第66回 タネは一生分の変化をその中に秘める。この不思議 ♡
2022.8.1映像の持つ力
「タネは一生分の変化をその中に秘める。この不思議 ♡」
世界で一つだけの団扇が出来上がりました!
江戸時代から埼玉県越生(おごせ)町に伝わる越生団扇。
せっかくですから、文言は、先のコラムでも紹介した、岡潔さん随筆の一節を、ぎゅっとまとめ、お願いしました。
「カボチャの種は半年後の変化までその中に秘めています。
この不思議まで見ることのできる人が自然を見ますと、単に自然を見ているだけではなく自然あらしめているものも同時に見ているのだ。
この自然と自然あらしめているものを合わせて大自然といい、大は大きいでなく絶対という意味の形容詞なのです。」(岡潔著「風蘭」より)
先人たちがつくりだした里山は、単に自然の仕組みを利用しただけではなく、大自然への畏敬があらわれています。
まさに先人たちは、岡潔さんが言う、“この不思議まで見ることのできる人”であり、“大は大きいでなく絶対という意味”という数量の意味があらわす質の違いを体得していたことが分かります。
現在、越生団扇の伝統を受け継ぐ工房は1軒だけとなりました。
柄や骨組みの材は店主自ら伐り出した地元の竹、紙は小川和紙、筆は書家の先生によるもの。
地元の素材そして幾多の手しごとを経て作られた団扇です。
なんとぜいたくなことでしょう。
20年前に相棒クンが購入した柿渋塗りの越生団扇。
縁が破れてしまい工房でお直し頂きました。あと20年でも使えそうです。
水場のある風情
わたしたちの“小さな森のある畑”は、あたらしい実験をはじめています。
グミの木のそばに、小っちゃい田んぼエリアをつくりました。
田植えをしたあとは日照りと雨不足の日々が続き、稲は雨が降るまで持ちこたえられるかと肝を冷やす日々。
集中降雨のあと、やっと田んぼに水がたまりました。
6月から続く猛暑のうえ、天水のため、グミの木を利用し雨水を溜める備えが必要です。
それまで稲さん持ちこたえてネ。
12本の稲を植えた、リトル タイニー ライスフィールド。
小さな森のある畑に、どんな変化がみられるか楽しみです。
どこで分かるのかな?
田植えの翌週、稲を観察すると、もうイナゴが来ていました。
夕立があれば・・、ひと雨の重み
肥料もあげない、耕さないうちの畑で、いちばん生命力旺盛に成長するオクラ。
毎年採りきれないほど実ができます。
そんなオクラでも、さすがに今年の6月からはじまった猛暑と雨不足は、生長栄養に力を発動できないようです。なかなか丈が伸びません。
いつの間にか、株が成長する前に花を咲かせ実を付けてしまいました。
キュウリはさらに厳しいです。
実ができたのは半月前にできた、成長しきれなかった、この1つのみ。
7月の末になっても、キュウリの収穫はゼロ。
去年は何本とれていたか、
ノラ日記を読み返してみると、7月30日、キュウリの収穫は22本。
食べきれない量が育つほどに生殖成長が高まっています。
キュウリは95%が水分。今年の異常気象ぶりがうかがえる事態です。
炎天下の畑しごとの合間に、もぎとったキュウリにかぶりつくことが出来ないなんて・・考えてもみませんでした。
オクラは何とか種採り用は確保できました。
収穫した実は小さいけど味が濃~い。
待ちわびた夕立のような雨。自宅にいても、雨が降ることで、こんなに安堵するなんて。
雨にどれほど、いのちが支えられているか、身に沁みます。
果樹が営巣木になりました
スモモの木に巣があるよ♡。
どこどこ?相棒クンが指した先を見上げると、枝のまたに巣があります!
小枝で巣を組んでいます。出来上がるまで、いったい何往復、小枝をはこんだのかしら。
それより何鳥の巣なの?
数時間後・・。鳥が巣に戻っている。
キジバトのようです。
ここでヒナをかえすのかな。
鳥が安心できる場所なんだぁ。うれしいな。
樹下の土壌は栄養豊富?
グミの樹下に植えた素麺カボチャです。
葉の色が濃い。日照りや水枯れ続きでも葉はやけていません。
すぐそばのティピに植えたカボチャと比べてみると・・。
ティピのカボチャは葉色味がかり、樹下は色が濃い!!
梅の樹下で自然生えしたヘチマ。繁茂は旺盛、葉色も濃いです。
樹木の下は、葉からしたたる雨粒に栄養があるため、肥えた土壌になることの証でしょうか?
樹間はコガネグモの営巣空間
空の真ん中にうかぶ黒い点はコガネグモ。左は畑に果樹を植えた人。
果樹と果樹の間に糸を掛けたコガネグモ。コガネグモは、背の高い草木に円網を張ります。
モズが梅の木に早煮えをのこし、キジバトがスモモの木に巣作りをしています。
果樹の間は、コガネグモの自由空間。
地中はモグラが今日もあちらこちらの土を耕してくれています。
十三年目に入る小さな森のある畑は生態系がにぎやか。
人も自然の一部。その中で、天(大自然)に雨を乞う、自然の恵みを生かす、生態系の健全化を担うことができるのは人間だけ。
(中川美帆)