第150回 釜飯仲間・おこげのお話
2021.6.24神奈川・緑の劇場
「釜飯仲間」=おこげのお話= 国連「SDGs持続可能な開発目標2030年・家族農業の10年 2019年~2028年」 ~みんなのしあわせは、おいしさの先に!~
私の暮らす横浜市金沢区で10aのハウス3棟で土耕のトマトを栽培する生産者が、日本農業新聞・神奈川版に紹介されていました。Uターン就農してまだ数年、それでも糖度の高い完熟トマトで、直売でも収穫を待たれるほどの人気になっているといいます。
金沢区は、金沢文庫や金沢八景で名を知られているでしょうか?リゾート人工島の八景島や金沢自然動物園など、週末には多くの人が訪れるエリアで横須賀市や鎌倉市と接し、横浜市南部のまとまった緑が残されたところではありますが、市民農園はあるものの、農業者はいなくなったと思っていましたので、嬉しいニュースでした。
かつて、ベテランの生産者から聞いたのは、トマト栽培はたいへんに難しく、一年一年が勉強、30年やってもわからないとのことでした。しかし記事によれば、各地の先進地、先行生産者に学び、畑に水を張って水田状態にして土壌洗浄、太陽光による土壌消毒、土壌診断で施肥を設計し、などなど研究、努力をおしまず成果を出しているように見えました。
その金沢区の北西側には磯子区があります。江戸時代から戦前まで杉田の梅林として多くの人々が観梅に訪れ、明治から大正期には、今は埋め立てられてしまった、本牧から屛風ヶ浦、磯子と続く海岸線の風情を味わった先に杉田の梅を楽しみにした様子も小唄などにも描かれています。
今では梅林小学校などに名を残すぐらいに消えてしまった「杉田梅」を蘇らせている女性がいます。「杉田梅」は、小田原に移植されて、現在、小田原の主力品種「十郎梅」のもとになったと聞いていましたが、小田原に残った「杉田梅」を“ふるさと”に里帰りさせて増やしたのです。
この稿にはまにあいませんが、「杉田梅の梅干しづくり」に参加して、より詳しいお話を伺うのが楽しみです。
近ごろは、スーパーに並ぶ野菜にも生産者の名前が表示されるものが目につくようになってきました。“地場野菜コーナー”ができるようになって15年、地場でなくとも生産者の名前を表示するように、ようやくなってきました。スーパーの野菜は美味しくないとよく耳にします。しかし、生産者の名前が表示された野菜はどうでしょうか?
もうひとつ、スーパーの変化の兆しは、規格外野菜の販売です。ハネダシ野菜などともいいます。よく聞くのは「消費者は見かけで買う。」という話。私は、そんなことはいと思っています。お客さんが格好の良い野菜、綺麗な野菜を買うように仕向けてきたのは流通担当者ではないのか?
これからの時代は、規格外の作物も、生産者が再生産できる価格で流通させることで、消費者価格全体の低減をはかることが求められます。カタチの揃った作物を求めているのは、中食産業、加工関係、給食関係ではないでしょうか?たいへんに大きなウエートを占める部門の改革が「みどりの食料システム戦略」の成否のカギを握っていると思います。
誰が作った作物かわかる野菜を、どのような作り方で育てたか伝えながら買う(利用する)ことを通して再生産の循環に参加してもらう。(利用することが生産)コミュニケーションを伴う流通が当たり前になる、そうでなければ、「みどりの食料システム戦略」の実現はかなわないでしょう。
2021年5月12日「みどりの食料システム戦略」が正式に決定されました。農林水産省による、2050年を目標とする「農業の環境負荷低減と生産基盤強化を目指す」政策方針です。
■農林水産業の二酸化炭素排出量実質ゼロ
■有機農業を全農地の25%(100万ha)に拡大(※2018年は約2.3万ha)
■化学農薬の使用量半減
■化学肥料の使用量三割減
■化石燃料を使わない園芸施設に完全移行
(2021年6月22日記 三好 豊)
●●創刊50年・心と体・社会の健康を願う家庭栄養研究会が編集してきた 月刊情報誌『たべもの通信』の定期購読をおすすめします。 mail:tabemono@trust.ocn.ne.jpホームページ:http://tabemonotuushin.co.jp
●●NPO法人・よこはま里山研究所・NORAでは「食べもの通信読者会」を開催し、皆さまのご参加をお誘いしています。
お試し参加も歓迎です。毎月第二月曜日午後7時から9時。会場はNORAの活動拠点「はまどま」はじめリモートで繫いで各地に拠点ができる可能性も見えてきました。参加費は「はまどま」運営協力金としてリモート共500円・6回分前納2000円(回数券方式)です。お問い合わせください。
NORAのホームページhttps://nora-yokohama.org/ メール doma@nora-yokohama.org
三好 豊(みよしゆたか)
1954年に生まれ父親の転勤により各地で育ちました。 1975年10月、杉並区阿佐ヶ谷南の劇団展望に入団。1982年退団して横浜に戻り演劇活動に参加してきました。1987年5月、(有)神奈川農畜産物供給センターに入職し、県内各地、各部門の生産者に指導を受けることができました。2004年に退職し「神奈川・緑の劇場」と称して県内生産者限定の野菜の移動販売を始めました。NPO法人よこはま里山研究所・NORAの支援はたいへんに大きく、これからも都市の暮らしに里山を活かす活動の一環として生産者との関わりを大切にしたいと考えています。また(株)ファボリとその仲間たちとの繋がりには、心躍るものが生まれています。