第150回! 田園ふれあいランド 子どもたちが来る畑

2021.2.27
いしだのおじさんの田園都市生活

「石田さん!何かお手伝いすること、ありますかっ?」
と、畑に来た5歳児Sくん。
「じゃあ、ホウレンソウのゴミ取り、するか?」
と、ちょっとムズカシイというか、メンドウクサイ作業を振ってみる。
正直、私は嫌いな作業だ。
特に、この厳寒期の我が社のホウレンソウは、ゴミが多い。
寒さで味はのっているのだが、、、
枯れたり、凍っては溶けてを繰り返して傷んだ下葉。
葉の間に紛れ込んでいる土や枯葉や枯草など。
生育が今一つというサイズも多い。
時間をかけてそれらを取り除いても、なかなか量が増えない。
ゴミ見取りをしているというより、ゴミの中からホウレンソウを探している感じか?
そんな作業を子どもにさせるなんて、、、
ちょっとぉ、、、
なのだが、意外と、これ、おもしろがってやってくれた。
「あれぇ!上手だねぇ。」
「うん」
「オモシロい?」
「うん」
なんて言っているうちに、こちらの手も進んでいく。
そこそこキレイな束ができる。
でも、スーパーに並んでいるようなキレイな束にはならない。
でも、我が社にとっては貴重なホウレンソウだ。
ホウレンソウは土作りが難しく、なかなかモノにならない野菜なのだ。
専用の化学肥料を使えばそんなこともないのかもしれないが、、、
Sくんとゴミ取りしたものは、maaruへの出荷分だ。
青葉区で美味しい料理とワインを楽しむなら、というお店。
前職の後輩が頑張っている。
maaruでは、これをさらにきれいに仕上げてグラタンやキッシュに使ってくれる。
私はこれをテイクアウトして、家族でワイワイいただいたりする。
家族はいつもmaaruの料理を絶賛している。
うん、おかげで、楽しくホウレンソウのゴミ取りが終わった。
一人で、あるいはイツメンでするとちょっと苦痛な作業も、お客さんとすると楽しい。
いや、子どもたちは、もうお客さんというより、ある意味でイツメンだ。

別の母子数組は自分が持ち帰るホウレンソウを収穫しゴミ取りしている。
その場でかじる子どももいる。
「この子、ここの野菜を食べて、野菜が好きになったんですよ」
「前は野菜を嫌がっていたけど、今はたくさん食べてくれて、ウレシイです。」
なんてコメントをくれる。
ウレシイのはこっちだ。
ウレシ過ぎ。
新鮮だから?
甘いから?
味が濃いから?
いやいや、自分で収穫したから?
お母さんと、友達と、いっしょに畑に来たから?
土の感触が気持ちよかったから?
畑に吹く風が気持ちよかったから?

小松菜やカブや菜花なども、収穫から出荷までに手のかかる野菜だ。
しかし、我が社の畑ではセルフサービスということが多い。
我が社の仲間たちは、耕して種をまくまでの作業を頑張る。
いや、もちろん土作りも、、、
種まきだって、子どもたちが自分でやったものもある。
冬の大根、秋の枝豆、夏のインゲン。
保育グループのOBやOGの小学生が参加してくれることもある。
ある1年生の男の子は自分がまいた大根を収穫し料理することにハマっているそうだ。
味に敏感な子のようで、出汁や調味料と大根のマッチングを楽しんでいるそうだ。

2月の10日には、ジャガイモ掘り、翌日にはサトイモ、京芋もワイワイ掘った。
もちろん秋にはサツマイモ掘りもしたが、ジャガイモ、サトイモは2月にも畑にある。
サツマイモは、寒さが大の苦手なので、初霜までには掘り終えるようにしている。
稲刈りを終えた田んぼで焼き芋をやって、盛り上がった。
今年は、お母さんたちに火の管理を任せて自分たちで焼き上げてもらった。
その味はまた格別だったようだ。
たくさんの子どもたちのいい表情を写メで見せてもらった。
ジャガイモは、初霜以降の収穫だが寒さには強いので、畑に保存(放置)しながら管理。
芽が動き出す2月に掘り終えるタイミングでみなさんに声をかけた。
サトイモは通常は秋に掘り終えるものだろうが、量があまりに多く保存場所に困る。
なので、畝に土をもって寒さから守りながら畑で保管している。
2月には畝周りの草もなくなるので、秋よりも掘りやすい。
芋掘り。
地面から芋が出てくると盛り上がり、宝探しのようだ。
掘り方にもそれぞれの子どもたちの個性が出ていて楽しい。
サトイモでは掘り上げてから親芋子芋孫芋とばらす作業も楽しんでくれる。

生産者として、目の前に消費者がいてくれるのは、シアワセだ。
しかも可愛い子どもたちとその子を慈しむお母さんたち。
我が社の仲間たちもそんな子どもたちの姿を楽しんでいる。
交流の中で優しさを発揮してくれる仲間もいる。
ヤンチャで周囲を困らせていた男が、大根を抜いている子にそっと手を添えていた。
しかも、微妙に子どもが力を出すのを待っていた。
シアワセがループしている感じ。

子どもたち、野菜を取るだけでなく、畑を遊び場にしている。
走り回ったり、穴を掘ったり、堆肥の山に登ったり、、、
2月は作物が減っていって遊び場が広々している。
プロ農家から見たら、ちょっとちょっと、かもしれないが、見ていて楽しい。
農地の多面的利用。
ときに、ケンカが始まることもある。
先日も、土の上で相撲を取っていた子が、勝ち負けをめぐってケンカになった。
夕方、そろそろ家路に着こうかというころだったが、負けた子が納得できない様子。
勝つまでやりたいと言っていたようで、ちょっと空気がとがっていた。
ように私には感じられた。
しかし、お母さんたちは止めには入らず、離れて見守っていた。
子どもにとってケンカは大事なプロセス。
人との接し方を学ぶ場だ。
危険なことなどが無い限り、大人の論理で安易に止めないほうがいい。
我々も施設に帰る時間だったので、あとは任せて車に乗り込んで畑を後にした。
こんな風に、我々が母子たちを畑に迎えて、見送られることもある。
畑は、コモンズだ。

と、書き終えて、サイトにアップしようとして、ふと思った。
こうやって畑で人と人のかかわりができる場を「コミュニティガーデン」と言ったりする。
こうやって地域の消費者が生産者を様々に支えることを「CSA」と言ったりもする。
忘れていた。
そうやって何かをカテゴライズするような表現は苦手である。
「福祉」「障害者」「農福連携」なども、、、
そうも言っていられない立場だが、、、

(石田周一・いろいろに惑う春)