つなぎのうえ、地中深くまでつながる環境で営まれる生態系です。
このひと繋がりの土壌が雨を受け、太陽の陽を浴び、風を受け、熱気を排出するわけですから、全体の生命活動はいかばかりでしょうか。

とは言え、土壌に育つ植物や木々や棲みかにする昆虫の様子から土壌の状態を予測することはできますね。

今年はポポーが鈴なりに実が成りました。その時は知る由もありませんでしたが、地中でセミがポポーの根から栄養を吸い上げ成長していた最後の年だったのです。

セミの幼虫たった1匹と考えると人から見て大きな影響ではないのでしょうが、土壌は菌や細菌という微細な生き物が生息する場所。たった1匹が微細さにどのような影響を与えたのか興味は尽きません。

先人たちがそうであったように、生態系のバランスをはかるのが人の役割なのでしょう。
人も生態系の一部。

(中川美帆)

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