石田のおじさんの田園都市生活

第82回 夏至を過ぎて

2015.6.30
いしだのおじさんの田園都市生活

畑、どうだった?
・3日ぶり。
そうだね。どっか行っちゃってたからね。
・この時季に3日も畑に行かない百姓はいないよ、ね。
そう?週末しか行かない人もいるでしょ、〇△さんとか、、、
・ウィークエンドファーマー、だよね。
そうそう。たくさんいるでしょ。
・いや、そういうのは、、、「百姓」とは呼ばない。
石ちゃんは、百姓?
・いや、チガウ、チガウ。
でしょう。
・畑と家とが30㎞も離れているのが決定的だよね。
でしょう。
・うん。でも、百姓の気持でいたい。
何で?気持ちだけ?
・憧れているから、、、百姓こそラブ&ピース。
はいはい。またまた、イミフメイ
・、、、
で、どうだった? その、畑は、?
・草に責められているよ。
じゃ、今日は、もっぱら草取りしてた?
・うん。かなりの時間草取りしていた。でも、収穫や種まき準備も、やったよ。
忙しいね?
・ほんとは、大豆の種まきをしたかったんだけど、できなかった。焦るぜ。
焦っても仕方ないでしょ。
・確かに、焦っては、ダメだ。でも、もう、夏至も過ぎたからね。
種まきはタイミングがあるもんね。
・そうだよ。それでも、先週、まずは法面の草刈りを終えていたから、まだマシだよ。
ふうん。
・あそこで雨でも降って、もしくはメンツがそろわなくて、できてなかったら、もう、、、
もう、何?
・「緑の恐怖」ウルトラセブン第2話。
???
・ははは。

・でも、今日、みんな頑張ったよ。
何を?
・ネギ畑の草取り、ですよ。
へぇ。想像つかない、けど。
・ネギとネギの間に草がた~くさん。
手強い?
・そう。草を抜いたらネギも抜けちゃう。
あらら。
・でも、ネギだからね。抜けたぐらいじゃ死なないから、植え直せばいいんだけど。
ふうん。そういえばそうだ。
・いっそのこと、全部抜いちゃって、草を片付けて植え直してもいいくらい。
そんな方法もあるんだ?
・方法としてはあるけど、あんまりやりたくない。でも、、、
でも?
・どっちがネギと畑にとっていいのか???
どっち?
・そういうことは、すぐにどっちかはわからないんだよ。今後を見てみないと、、、
なるほど。
・今日は、ね。地主さんのお祖母ちゃんも参加してくれたんだ。
へぇぇ。スゴイねぇ。強力な助っ人。?
・「いつも土手の草刈りしてもらっているから」って、ね。ありがたいよね。
助け合っているんだ。
・うちの子たちも、よろこんで、大きな声で「アリガトウゴザイマス!」って。
いいですねぇ。畑で交流。
・それにね、お祖母ちゃん、いつもニコニコしていて、カワイイ人なんだよ。
里山お祖母ちゃん?
・そう。そしてね、年季がチガウからね。すごく上手。手際良い。
やっぱり?
・先週はトマトをたくさんくださったんだよ。
美味しかった?
・そりゃあ、もう、ね。美味い野菜とは、ね、作ったものと、もらったもの、だからね。
そういうこと、言って良いワケ?
・?
売っている人が、そういうこと、言ったら、問題でしょ。
・今日のお返しはエダマメ。
ごまかさないで!っ!
・ははは。でも、食べ物をお金に変換しないのが理想だなぁ。
ところで、視察は、どうだったの?
・うん。6月は、いろんなところに行ったよね。
それで、大江さんみたいに本でも書ければいいのにねぇ。
・えっ?
無理か?
・岩波新書、ステキですねぇ。
無理ですね。
・日野市せせらぎ農園では田植えに参加したよ。
生ごみリサイクル。
・うん。活動のスタートの目的が「生ごみを燃やさない」だった。畑は後から、、、
うん。
・それが、今は生ごみは手段になっていて、あれは一言でいうと何かなぁ?目的は?
食糧自給?
・確かに、けっこうな量と質の野菜を分け合っている。いただいちゃったよね。
どういうルールで分けているの?できた野菜は?
・そこ!すごく興味があるんだけど。
聞かなかった?ダメじゃん。
・いや、いきなり自分の興味を優先して質問したりはしないんだよ。
それじゃ、ジャーナリストにはなれないね。
・仲良くなって、いろいろ教えてもらってからでもいいよ。近いから。
じゃ、また行くんだ。
・稲の生長も見たいしね。生ごみリサイクルの先生でもあるし、、、
先生?
・行政から補助金をもらっている。横浜でもその仕組みを作りたい。
なるほど。まさに先を行っている先生だ。
・そして、さいたまの見沼田んぼ福祉農園。
そこは、福祉の勉強?
・大江さんや、M学院大の先生たちとの研究会で訪問。農業の研究会。
アカデミック?
・ちゃんと呑む。
でました。結局、それが目的?
・いや、手段だよ。
どっちにしろ、呑むんでしょう。
・肝臓で勉強する。
イミフメイ、ですから。
・見沼の活動は、10年近く前から知っていたんだけど、やっと訪問できた。
それは、いい機会だったんだね。
・今回、また、OGの若い女の子の話も聞けた。山口の学生耕作隊の活動。
うちのお嬢さんの参考になる?
・どうかな?新しい多様な価値観を創造というか、そんな活動だけどね。

・地域の耕作放棄地を地域以外から来た若者たちが耕作する。
活かせるものを活かすことは、いいことでしょ。
・青葉区でもそんな活動があるよね。
林さん?
・いや、林さんは耕作放棄地を選んではいない。わざわざ条件の悪いところには行かない。
そうかぁ。
・彼はシビアだよ。農業で稼いで家族を養わないといけない。
そうじゃない人もいるもんね。
・俺のことか?俺の話をしていたわけじゃないんだけど。
ははは。
・耕作放棄され藪の中に埋もれていた田んぼをつくり直してやっているグループがある。
へぇ。
・そういうグループが青葉区にいくつもある。
へぇ。
・ま、谷っ戸ん田も似ていたか。
耕作放棄地じゃないでしょ。
・そうだけど、決して米作りとしては条件が良かったわけではない。
でも、谷戸の魅力があった。
・そう。陽当たり不十分でも雑木林に囲まれていることで、田んぼも数倍楽しめた。
ハンモックを張ったりね。
・でも、しっかり生産して稼ぐなら川沿いの整備された田んぼだよ。
暑そうですね。
・暑いから生産性が高いんだよ。
そうだった。でも、地方の耕作放棄地は、陽当たりが良いところも多いでしょ。
・そう、メガソーラーが来るくらい。
じゃ、地方で陽当たり悪かったりしたら、もう、、、
・放棄される場所には、それなりの理由がるんだから、と、言う人もある。
だから、何?
・まして、そこを素人が耕作しようとしても困難でしょ、無理でしょ、みたいな、、、
そうかぁ。やっぱり、、、心配ですね。
・でも、若さでチャレンジしている姿はよかったよ。
そういう人たちもいないとね。
・何の話していたんだっけ?
活かせるものを活かす、話。
・そうだった。生ごみだっけ?
耕作放棄地。学生さん。若い女性。
・新しい多様な価値観、、、
まとまらない話。
・う~ん。旧来の価値観にとらわれてほしくないけど、我が子が行くとなると、、、
心配?
・とっても心配だよ。
エゴだね。エコじゃなくて、、、それは、、、
・ははは。
そんな大胆なことできない普通の都会の子だよね、Rちゃんは。
・ま、一皮二皮むけては欲しいけどね。
で、見沼田んぼ福祉農園はどうだったの?
・埼玉はまた行政がチガウみたいで、「横浜はいいなぁ」って、代表者の方は言っていた。
そうなんだ。
・横浜の農政のことは、それこそ大江さんが本に書いている。
市民参加。
・そう、「市民皆農」とまで言っている。
石ちゃんも、市民だもんね。百姓じゃなくて、、、
・なんか、問題あるなぁ、その言い方。
ははは。そして、今回は京都。
・いや、滋賀ですけど、、、
おみやげは京都だったじゃない。
・帰りに京都でサイクリングしてきた。鴨川沿いをね。
それは、それは、、、
・今回は、ソーシャルファームジャパンというものに参加。
はい。
・ファームは農場のfarmじゃなくて、企業のfirm。社会的な企業。
ややこしくないですか?
・取り違えている人がかなりの人数いたと思うよ。
でしょ。
・でも、なんか、それでいいんじゃないの、とも、思っちゃったよ。

・いわゆる農福連携のオンパレードだったし、そこに今、勢いがある。悪くない。
勢いは大事にしたいもんね。
・でも、俺、なんか勢いの外にいる。
それは、いつもじゃん。ワイワイ盛り上がったりしない。
・滋賀県はね、障害者福祉の発祥の地、かもしれない。偉大な先人と実践が多い。
そうなんだ。あんまり馴染みのない県のようも思える。
・うん。京都まで行っちゃうもんね。関東からだと。通り過ぎて、、、
自分だって、結局、そうしたんでしょ。
・今回、研修の前日に自主研修もした。秀明自然農法しがらきの里を訪問した。
自然農法、ですか?
・ソーシャルファームでも、自然栽培が話題になっていた。
自然農法と自然栽培とどうチガウ?
・そのへんのこと、また、別の機会に話そうか?
ええー、ちょっと興味あるんだけどなぁ。
・時間ないし、今、草のことで頭いっぱいだし、もう少し、勉強して整理するよ。
草、かぁ。
・明日も、時間作って草と戦いに行ってくるよ。
頑張ってください。手伝えないけど、、、
・でもね、自然農法は「草を敵にしない。共に育つ」なんて言うんだよ。
戦わないのかぁ。そういうのが好きなんじゃない。ホントは。
・戦うより、戦わないほうが好きだけどね、確かに、、、

(石田周一)