
寄り道73 構えないでいられるコミュニティとのフラットな関係
2025.4.1雨の日も里山三昧
2020年、新型コロナウィルスの感染が拡大して、ステイホーム、リモートワークが勧められた。その後、コロナ前の仕事や暮らしが戻ってきたが、コロナ禍における経験が、その人の生き方に大きな影響を与えたという例は少なくない。その象徴的な例として、コロナ禍をきっかけに移住や二拠点居住を始めた人や社会的起業を図った人などがいる。
私は、多摩丘陵で里山と関わる暮らしや仕事づくりを進めてきたためか、移住や二拠点居住、社会的起業に関心があると思われ、最近、千葉県南房総地域と神奈川県県西地域でそうした実践者からライフヒストリーについてお話をうかがう機会があった。両地域とも都心まで通勤可能な距離にあるためか、東京的なライフスタイルに反発するわけでもなく、適当な距離感を探る中から、それぞれの場所との関わりを深めてきたように思われた。
彼(女)らは、地元の地域コミュニティになじもうとあがくわけでも、あえて距離を取ろうとするわけでもなく、肩の力を抜いて必要なときに必要なかたちで関わるスタンスを採っているようだ。これまでのコミュニティ論では、地付き住民と来住者・来訪者との関係に注目が集まり、両者の緊張関係をベースにして語られてきたように思われる。もちろん、そうした関係に注目することには依然として意義があるだろう。しかし、私が話を聞いた人びとの場合、地付き住民との関係を気にして外部志向型になるのではなく、自分がどう生きるべきかと考え、自分と向き合う内部志向型と分類できる。彼(女)らの生き方には、コミュニティとのあるべき関係に焦点を絞りがちな議論を緩める力があるように思われた。
まず、登場していただくのはNMさん(1977年生まれ)である。南房総で築300年の古民家を拠点に、3,000坪の敷地で里山をシェアするプロジェクトを運営している。「いきつけの田舎をつくろう」と呼びかけ、募ったメンバーでDIYを駆使して古民家を改修し、裏山に手を入れ、休耕地を活用してきた。現代の里山は担いて不足で課題山積とネガティブに考えがちなところに、これからの社会に必要な発想の起点や魅力的な資源を見いだし、地域に新たな価値と可能性を創出している。
NMさんは、月に1-2回のペースでオンライン読書会を開催している。私はコロナ禍に知り合いに誘われて、この読書会に参加している。テキストを正確に読むことが目的ではなく、テキストを読んでどう感じたのか考えたのか、それぞれの意見や感想を交換する、シェアしている。NMさんは二項対立的な論点が立てられると、どちらかの立場に与するのではなく、両者の良いところを生かそうとする。たとえば、リアルかオンラインか、東京か地方か。そういう場合、どちらかを選ぶのではなく、「ハイブリッド」でいくのがいいという感覚を持っている。
{続く}
(松村正治)