第56回 遅ればせの土用干し
2021.10.1映像の持つ力
3日続く晴天の時期を見極める、けっこう難しい
ようやく梅の土用干しが出来ました。
「梅雨が明け、晴天が3日続くとき」を見極めることが、梅の土用干しで大事なこと。
とは言え、タイミングが合わず9月に持ち越し。
今年は大ザルを用意。天気予報を確認し、今日しかないっ!と作業開始。
予想外の天候続きですから気が抜けない日が続くなか、無事に晴れ間が3日続き、梅の土用干しが完了!!
シソは赤紫蘇ではなく裏紅紫蘇(ウラベニシソ)を使いました。
裏紅シソは、表は緑、裏が赤い紫蘇です。香り良く色も濃いから梅干し作りにピッタリ。
今年のシソ漬け梅干しは100個ほどができました。
梅の実もシソも畑で採れたもの。ありがたいなぁ。
いよいよ10月からのランチ・オニギリに、自家製の新梅干しが入ります。
梅干しのスケジュールは、
6月の梅の下漬けに始まり、赤シソが出回る頃に本漬け、梅雨明けの7月下旬に土用干し。毎年、天候不順ですが、みなさんはどうしているのかしら。
こうも天候が急激に変わる状態では「3日続く晴天の時期」を見極めることでさえ、けっこう難しいですね。
自前が増える喜び
梅の土用干しのタイミングが合わない理由は天候の他に自前の紫蘇を使いたいからです。
赤シソが店頭に並ぶころ、私たちの畑の紫蘇はまだ収穫期をむかえていません。
梅にシソを漬け込む本漬けは、畑の紫蘇が収穫できるまで待ちます。
わたしたちが週末を過ごす、“小さな森のある畑”では、青シソ、赤シソが育っていますが、裏紅シソがダントツで成長旺盛です。
梅干しには収量が揃う裏紅シソを使っています。
そして裏紅シソよりも繁茂しているのが荏胡麻(エゴマ)。畝を超え、通路で踏まれても構わず成長しています。
花は葉が進化したもの
9月に入ると、シソやエゴマは花穂を伸ばし始めました。薹立(とうだち)です。
葉と茎の成長から、花作りに変わる花葉(かよう)に変態し花になる芽をつくり始めます。
花芽の分化と呼ばれ、栄養生長から生殖生長へと転換します。
葉が変態したものが花。
え、葉の1枚が花になるの?、
そうではなく、1本の茎に葉がついている一帯(シュート)が、花を構成する各部位(ガク、花弁、雌しべ、雌しべ、包葉)に変態し花になる。
シュートについている葉が、それぞれ花の各部位に変容したものが花葉(かよう)と呼ばれます。
こうして花芽が分化すると、葉が固くなってゆきますから葉摘みは終わりです。
紫蘇の花は花穂の下から上に咲きあがってゆきます。
この写真のように花穂の上に花が残っているぐらいが、穂紫蘇づみに適しています。
さて収穫し穂紫蘇の塩漬けを仕込むかな。・・残念ながら下ごしらえする時間がない。
紫蘇の穂づみは来週におあずけ。でも畑に行くころには種が出来ているかしら?。
紫蘇や荏胡麻は、8月までは葉、9月に穂を楽しみ、10月は実の収穫です。
刻んで漬けてどれもご飯に合いますネ。
わたしたちの自然農の田んぼではお米の収穫は12月。新米のお供でいただくことを楽しみにせっせと漬けよう。
家庭菜園ならではの恵み
大きくなったオクラも食べられるの? お隣の農家さんが声をかけてくださいました。
そうなんです。食べられます。
猛暑を過ぎ気温が下がりはじめた時期のオクラは、登熟がゆっくりのためでしょう、市販の倍の大きさ十五センチを超えてもサヤが固くならないのです。家庭菜園のいいところですネ。
先週、紫蘇の穂づみを諦めた理由は、こんなにオクラが採れるから。
オクラ優先です。食べきれない分は冷凍保存にします。
自家採種ですから、収穫と同時に種採りも確保。
それにしても耕やさない粘土質の土壌のうえに肥料をあげていないのに、オクラは毎年よく育ってくれるものだなぁ。
あ、耕耘は、わたしたちの代わりにモグラが耕し土を柔らかくしてくれていたっけ。
9月初旬のオクラ。三週間後には・・・
隣にあるアーチのと同じ高さになるほど背丈を伸ばしました。
今年はヨトウムシ(夜盗虫)が多い。オクラの葉が葉脈だけになっています。(上手に食べるね)
カラスのお知らせ
さて、9月の野良しごと。大事な作業があります。網掛け。
田んぼはスズメ、畑ではカラスとアライグマ避けのため。
落花生に網を掛けに行くと・・ああ、掘り起こされているではないですか。
ほー、カラスに掘り起こされたのは一部だけで済んでいる。まだ美味しくなかったかな?
落花生の畝の近くにある板に殻が散乱している・・・
カラスは板をお食事テーブルに使ったのかしら?。
それにしても上手に食事場所まで見つけて食べるもんだねぇ。
思い出せば先週、カラスが落花生の近くのもみ殻置きにとまり落花生を偵察していたっけ。一歩遅かったなぁ。
落花生の畝に網かけ完了、これでカラスの掘り返しは防げるでしょう。
カラスの行動で、順調に落花生が熟していることが分かりました。
生姜畑で仮り掘り。順調に育ち葉生姜を収穫!(株元の赤みは収穫のサイン)
葉の部分はお風呂に入れてショウガ風呂に。
新生姜を肉で巻いた、生姜焼きを作りました。
(参照レシピ:ごはんジャパン。)
この生姜も自家採種。
生姜は部屋のプラボックスを室に見立て、中には土とモミ殻を入れ冬越しさせました。
たったひとつの欠片を地中に植えて4ヶ月、こんなに育つなんてね。
少量多品種栽培で混植の畑は草にも囲まれます。
日陰を好む生姜だから大豆の隣に植えたことも合っていたようです。
梅雨のあとの長雨も乾燥に弱い生姜には幸いだったでしょう。
ゆっくり地上に芽を出し茎葉を成長させました。
一生懸命に草刈りした甲斐があるものですね。
瓜の稜線
十角ヘチマ 十本の稜線が角のようになっていることが名前の由来。
束子用のヘチマ。9月中旬
一週間後の束子用のヘチマ。成長と共に稜線がくっきり。
キュウリ、品種はバテシラズ。9月の初旬まで収穫できました。
胡瓜(キュウリ)の古名、ご存知でしたか?。稜瓜(そばうり)。
稜の瓜。由来は稜線模様からきたのかしら。
うちのキュウリは稜線がしっかり出ています。
これも先祖返りなのかしら?
数年前に塩漬けしたキュウリ。
どのキュウリも十角ヘチマと同じく稜線は十本です。
ベランダ里山も先祖返り?
ポップコーン。種が採れました。
バケツ稲。
あれ?芒(ノギ)が出ている。麦じゃないよ、野生の稲でもないよ、栽培種の稲なのに。
平成28年のプレスリリースを見つけました。(※1)
『大麦や小麦は芒があって、何故イネは芒がないのか?』 〜イネが芒を失った理由の解明〜
・名古屋大学大学院生命農学研究科の研究グループで、イネの「芒(のぎ)」を制御する遺伝子の同定と機能解析に成功。
・オオムギやコムギには芒があるのに、何故イネには芒がないのか、その分子メカニズムの一端も明らかした。
とあります。
野生の種を蒔き稲作が始まったのがおよそ三万年前。
なんと、何万年もの時を経て、先人たちが栽培と育種の過程で得た「芒の出現をおさえる」という仕組みが、ようやく分子レベルで解明できたとは・・・。
総務省統計局によると、日本の人口は1億2521万人(令和3年9月1日現在の概算値) 。(※2)
江戸時代(末期)は人口三千万人を完全な循環型社会で養いました。
2021年を迎えた現代。品種改良技術や機械化は進み、人の総数も4倍にも増えています。
せめて、お米だけでも自給できる国に戻りたいですね。三万年を下らない栽培を繰り返した土壌があるのですから。
明治以降、日本は何万石の国に変わったのでしょうか?
そうだ、日本は今、植物が育つ土壌をどれだけ持っているのか農林水産省に聞いてみよう。
三万年をこえる土壌には人が丹精込めた時間も含まれています。
人は自然の一部。
(中川美帆)
リンク紹介
※1: 名古屋大学HP/研究教育成果情報
『大麦や小麦は芒があって、何故イネは芒がないのか?』 〜イネが芒を失った理由の解明〜 プレスリリースpdf
※2: 総務省統計HP
統計データ/人口推計(令和3年(2021年)4月平成27年国勢調査を基準とする推計値,令和3年(2021年)9月概算値) (2021年9月21日公表)