第44回 サインは産毛にあり

2020.9.30
映像の持つ力

最古の栽培植物の一つ「ヒョウタン」。こんな気候条件だけど安定して開花、結実、成長を繰り返しています。育てているのは食用種のヒョウタン(※1)。柔らかいものを選び収穫します。

せっかくだから大きく育ったものを採りたーいのですが、大きくなると皮が木質化し固くて食べられません。

木質化し始めたヒョウタン

 

あれ?このヒョウタンは小さいのに固いぞ。なんと、大きさだけでは食用に適しているか判断できないのか。逆に大きいけど、柔らかいヒョウタンもある。本当に食べられるか家で確かめてみよう。

ヒョウタンはその形も楽しみたいから、そのままスライサーで薄切りに。大きいヒョウタンもすうっとスライサーが通った!。

わたしたちの小さな森のある畑は、ゴーヤ、ヘチマ、ヒョウタンをのウリ科三兄弟をセットにして植えており、どれも旺盛に収穫が出来るから、ありがたいことに繰り返し観察することができます。

十角ヘチマ(※2)にヒョウタン、紫唐辛子は大きな実をつけるほどに成長しました

 

ウリ科三兄弟、食感は三者三様です。
ゴーヤはシャキッとした歯ごたえ。ヘチマは加熱調理でとろっとします。ヒョウタンは粘りのある歯ごたえが残ります。
ヘチマは蒸すとやさしいトロ味が出るから、さっぱりとした味で頂きます。
ヒョウタンは塩コショウ炒めが歯ごたえと旨みを楽しめられて一番おいしい。

 

ウリ科は中心のワタの層があり種が出来ますが、ワタのつくりが三者三様です。
手触りで言うと、ゴーヤはすかっ、ヘチマはふかっとした感じ。比べて、ヒョウタンのワタは潤いがあります。
ゴーヤは実とワタが別物でワタを取りだして食べますが、ヒョウタンとヘチマはワタと実が似た質感でワタごと食べます。

ツルのひげにぎゅーと締め付けられた十角ヘチマ。自分に巻きつくのか? いいえ、これはウリ科三兄弟のヒョウタンのツルヒゲに巻きつかれたのでした。

 

・・・そんなふうに、お料理することで台所でもヒョウタンの観察をしていたら、分かったのです!、ヒョウタンの収穫サインが。

はい、サインは産毛!食べられる柔らかさのヒョウタンには産毛があるのです。産毛が残っていると言ったほうが正しいでしょうか。サインが発見できるなんて、うれしいなぁ。

産毛、写真では分かりにくいかな?

赤ちゃんヒョウタンの頃は長い産毛で覆われていいたけど、成長するごとに産毛が目立たなくなっています。表面がつるんと、ぱつぱつに張ってしまったヒョウタンはもう皮が固くなり刃がたちません。

産毛に覆われたヒョウタンの赤ちゃん

産毛は、ヒョウタンが、成長から種を結ぶ生殖へとホルモン変化していることの現れかしら? 植物にとって産毛どんな役割があるのでしょうね。

さて、ウリ科三兄弟と違い、元気がないのがオクラ。例年だと、食べるのに困るほど一度に収穫できるほどの旺盛な成長をみせるオクラなのですが、今年は、ポンプでエネルギーを一気に加速されるような勢いのある成長が見えないのです。

 

そりゃ仕方がないよね。地表が割れるほどの日照りに耐え、やっと雨が降り潤い始めた。さぁ実の充実に注力しようって、ギアを入れ始めたのに、一気に気温は下がり秋の風が吹いてきたのだから。頭打ち。人の自律神経システムも、もう調整するのを止めたって、匙を投げていますよね?。

いつもは畑の中で畝の大木となるオクラ。去年は台風で茎が傾いても倒れず実も付け続けていたけれど。今年は背丈も低い。でも週末に収穫して2、3日は、ネバネバのムチン料理が楽しめるから大助かりです。

後方がオクラ。手前に向かいピーマン、紫唐辛子。

 

気候条件の乱れは、作物の栽培にとっては大打撃。わたしたちの小さな森のある畑は、種は自家採種だから、肥料なしの天水の土で育つことに慣れています。

そして少量多品種でコンパニオン植え、野生化しているのも多いから、気候条件が乱れても何れかは元気で去年より豊作の種類もあります。

そうそう、小さな森のある畑は、野菜だけでなく果樹も育てています。そうした高低差がある植生環境のため、背の高い草に糸を張っていた黄金グモが、いつの間にか木から木へ、クモの糸を張れるように成長していくことを観察する幸運に出会えます。

たわし用のヘチマ

 

草が多い畑は世話がひと手間ですが生き物が多く棲んでくれるから賑やかです。
畑や森は生まれて土壌に戻り再生する循環を繰り返す場所ですが、成長や再生から人は希望を感じますよね。生物多様性は自然の基本ですが、生き物の多様さは希望そのものかも知れません。

地域に根差した、季節の節目を通し行われる年中行事をみていると、生き物が季節でどう変化するかの経験値を落とし込んだものだということがみてとれます。人が何世代にも渡り生きていくうえで、例年通りの四季を迎えられる事がどれだけありがたいことか、肌身に沁みているから近年まで続いてきたのでしょう。また、循環型社会のリズムや仕組みを体に覚えこませる機会でもあったのだろうと考えます。

週末ノラ仕事の暮らしから実感することは、里山は、持続可能な方法で自然資源を利用する循環システムを作り出した社会の姿であり、その暮らしは生物としての体内時計を正しく保つことの基礎にもなったのではないか。

人間も自然の一部ですものね。

 

後方のティピに植えたヒョウタン。ツルがぐんぐん伸びてティピから飛び出し、背丈のある菊芋に巻き付き3つの実がなりました。(ツルは自由だなぁ。)

 

ブラジルミニ(※3)と、自家製ザワークラウトのスプレッド2種。

 

※1:食用ヒョウタンは、野口のタネが2011年に販売した「食用一口瓢箪」。自家採種で今年まで繋いでいます。野口のタネのオンラインショップで販売されています。https://noguchiseed.com/hanbai/products/list?tag_id=4&pageno=2

※2:十角ヘチマは、タイ産の十角ヘチマを自家採種した方から譲り受けたもの。自家採種で今年も植えました。

※3:ブラジルミニは、ブラジルの有機農業で自家採種されてきたミニトマト。自然農法センターが、国内で自然農法により育成・採種したタネを購入。自然農法センターで購入できます。

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