第45回 太陽の恵みを穂に蓄えて

2020.10.31
映像の持つ力

小さな森のある畑では、菊芋の黄色い花から島ラッキョウの紫へと移っています。

菊芋

 

二十四節気では霜降(そうこう)。関東の平野ではまだ霜がおりませんが、10月も下旬になると、夜間はグッと冷え込むようになり寒い寒い。お日様の光がありがたみを増しますね。湿度計を見ると35%、どうりで肌が乾燥するわけです。

島ラッキョウ

 

ありがたいことに、我が家の居間はベランダの窓から部屋の奥まで陽の光が差し込んでくれるから、ごろ寝が気持ちいーい。本を読んだりベランダ里山※を眺めたり、この部屋が冬の日差しを家に取り込める位置にあることで、冬のぽかぽか陽気を楽めます。

夏草から冬草へ。

 

※ベランダ里山・・うちの場合、畑が自宅から離れたところにあるため、ベランダも大事な作業場です。種採り、苗づくり、観察植え、畑に移植するまえの待機植えなど各野良しごとの補間作業を行います。
苗づくりが佳境の時期、階段状に苗のケースを置いた様子がまるで里山の段々畑に見え、その時から、ベランダ里山と呼んでいます。

 

稲の稔実(ねんじつ)と、登熟(とうじゅく)期の気候条件

植物は太陽の光を光合成により養分に変え成長しています。畑の野菜は太陽の恵みそのものですね。

稲が倒れないように支えあうように結んで。

 

田んぼでは、稲がお日様の力を穂いっぱいに蓄えています。
籾が充実する仕組みをおさらい。葉の葉緑素の働きで光合成により作られた養分が、デンプンになり、穂の中に送りこまれ充実することで、大きくなり、穂先を下げる・・。

今年の田んぼはどうかな?見渡すと、あれ?あきさかりだけ直立。穂が充実していないようにみえる。あきさかりは早生種なのに一番成長が遅いなんて。予想外の成長です。稲刈りまであと数週間、どうなるかしら。

あきさかり

こちらはマコモ。稲刈の前にマコモダケの収穫です。相棒クンが栃木でもらったマコモ片をベランダ里山で増やし田んぼの脇に植えたもの。十二年が経ち植えっぱなし状態で今年も豊作。

マコモ。根本で茎が肥大しているのがマコモダケ。上から見たところ。

 

収穫後のマコモの葉は土に還ります。

 

おかげ様で、毎日マコモダケ料理が食卓に並びます。きんぴら系の油料理が合いますが、蒸したり、漬物、スープに入れたり。おすすめは、簡単マコモ漬け。スライスしたマコモダケを麺つゆに浸すだけ。浸透圧で水分が抜け魚肉ソーセージのような食感に代わるのです。箸が止まらない。

 

季節があるのは、地球が自転軸に傾きを持ち太陽の周りをぐるぐる回るから。夏至と冬至で、赤道からおよそ北緯35度の位置にある東京の場合、太陽の角度が40度以上も変わり、日照時間は5時間以上も変わるのだとか。

赤道直下の国タンザニアやケニアで使われているスワヒリ語は、暑いことを jua kaliと言いますが、言葉の意味は太陽がきつい、強い(太陽の位置が高く日差しが強い。)

タンザニアの離島、ザンジバル島へ暑い時期の12月に滞在したことがありますが、ある朝、豪雨で膝まで冠水していた道路が昼にはすっかり水が引いており驚いたものです。その時に見上げた太陽は、ほんと日差しが強かったなぁ。

種を蒔いた後に、猛暑で雨がふらなかった小豆。このあと霜がおりるまでの追い込みでいくつ種が採れるかな?。

年中行事と自然の摂理

今年の田んぼは5品種を植えました。あきさかりを作付けした理由は正月飾りに使うからです。穂離れしずらい品種だから。

太陽の恵みたっぷりの穂がたわわに実る様るしめ飾りで新年を迎えられることは、晴れやかで気持ちがよいものです。

 

奄美大島の各集落では、旧暦八月の十五夜から九月九日にかけて、夏の正月と言われる一年で一番はなやかな豊年祭りが執り行われます。

祭祀や祭りでは稲わらや米が欠かせませんが、奄美大島では稲作がほとんど無くなっています。

祭祀で使うために最低限の稲を作っているのだろうと思っていたら、行事が県指定の無形文化財になっている集落の区長さんが「稲作があってこそ伝統文化・郷土芸能がある。まず稲作を守っていかないと意味がない」と答えた記事を読みました。

なぜお金で食べ物が買える今の時代でも、豊作を願い地域の安寧を願う年中行事が日本各地で残っているのか、この言葉を聞き腑に落ちた思いでした。

地域に根差した年中行事は、人間は自然の摂理の中の一員だということを確認しあう場でもあったのかも知れません。

 

秩父荒川の正月飾り(荒川歴史民俗資料館の展示より)

桁違いの生産性

週末の野良しごと、肉体的にはしんどい事もありますが、生き物がいっぱいで、収穫以外の面白さに事欠きません。

今年も無事にヘチマが育ちタワシ1号が出来上がりました。野菜って食べるだけでなく、道具にもなります!

束子用のヘチマ。花は夕方に咲きます。

 

タワシは食べるものに使うから天然素材で安心。使えなくなっても畑に還るからゴミも出ない。生ごみも畑に戻せば土になる。

 

生き物がいっぱいの田んぼや畑は、何かが一方的に増えすぎることなく、耐えず再生が繰り返されています。野良しごとは、自分たちもその循環の一員になれているようで嬉しい。

平島のゴーヤは小さく実るけど、食用の十角ヘチマは成長するための温度が足りず縮んでいきます。

 

島チシャ 種採りして7年。今までで一番、育ってる!。

 

先人が時間をかけ、植物の生理やフェノロジー(季節による行動や状態の変化)を利用し手を加えることで、稲はより株を分裂させ万倍もの種を生むことを可能にしました。

植物は種から育ちますが、株分けや挿し木、サツマイモは数センチに切った茎を植えるだけといった、自身の一部から増殖することも出来ます。

ベランダ里山にて、こぼれ種から発芽したネギ。移植しまーす。

 

里山ベランダにて、発芽のネギ。10日後。 根付いてる!

 

小さな森のある畑。 株分けしたネギ

 

冬のエース、赤ネギ。 夏の天候不順で草刈りが出来ず、小さいけれど、今年も採れました。

 

初めて実をつけた柿。種を蒔いて三年が経ちました。

 

 

食べ物を作ること、社会の生産性を語るうえで、これ以上のものはあるのかしら?。

人間も自然の一部ですものね。

(中川美帆)

 

おこぼれ栗。毎年、駐車場で拾います。今年は1つだけ。台風がなかったから風で落ちてこない。

野菜の皮むきゴム手袋。栗のイガも簡単に取れます。

 

映像の持つ力