第140回 田園ふれあいランド妄想、いや、もうこれは実践、の5月

2020.4.30
いしだのおじさんの田園都市生活

「自分で田んぼをするにはどうすればいいですか?」と訊かれた。
小さな子どものいるお母さんから。
田んぼを楽しみたいということか?
いや、理由を詳しくは聞いていないが、
おそらく、これからの時代、自分で食べ物を作らねば、
という少し切迫した気持ちなのかもしれない、と、感じられた。

「畑はちょこっと借りて、手作業でもなんとかなるけど、
 田んぼは、機械もいろいろ必要だし、そうもいかないんだよね」
・・・・・
「まぁ、まずは、いっしょにやりましょう」
(そのための田園ふれあいランドじゃないか)
と、話した。

数日後、我が社の種籾まきの作業。
例年は我が社の精鋭(?)を集めて、施設の庭でおこなっている、
が、緊急事態対応でそれができない状況だった。
そこで田んぼへの関心が強くなっている仲間をお誘いして、畑で作業した。
新治で共同保育の母子たち10数名が参加してくれたのだ。
子どもは3歳児が中心で、兄姉や弟妹も。
迎えたのは、私と、農耕班新職員Sさん、我がシェアハウスのR子さん。

この状況で、「集まる」ことには少し抵抗もあったが、
「青天井で身体を動かす」ことが子どもたちには必要であり、
また、「みんなで田んぼをやっていく」ことには希望がある。
そして、「食糧危機に備える」という意義もある。
あえて口には出さなかったが、そう判断した。
スペースを3ⅿくらいの間をあけて作業台を作っておこなった。

先月にも書いたみのる産業のポット448育苗箱を使用。
⌀16mmの穴が16×28でならんでいる。
そこに種籾を入れていく。
我々3人が土入れと穴あけをして、
「1粒か2粒で、たまになら3粒もいいけど、まいてください」と、
実演を見てもらいお願いした。
種籾は私が自宅と夜勤中にも持ち歩いてぬるま湯につけて芽出ししてあった。

母と子たちは楽しんで作業してくれた。
正確に1粒ずつ並べていくことを楽しんでいる母子。
1歳過ぎの子が母の真似をするけどかえってオジャマになってしまう母子。
子どもは畑を走り回り、その間にせっせと作業をする母。
白菜の黄色い花、大根の白い花、踊子草の紫の花などで花束を作る子。
咲く前の菜花を摘んで食べている子。
どの姿も、楽しい。
輝いて見える。
(でも、写真を撮っている暇が無くて残念)

「この一粒一株がお茶碗1杯のお米になるんだよ」と話した。
「うわー!そうなんだ!」と盛り上がる。
、、、
少しして、ちょっと不安になり、
「確かそうだったと思う。今度、また、ちゃんと調べる」
と、喋った。

これは、調べてみるとなかなか難しい、
けど、オモシロい。
1反530㎏の玄米→1㎡530g→1㎡18株→1株30g(1400粒)→1株4本の苗(4粒の籾)→1本から約450粒と書いてある資料がある
1株30gだったら5株で1合=茶碗2杯、2.5株で1杯
かと思えば、
有機農法や自然農法の疎植1本植えでは、1粒の籾からいいときは3,000粒という説も。
米1合は約6500粒だそうで、すると1株で茶碗1杯もあながち嘘ではない。
我が社も疎植1本(ないし2本)植えなので、
ま、「1粒でお茶碗1杯になる」という希望を語ってもいいのではないか。
いや、そういう希望のある1粒なのだと思うことが楽しい。
そんな種まきを仲間たちとできたことが嬉しい。

な~に谷っ戸ん田では、
横浜の反収は(好条件で)だいたい8俵(60㎏×8)、
日本人の現在の年間の米の消費量は平均60㎏、
それを自給するには1000㎡÷8=125㎡、
なので、な~に谷っ戸ん田の1.5反を12区画として、
実際に田んぼを区画割りするわけではなく共同耕作して山分けだけど、
「みんなで自給を目指そう!」と、
栽培収穫体験ファームの仕組みを使い、
園主さんにお世話になりながら楽しんだのであった。
谷戸田という条件だったので1区画当たりの収量は40㎏くらいだったが、
十分に自給できた人もいた。
あれは、ある意味、田園ふれあいランド、だったなぁ。

「自分で田んぼをするには・・・」と尋ねたお母さんは、
「こういう機械とかっていくらぐらいするんですか?」とも訊ねていた。
倉庫には、小さな管理機、トラクター、マルチャー、ハーベスターがあった。
「小さな耕耘機は10万円くらいだけど、
このトラクターは中古で35万、
マルチャーは(田んぼでは使わないけど)新品で50万、 
ハーベスターはもらい物だけど、中古で買うと10万以上かな、
ハーベスターなんて年に1回しか使わないのがこんなでかくて場所とるんだよね。
もしも、これがこわれちゃったら、もうどうしようか、だよ」
なんて会話をした。

田んぼは機械をそろえるだけでなかなかにたいへん。
それに置き場所の問題もあって、これまたたいへん。
な~に谷っ戸ん田の園主さんは最新の機械を取りそろえながら、
古い機械も残して保管し使える状態にしているマニアックな人だった。
機械が新しくなればなるほ、稲や泥に触る機会が減る。
乗用田植え機やコンバインでは、ほとんど稲に手を触れないし、田んぼに降りない。
だから、古い歩行式の機械である程度の効率を確保しながら田植えや稲刈りをしたい。
な~に谷っ戸ん田の園主はそれを実現させてくれた。
そう、そういうものを共同所有して共同管理し使い方もレクチャーするのは、
田園ふれあいランドという共同体の意義である。

種まきから1週間、発芽という希望を母子たちと写真で共有して、
さて、代掻き、くろつけ、と、田んぼを作っていこうか。
荒代掻きした田んぼで子どもたちが転げ回る姿も楽しみ!

石田周一