第55回 野菜の先祖返り、使われない機能も察知しているのか?

2021.9.1
映像の持つ力

猛暑は先祖返りも誘発するのかしら?

収穫の取り残しはないかティピをのぞくと・・・、
アマガエルがヒョウタンの上でひと休み。よく見るとほぼ垂直な面にアマガエルがとまっています。
指先に付いている吸盤を上手に使っているようですね。

ふむふむ。それにしてもヒョウタンなのに垂直ってどういうこと?
ヒョウタンの特徴はくびれのある形状。

うちの小さな森のある畑で育つ、今年のヒョウタンは2つの変化が見られます。
一つ目は、受粉時の猛暑が影響していのが、実を付ける数が多いけれど皮のアクが強い。
二つ目は、先祖返りしているのかしら?ヒョウタンの特徴である、くびれが消えたものが、いくつか出ています。

ヒョウタンのソテー フェンネルシードを入れてエスニック炒め 今年は皮のアクが強い

 

ヒョウタンは最古の栽培植物の一つと言われており、一万年以上ものにも渡り栽培し続けられています。
くびれのある種が選抜された理由は、ヒョウタンが水を掬う、容器にと道具に適しているから。
さらに、くびれに紐を掛けることで持ち運びがしやすい。

種にくびれが定着するまで、一体どれぐらい栽培→選抜→採種→栽培という品種育成のサイクルを繰り返したことでしょうか。

 

くびれが無くなる。必要とされないことを察知したのか?。

台所にお玉柄杓がなかったら・・。小さい鍋を使うなど代用はできるけど、やっぱりお玉柄杓は便利。
ヒョウタンであれな縦に割るだけで柄杓になる。古来から長きにわたり利用され続けたことが頷けます。

ヒョウタンと言えばの特徴は二段のくびれ型。
くびれが消えた理由を考えてみます。

人がヒョウタンをかつてのように持ち運ぶ容器として意識することが減った。
二段のくびれを求める人の意識が年々薄れている。
こうした人の無意識の行動の変化もヒョウタンはキャッチし先祖がえりが誘発されたのかも知れない。

栽培植物が種を未来永劫にわたり残す秘訣は、担い手である人の好みを微細に察知することですよね。

 

 

ウリ科三兄弟、ヘチマは晩生

ようやく十角ヘチマの花が咲きました。
畑には十角ヘチマの幼果がいっぱい。

キュウリ、ヒョウタン、ヘチマのウリ科三兄弟は、セットで植えています。
キュウリは大きさに大小はありますが週末ごとの収穫で20本は下りません。猛暑でヒョウタンも10個前後は収穫できます。

夏のウリ科三兄弟が一度に実をつけてしまうと、手に負えません。
成長時期が異なりよかった。ほっ。

電車が行きかう線路のよう。
(左から右に)上りがヒョウタン。(右から左に)下りが十角ヘチマ。

 

 

行燈が無くても・・

何の虫?茶色の虫がカボチャの葉に何匹もたかっている。
相棒クンに聞くと、答えはウリハムシでした。

わたしたちの畑ではウリハムシ対策の行燈囲みはしていません。
生きものが多いから、適度に捕食され、ウリ科の野菜の成長が阻害されるまでウリハムシが増えないからです。

地這いのカボチャ。畝を超え、菊芋を見つけると茎を支柱に見立てぐんぐんと上っていきます。

葉はウリハムシに食べられていますが菊芋に巻き付いて結実。強いね。

 

 

先頭はこぼれ種組が陣取る。

うらべに紫蘇と小豆(あずき)の畝。
小豆は種蒔き、うらべに紫蘇は自然生えしたものを移植。
手前は、こぼれ種から自力で成長したエゴマと決明子。

エゴマと決明子は強い!
畝のそこかしこに乱立していましたが、こうして数本に刈り揃えると、決明子は木のように頑丈に育ちます。

 

お隣は、奥からミニトマトと落花生の畝。
先頭は、自然に生えた決明子とうらべに紫蘇。

 

手前から、落花生、小豆(あずき)、すもも、ポポーの木、杏子。
こうした高低差のある植物を混植し、生息する生き物の多様性を醸していきます。

 

 

収穫あともお日様に助けられる

太陽の光を午前中に浴びると、幸せホルモンである脳内のセロトニンの分泌を促してくれますね。
野菜を天日干しにすると、歯ごたえが出る。味が凝縮する。栄養価がアップします。

 

野菜の天日干しでありがたいのは、何と言っても量が減ること。
家庭菜園でも手に余るほどに育つキュウリ。
大きく育ったものを中心に天日干しです。

キュウリを天日で干したあとは、スープ、炒め物、福神漬けなどに。うま味と歯ごたえが増し食がすすみます。
意外に美味しかったのが、干した丸ごとキュウリに赤味噌をまぶし、直火で焼いたもの。
わたしたちは、どれだけ、お日様に助けられていることでしょう。

 

種採り用のキュウリ。初めて栽培した品種「バテシラズ」。
充実した種を採ることが出来ますように。

 

 

収穫→食べる。収穫→種採り。

ナス科ファミリーにコショウが仲間入り

「ぼたんこしょう(牡丹胡椒)」ナス科トウガラシ属。
袋には長野県中野・飯山地区の伝統野菜と記載されています。

うれしい!!長きにわたり地域に受け継がれた野菜をいただくことが出来ます。
ちょうど私たちの畑で、秋ミョウガが採れました。
信州郷土料理 “やたら”を作るべしですね。

“やたら”は、ナス・キュウリ・ミョウガなど夏野菜を細かく刻んだご飯のお供。
「ぼたんこしょう」の、さわやかな辛さがくせになり、ご飯が“やたら”とすすみます。

牡丹胡椒の他に、エノキ、畑で採れたモロヘイヤ・キュウリ・ピーマン・紫唐辛子を加えました。

 

“やたら”の味を決める食材は大根の味噌漬け。今回は、寒漬け(山口県の漬物)と自家製味噌ダレで代用。

 

「ぼたんこしょう(牡丹胡椒)」、貴重な固有種ですから食べるだけではもったいない。種採りをしましたヨ。

こんな小さな種から実が成る

 

来年の作付けは、ナス科に新しい品種が加わります。
ナス科は交雑しやすいため距離を十分にとり植えます。
どのような実を付けるかしら。

八月の畑。ニラの花に囲まれています。

 

八月の長雨で、ツユクサが再び開花です

 

キュウリとツユクサの花

 

 

ベランダのバケツ稲はモミが充実

稲(あきさかり)の開花。外に飛び出しているのは雄しべ。
稲は開花が終わるとモミが閉じ、受粉を終えて花粉が空になった雄しべが飛び出します。

 

稲穂の穂先が垂れ始めました。登熟のサイン。
籾の中の雌しべの付け根にある子房にデンプンがたまり始めています。

 

本家の田んぼ。早生種「あきさかり」から受粉が始まっています。

 

緑米の水路脇では蒲が出穂

 

 

おすそ分けできる喜び

相棒くんが一人ではじめた、小さな森のある畑。
広さは1000㎡弱。週末を過ごす家庭菜園の規模ではないうえに、土壌は粘土質。
循環型の自然農の手法。
農機や資材をできる限り使わず、鎌や鍬の道具と体ひとつ。
肥料や耕すことではなく、刈っては草を敷き、畝をひとつづつ増やし、野菜、果樹を植えていきました。

初めは一面、同じ草ばかりだった畑が今では、数えきれない草や野草がそこら中に生えています。

生きものは、ナメクジ、テントウムシ、黄金(コガネ)グモ、ミツバチ、葉切り蜂、馬追い、バッタ、カマキリ、コオロギ、カエル・・・ ネズミ、モグラ、ヘビ、モズの早煮え。

地中のミミズは太くなり、土竜塚(もぐらづか)もふえました(モグラに耕された土は細かくふかふか)。

幼苗のころ地中を掘り進むモグラに掘り返されたモロヘイヤ。今では収穫ができるまでに成長しました。

 

自然環境の豊かな場所に生息する黄金グモ。
八月に入ると、果樹から果樹に糸を張っていた黄金グモを、地這いキュウリが育つ地面の近くや、草丈の低い場所で見かけるようになりました。

ちょうど月末に自然観察大学のオンライン講座があり、浅間先生に質問してみました。
この時期は黄金グモの産卵期。円網状の巣ではなく、産卵のための一時的に引いた簡単な網で過ごし、良い場所を見つけて産卵するのだそうです。※2

いつもと違う場所で見かけた大きな黄金グモは産卵場所を探していたのでした。
小さな森のある畑に、黄金グモが安心して産卵できる場所があるんだね。

 

「初めの五年は人からおすそ分けをしてもらうばかりだったけれど、今ではおすそ分けができるようになった。」ほほえむ相棒クン。
会社勤めの傍らの週末野良しごと。その十二年の歳月はしっかりと、ここに棲まう生き物の変化に現れています。

 

ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士は言います。※1

「農業は科学者です。農業は、計画と行動で成り立つ科学に似ている。
日頃の農家の働きにより、人を感動させる棚田や里山なとの美しい農村の風景か守られるのです。
美しい眺望の先には農業があるのです。」(提言より抜粋)

 

人は自然の一部。
一人で始めた12年の時間。こんなにも生き物が増えます。
人が、日々の暮らしの中で、自分の食べ物にかかわることは、生態系を健全化する確かな一歩となる。

(中川美帆)

鉢植えだったアマリリス 畑に根付きました

 

リンク紹介

※1 JAグループ
私のオピニオン 大村 智

※2 自然観察大学(NPO)
2021年度 ミニ観察会

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