第155回 花掛水

2021.7.31
いしだのおじさんの田園都市生活

7月第4土曜日に田んぼの草取りをした。
グーっと、暑かったけれど、やっぱり楽しい時間だった。
6月は、第3土曜日だった。(前回のコラムに書いた。)
みなさん、それぞれに田んぼに来てくれて、作業をした。
なので、作業の前に集まって話をするということもなかった。
それはそれで、ぜんぜんOKなのだが、
もしも、みなさんに集まってもらって、
ちょっとリーダーっぽく、校長先生?みたいに、話をするとしたら、、、
そんなことを考えて、以下、です。

みなさん、おはようございます!

連日続いてウンザリの猛暑の中、
また、いつの間にか旗が立っていた4連休、でも私は休んでいませんが、の中、
そして、また、
反対も押し切られたオリンピックだけど、やっぱり競技は見たいという状況で、
あるにもかかわらず、
この、
辛く苦しい修行のような、
田んぼの草取りという作業に、
こんなにたくさん、お集まりいただき、
感謝カンゲキアメアラレ、でも雨降らずでカラカラ、という状況、です。
ありがとうございます。

4月の種まきから始まって、5月の田植え、6月の草取りと、
みなさんに参加してもらい、共に育ってきた稲、
分けつして株も増えて、背丈も伸び、大きくなりました。
順調と言っていい状態です。
草も、前回のみなさんの頑張りもあって、
生えてはいますが、この田んぼにしては、少ない、いい状態です。

田んぼは、今週の初めから水を落として乾かしています。
もう、地面は乾いていて、ひび割れています。
足も泥に潜らずスタスタ歩けます。
これは、土用干しといいます。
稲の根に酸素を供給して、これから穂が育つ株を強くします。
また、地面を固くして稲刈りのときに作業がしやすくなります。
季節が土用なので、土用干しです。
今日が土曜日だからじゃないですよ。

稲を見ると、もう出穂(しゅっすい)していますね。
デ(出)、ホ(穂)と書いて、シュッスイと読みます。
ところどころ、穂が出てきて、花が咲いています。
今日は穂孕み(ほばらみ)くらいかなと思っていたんですが、早いですね。
でも、そうか、今年は4月の10日前に種まきをしたんでしたね。
今日の草取りを終えたら、人間はしばらくは田んぼには入らず、
水をたっぷりと入れていきます。
「花掛水」と言います。

ハナカケミズ、って、ステキな言葉だと思います。
思いませんか?
実際に花に掛けるわけではないけど、
土用干しで乾かしていた田んぼに、花が咲いたらまた水を入れて、
稲も土もそして生き物たちも喜んでいるんじゃないかと、
想像すると愉しいし、
この水を稲がどんどん吸収してお米が太っていくのではないかと、
期待を込めているわけです。

人間は暑さが続くとメゲますが、
稲は暑いのが大好きです。
ただ、それはじゅうぶんに水があってのことですし、
夜は気温が下がった方が、寒暖の差があった方が良いです。
ここは、谷戸で、森に囲まれているので、
夜の気温は平場よりは下がるでしょう。
それはいいのですが、水は厳しいです。
平場で耕地整備されてポンプなどのある所とは違って、
森の奥から流れてくる水が頼りです。
谷戸のしぼり水です。
雨で降った水が、森に浸み込み湧き水となって小川を流れてくるわけです。
ここは田んぼの上と下に小川というか用水があるのですが、
下の方が水量が豊富で、田んぼに水を入れる上の方が水が少なめなんです。
空梅雨などでしばらく雨が降らないと、水が乏しくなります。
この田んぼをずっと作ってきていた地主さんのお祖母ちゃんがいました。
その方は、森の向こうが開発されて町になって水が減ったと言っていました。
これだけ森があるのに、なんですね。
50年くらい前は今のK町はまだ無くて、森の向こうもまた森だったんですね。

しかし、また、平場とここの違いを言えば、
平場の田んぼの用水は稲を作っている時季だけ水が来ているけど、
ここは、1年中日照りにさえならなければ水が流れているということです。
そこで、今年は、3月の中旬から田んぼに水を入れました。
冬期湛水という農法があります。
「ふゆみずたんぼ」と言ったりもします。
冬場もずっと田んぼに水を入れておく方法です。
抑草、地力アップ、生物多様性などを狙ってする方法です。
宮城県の伊豆沼周辺などは雁が多く来るようにということでやっているようです。
私の知り合いの会津の農家さんもやっており、無肥料栽培が可能で、草も少ないそうです。
3月からだとちょっと違うのでしょうが、でも、なんかだか効果があったような気がします。
去年の今ごろは多かったイヌビエやカヤツリグサなどが、今は見当たりません。
稲の株の育ちも良いように思います。
そして何より子どもたちが早くから田んぼの泥遊びをたくさんできて良かったです。
来年はもっと早くに水を入れてみようかな、と、思っています。

今日は、前回の草取りで取り残した草を取れたらいいと思います。
前回は、田車を使って、
Rくんの「オオタニサン」や、AくんやNちゃんも活躍してくれましたが、
今日は、テデトールや鎌などを使います。
田車に期待していたRくん、ゴメンナサイ。
稲が伸びているからしゃがむと葉っぱに顔や目をつつかれますので、気をつけてください。
刈り払い機も動きますので、これも気を付けてください。
華奢な女性だけど、Eさんが上手です。
あとでお父さんにもやってもらおうと思っています。

さっきも言いましたが、
今日、頑張って草取りをしたらしばらく人間は田んぼには入りません。
お盆の前に稲の粒がはっきりしてくるころにスズメ除けを設置します。
そのころに稗の株が見当たるようならまた稗取りが必要になりますが、、、
そうならないように、今日を頑張りましょう。
水分補給と休憩は、各自、気を付けてください。
よろしくお願いいたします。

校長先生は現れず、田んぼのアレコレの説明は無かったが、みんなで楽しく草取りをした。
「石田さぁん、これ出してぇ」と田車に期待していたRくんはガッカリだったようだけど、
でも、子どもたちはみんなサツマイモの畑を走り回っていた。
Tくんの父は、初めて刈り払い機を使い法面の草を刈った。
女子Eさんの刈った部分との差が歴然でオモシロかったが、「楽しい!」と。
「これ、お金払ってでもやりたいですね」とのコメント。
な~に谷っ戸ん田では、刃物快汗の会、と、言っていたこともある。
合法的な破壊活動のキモチヨサ、でもある。
刈り払い機の楽しさを知る人が増え、しっかりと使える仲間が増えれば、、、
な~に谷っ戸ん田では荒れていた雑木林が整備されてキンランが復活した。
ま、まずは楽しさに触れることができて良かった。

畑では、ゴーヤ、モロヘイヤ、空芯菜、インゲンなどが収穫できてお土産になった。
そうそう、この日限定のスペシャル、トウモロコシも!ワイワイと収穫して昼過ぎに解散。
石田、田んぼに水を入れるのを忘れて帰った。

(石田周一)