第154回 いったい何を探しているのか
2021.6.30いしだのおじさんの田園都市生活
頭の中、あの歌がリフレイン。
これは、きっと、気分が上がっている?から?
「探すのを止めたとっきぃ、
見つかることもよくあるハナシで、
踊りましょう、
夢の中へ、
行ってみたいと思いませんかぁ、
トゥフッフー」
田の草取りをしていた。
田んぼで、足はもちろん両手も泥に突っ込んでいた。
「這いつくばって、這いつくばって、
いったい何を探しているのか」
田植えから1月経って、
稲は活着し、そこそこ伸び、分けつも進み、悪くない。
だが、草もモサモサと元気。
「上農は草を見ずして草を取る」
のタイミングを逸していた。
これは、稲苗がようやく活着するかしないかの、
田植えから1週間後のころだ。
ちょうどそのころ、出稼ぎが始まり、心身が少し田んぼを離れていた。
「中農は草を見て草を取る」
のタイミングで、何度か田車。
田植えでも活躍した利用者KとJ。
まだ新人のKは途中でこけたりしながらも、
田車の魅力も感じていたようだ。
Jは、事情があって昨年は田んぼに入れなかったが、
ベテランらしくパワフルな足運びを見せてくれた。
なぜか毛糸の帽子をかぶって、、、
私もいい年して若者といっしょに田車!
しかし、草たちはそれでもザワザワ、、、
コナギがびっしり、オモダカは花が咲きそう。
「下農は草を見て草を取らず」
に近いタイミングで、「土曜日にみんなで草取りしよう!」
と、なった。
田植えも楽しんでくれた親子たちが集まってくれた。
仲間がいること、ありがたい。
前日、畔の草刈りをしておいた。
機械を回している私の足元に何やら黒光りしてニュルリと長い物。
ちょうどそのときも何人かの親子が畑に遊びに来ていた。
「よし、見せてあげよう」と、捕まえて、持って行った。
2mを超えるアオダイショウ。
5歳の女子2名とその母たちは、「わー」と歓声をあげた、
が、キャーキャー逃げ回ったりはせず、
母たちが写真を撮れば、娘は「パパに送って」と。
畑に放して逃げていく姿をずっと追いかけていた。
翌日、田んぼの作業の前には別の団体が収穫体験。
30数年前に私が勤めていた「さくらんぼ会」の父子とヘルパー。
お父さんたち!ご苦労様です!
ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、玉ネギと収穫して盛り上がった。
特に、玉ネギの収穫には勢いがあった。
掘らなくても、どんどん取れるからオモシロいのかな。
「おじさん、虫がいたよ。何これ?」
「ああ、それは、ハサミムシだよ。おしりにハサミがあるでしょ」
なんて、感じで。
石田、勤めていたころは、幼気な子どもにも厳しいセンセイ、
だったけど、、、
今は、。。
対人援助は、相手の年齢(発達段階)、こちらの年齢で、立ち位置が変わる、
と、思っている。
あのころ、
チビ達の前に立って引っ張り上げるようなことも必要だった。
そのあと、青年たちの横か少し前で伴走、か、並走、並歩。
今は、前に立っていても後ろから見守っている気分。
さて、草取り。
田車二つ、1条用と2条用。
あとは、テデトール。
母たち、臆することなく、グイグイと田を歩く。
この自主保育グループは、いつも山の中を歩いているから、みんなワイルド。
でも、
「石田さん、草って、抜いたら、どーするんですか?」
アハハ。
「田んぼでは、抜くというより、引っ掻き回すんだよ」
手を熊手にして、稲株の周りを引っ搔いて、
ね、そして、それを手で埋める。足でもいいけど、
と、やってみせる。
草は抜いていられないほど、たくさんある。
田車は子どもたちに人気。
田植え前の泥遊びではなぜか大泣きしていたR、
Tのお父さんと2条用で快調に歩を進めている。
よくわからないけど「オオタニサン!」の掛け声を元気に繰り返す。
5年生のNちゃんは1条用で一人頑張る。
「学校でも田んぼやっているけど、これはやったことないから」と。
いつも質問が多い1年生のAくん、
「石田さん、なんで爪が前には4枚で後ろは5枚なの?」
って、おじさん、そうやって見たことなかったなぁ。
みんなが先に田んぼから引き揚げても、「もっとやりたいな」
と、田車の感覚を試し確かめながらやっている。
田の草取りは苦行である。本来は、、、
でも、楽しい、のだ。
なぜだろう。
みんなで集うから、か?
稲が喜んでいるように見えるから、か?
秋の収穫と「美味しい!」を想像するから、か?
米を食う日本人は、、、いや、米を作る日本人は、
何千年も田の草と戦ってきた。
(戦わずに食う特権階級と、戦うが食えない百姓の時代もあった)
一番草、二番草、三番草、、、
腰をかがめ、稲の葉に目をつつかれ、炎暑にさらされ、、、
今では、便利な薬がある。
田植え後一発処理剤を使えばほとんど草は出ない。
一発だけで済めば、「特別栽培米」だ。
草取りって大変でしょう?
「無農薬」って、口で言うのは簡単だけど、
実際にやるのは大変なんだよ。
農薬を絶対悪のように言うけど、
ちゃんと作物の状況も見て基準を守って使えば、
これも真っ当な技術なんだよ。
そんなにイヤなら、自分で田の草取り、しなよ。
なんて、言っていた以前の石田もいた。
草取りの翌日日曜日、
日本有機農業学会のイベントにZoom参加。
「今なぜ、有機学校給食なのか?」
千葉いすみ市では子どもたちが食べる給食の米の全量が地元の有機米という。
始める前は有機米を生産する農家はゼロだったなかで、行政主導で進めた。
移住者も増え、地域が活性化されているともいう。
仲間と草取りを楽しんだ6月の土曜日だった。
田んぼから上がって、
カボチャ、玉ネギ、ズッキーニ、ぐるめペコ、ゴーヤー、インゲンなど収穫。
「枝豆、空芯菜、オクラも、もうすぐだね」と話し、
「また、よろしくお願いします」と解散した。
みなさん、いい笑顔をしていた。
草はまだまだある。
7月にも土曜日草取りを楽しもう。
苦行であるはずの草取りを仲間ときっと楽しもう。
なぜ、楽しいのか、ワカラナイ?
から、、、
「いったい何を探しているのか」
(石田周一)