第37回 お百姓の風呂敷「箕」が、現代産業に継承されていた

2020.3.1
映像の持つ力

野菜を育てる ⇆ 自分で種を採る

週末のノラ(野良)仕事。お米が終わった後も忙しい!!畑は冬草は立ち枯れし夏草や多年草がに繁茂が移動を始めています。蚊のいない今が一番、あたたかい陽気の中で畑作業や、畑で梅見とおだやかに過ごせます。

野菜の種は、出来るだけ自家採集します。ベランダでは、収穫、種取りしたあとに、貯めにためたタネの選別が佳境です。豆類は殻とマメに分け、実のものはタネを取り出し、お盆など滑りのよい器に広げ、ピンセットでタネを選別します。種まき用の豆→味噌なと食べるための豆→食べられないものは畑に還す。

こぼれ種で毎年土手に咲く菜の花

 

左は十角ヘチマ、こんな風に振るとタネが出てきます。右はエビスグサ(決明子)のタネ殻やゴミを除いた後、洗いお茶用に干しています。

殻と実を分ける作業で超便利なのが「箕」。ふっと息で風を吹きんだり、あおることで、軽い殻や塵を飛ばしたり、箕の上で中が充実した重い玄米や豆が箕の上であれよあれよという間に選別されます。 もともと竹製ですが、やはり便利だから需要があるのですね、今でもプラスチックで売られています。右の緑が「プラ箕」。

(と言っても私は、横浜の小学校で行う縄ない授業の資料作成があったので、相棒がせっせとタネの選別を進める様子を横で観察。)

(ヨイショ! 小学校の縄ない授業では、この米俵と稲わらを電車で運び行ってまいりました。)

豊穣の神様、大黒様は打ち出の小槌を手にしていますが、ノラ(野良)作業では、この箕で殻と実を選り分ける前の作業、穀むきで「木槌」を使います。ゴザや筵(むしろ)※を敷き、豆を広げ、力を加減しながら打ちつけます。

木槌を振ると鞘(サヤ)から豆がぱんぱん気持ちよく飛び出します。鞘から豆を手で一つづつ出すより断然早い。めちゃお助けグッズ。よく出来た道具だなぁと感心しきり。

わたしは木槌を主にワラから縄をつくる縄ないで使いますが、木槌は実際に人が生きるために一番だいじな食べる事、豊作のお助け道具だから、機械化された現代でも豊穣をもたらす象徴として残っているのでしょうね。

※今は主流はブルーシート、ゴザはありますが筵は見ないですネ。

ヘチマのタネ

箕(み) → 唐箕(とうみ) → 現代の産業技術?

さて、今月の里山の恵み上映会では、お百姓の風呂敷「箕」作りの記録を上映します。
箕は「お百姓の風呂敷」と言われるように、ノラ仕事に欠かせない道具ですが、神様へのお供えの器としても使われます。

箕は竹が材料。竹はイネ科で成長力が旺盛で繁殖力に優れていることや、その構造から人々の願いや感謝を神様に届ける場面に用いられてきました。

十五夜の供え物  photo(C)民族文化映像研究所 「埼玉の箕づくり」1984年・40分

箕や唐箕は昔のもので、今では手作業でノラ仕事を行う人だったり、年中行事など、一部の人だけが恩恵にあずかっているものかと思えば、箕を使い磨いた選り分けの方法が、現代工業の技術に受け継がれていたのです。

箕を使い脱穀した籾を唐箕がけに入れるところ  photo(C)民族文化映像研究所 「埼玉の箕づくり」1984年・40分

 

産業廃棄物処理の会社が環境教育の体験の場に

今年1月、環境書主催・日本環境教育フォーラム事務局の環境教育の研修で、石坂産業株式会社(埼玉県入間郡三芳町上富)を訪れました。石坂産業は、98%の再資源化を誇る産業廃棄物処理の会社で、敷地の中に産棄処理工場、三富自然村、くぬぎの森交流プラザなどを運営し体験型環境教育に取り組んでいます。

三富自然村のカフェ

こちらは工場。搬入された住宅解体で出る廃棄物が、分別 → 再生されてゆきます。

搬入された住宅解体で出た廃棄物

この「分別」の工程に、箕や唐箕で用いられた、風や角度をかえあおる事で、混在した素材を分ける仕組みが応用されています。先代社長が家業である農家の知恵からヒントを得て考案したとの事。

* * *

首都圏で唯一、日本産業遺産に登録された「武蔵野の落ち葉堆肥農法」は、石坂産業のある三芳町を含め、川越市・所沢市・ふじみ野市で300年以上に渡り続けられてきた江戸の循環農業です。火山灰の層が多く作物の育ちにくかった土地に、木を植え平地林のヤマ(雑山)を育てあげ、山からでる落ち葉を肥料にし土壌を改善してきた。・・落ち葉で堆肥を漉き込み充分な収穫が獲れる畑になるまで、どれだけの苦労があったことでしょう。

堆肥を作る苗床温床の囲いには、稲や麦のワラが使われます。
その土地の自然を活かしながら何世代にも渡り営んできた循環型の暮らし。自然の力を生かした里山の知恵は、時代や場所がかわっても受け継がれていくものなんですね。産業が変わろうと、人も人間社会も自然の一部ですもの。

 

里山の知恵の物語でもあります。おすすめ本。本の詳細はこちらの農文協サイトを!

(郷土映像ラボラトリー 中川美帆)

 

2020/3/30「里山の恵み・伝統文化に出会う上映会」です!

竹富島の女性が神人を担う神事。ご神饌の器としても用いられる「箕」埼玉の桜箕の作り方、全行程と民俗の記録。2作品を上映します。観たあとはお楽しみ神奈川野菜のご飯を囲みお話しタイムです。

photo(C)民族文化映像研究所

photo(C)民族文化映像研究所

①「竹富島の種子取祭」(1980年・55分)

photo(C)民族文化映像研究所

八重山諸島にある竹富島では、旧暦9月か10月の戊子(つちのえね)日を中心にした10日間、タナドゥイ・種取祭が行われる。
まつりを前にした節の日。人々は軒にススキをさし、生活用具にシチカズラを巻く。この日は一年の始めの日とされ、司(女の神人)がピーヌカン(火の神)やウタキ(御嶽)、水の神に祈る。敬虔なつつしみの神事、はじけるような豊作祈願の芸能の全記録。
(竹富島民俗芸能保存会委嘱・民族文化映像研究所製作)

②「埼玉の箕づくり」(1984年・40分)

photo(C)民族文化映像研究所

箕(み)は「百姓の風呂敷」とも言われるほど、農作業のあらゆる場面に欠かせぬものであった。秩父山地と関東平野の接点にある埼玉県毛呂山町葛貫では、全国的に珍しい桜の樹皮で作った箕で暮らしをたててきた。その桜箕づくりの全工程と、箕をめぐる民俗の記録。
(埼玉県教育委員会委嘱・民族文化映像研究所製作)

日 時

 2020年 3月30日(月) 19~21時 [夜の部 ]のみ開催。(開場30分前)
・映画上映の後は・・> 神奈川お野菜の軽食を囲み懇親会(参加自由です)

お申し込み、詳細はこちらを。

▷NORA上映会のページ

NORA上映会の都合が合わない方は、郷土映像ラボラトリーでは、東京・川崎でも上映会を行っていますので、郷土映像ラボFBを参照くださいね。みなさまのご参加をお待ちしています!
▷ 郷土映像ラボ上映会のページ

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