第151回 釜飯仲間・おこげのお話

2021.7.30
神奈川・緑の劇場

「釜飯仲間」=おこげのお話=
国連「SDGs持続可能な開発目標2030年・家族農業の10年 2019年~2028年」
~みんなのしあわせは、おいしさの先に!~

今年に入ってから「みどりの食料システム戦略」について触れてきました。あらためて概要は以下のとおりです。

2021年5月12日「みどりの食料システム戦略」が正式に決定されました。農林水産省による、2050年を目標とする「農業の環境負荷低減と生産基盤強化を目指す」政策方針です。

■農林水産業の二酸化炭素排出量実質ゼロ
■有機農業を全農地の25%(100万ha)に拡大(※2018年は約2.3万ha)
■化学農薬の使用量半減
■化学肥料の使用量三割減
■化石燃料を使わない園芸施設に完全移行

国の農業政策に対して強い不信感を持つ者として幾つもの疑念、課題を感じながらも、実現して欲しいし、実現に向けて速度を速めて欲しいと願うのです。

なぜ不信感を持つのか?簡単に言えば、カロリーベースの食料自給率は38%、基幹的農業者の数は減り続け、高齢化し、耕作放棄地は増え続けています。そのようにしてきた国が、突然上記のようなことを言い出したのですから、あっけにとられたのは私だけではありません。そうして、よく見れば、やはり、そのような課題には全く答えようとしていないのです。

生産基盤強化と言えば聞こえは良いが、今、世界規模で重視しなければならないとされる、それは飢餓対策として、気候変動対策としてのみならず、生態系をになう人間の在り方として見直される小規模農業、家族農業重視の視点が全くありません。

有機農業も同様です。国がいう有機農業とは?私たちは有機=安全と思ってしまいます。が、農薬を使っても基準以下ならば安全というのが国の立場です。放射性物質の残留基準と同様です。一方でゲノム編集、遺伝子組み換えはすすめようとしています。

さらに、1970年代から、コツコツと有機農業の実践を重ねてきた生産者たちもカヤの外に置かれています。有機農業を普及する人材育成を国は全くしてきませんでした。それでいて、有機農業の技術移転をすすめるといいます。何かマニュアルがあって出来るかのようです。いままで以上に生産者の声をしっかりと聞き、伝えたいと思っています。日本で有機農業が広がらないのは、生産の労力にみあう収入が得られないからともいわれます。見かけの揃わない作物でも一定価格以上で購入するように消費者の理解が必要だと、国は、消費者のせいにしているのです。

“たべもの”から見えてくる問題は、私たちの暮らしすべてに関わり、すべての人間に等しく関わります。生きていくために不可欠なものなのに、手に入るのがあたりまえとついつい思って生きてきてしまったと、今、あらためて思っているところです。

地球温暖化・気候変動対策が急務とされています。激しい気象現象がいつ襲ってくるかわかりません。河川の氾濫、土砂災害も頻発しています。日本のみならず、世界規模での災害は、食糧生産を脅かし、飢餓に直結します。しかし、私たち一人一人のなにげない暮らし方、とくに、日々の食事のありかたしだいで、解決の道筋が見えてくるのです。

私たちは、心と体、社会の健康を願う「食べもの通信」の読者会を始めました。創刊51年になる月刊情報誌です。一人で読むよりも数段楽しい!何より、自分の暮らし方を少しずつ良い方向に変えられています。どうも、私だけではなさそうです。

フリースペース「はまどま」の企画でしたが、今ではリモート参加がすっかり定着しました。コロナ禍が落ち着いても、リモートは続くことでしょう。遠く離れた場所に暮らす人とも気軽に顔を見てお話できること、幼い子がいるなど、家を離れづらい人も参加できることも魅力です。もちろん、直接会って話すことの大切さも感じています。

私自身は、生産者が確かな地産地消の農産物販売と、「食べもの通信」読者会、そして、このコラムを軸に当面の活動を進めたいと考えています。

「釜飯仲間」=おこげのお話=としては、今回を最終回とします。

次回からは、「神奈川・緑の劇場」として再出発したいと思います。

●●創刊50年・心と体・社会の健康を願う家庭栄養研究会が編集してきた、月刊情報誌『たべもの通信』の定期購読をおすすめします。
mail:tabemono@trust.ocn.ne.jpホームページ:http://tabemonotuushin.co.jp

(2021年7月29日記  三好 豊)

●●NPO法人・よこはま里山研究所・NORAでは「食べもの通信読者会」を開催し、皆さまのご参加をお誘いしています。
お試し参加も歓迎です。毎月第二月曜日午後7時から9時。会場はNORAの活動拠点「はまどま」はじめリモートで繫いで各地に拠点ができる可能性も見えてきました。参加費は「はまどま」運営協力金としてリモート共500円・6回分前納2000円(回数券方式)です。お問い合わせください。
NORAのホームページhttps://nora-yokohama.org/ メール doma@nora-yokohama.org

三好 豊(みよしゆたか)

1954年に生まれ父親の転勤により各地で育ちました。 1975年10月、杉並区阿佐ヶ谷南の劇団展望に入団。1982年退団して横浜に戻り演劇活動に参加してきました。1987年5月、(有)神奈川農畜産物供給センターに入職し、県内各地、各部門の生産者に指導を受けることができました。2004年に退職し「神奈川・緑の劇場」と称して県内生産者限定の野菜の移動販売を始めました。NPO法人よこはま里山研究所・NORAの支援はたいへんに大きく、これからも都市の暮らしに里山を活かす活動の一環として生産者との関わりを大切にしたいと考えています。また(株)ファボリとその仲間たちとの繋がりには、心躍るものが生まれています。