第138回 田園ふれあいランド妄想 田起こし(の機械)の巻
2020.2.29いしだのおじさんの田園都市生活
正月からが新年で、4月からが新年度。
最近は旧暦カレンダーに注目する人も多い。
さて、畑の新しい年はいつからだろう?
1月の寒さでも、ビニールトンネルで大根や葉物を播けば3月4月ごろには食べられる。
だが、どうも寒いうちに種まきをするのは、あまり気乗りがしない。
最近では、2月になるかならないうちにジャガイモの種がホームセンターに並ぶ。
植え付け時季は3月の半ばころでいいのだが、気がせく。
「染井吉野の咲くころまでに」という言い方がある。
椎茸の菌打ちなどは終えておいた方がいいという。
田園ふれあいランドはやはり4月からをスタートとした方がいいかな?
な~に谷っ戸ん田もそうだったが、制度とのからみもあるだろう。
暖かくなって、桜が咲くころに身体を動かして新たな気持ちになれるのはいい。
スタートは田起こし。
秋の収穫後に秋うない、あるは寒の内に耕し、寒さと乾燥に土をさらすという方法もあるが、
田んぼの1年のスタートを春耕からとするのもいい。
みんなでワイワイ田起こし、新入りさんも、ベテランさんも、いっしょに。
何を使って田起こしをするか?
な~に谷っ戸ん田では、いろんなものを使った。
豆トラとか、ミディとかいう小さな耕耘機。
大人一人で持ち上げられるサイズ。
これは土が柔らかいところでは使えるが、硬くなっている泥を耕すのは難しい。
基本的には家庭菜園用。
田んぼは土というより泥で、稲刈り以来固くなっているので、力不足となる。
無理に回転させると跳ねてしまう。
小さいから初心者でも扱いやすいと思われそうだが、
機械というものは実は小さいと不安定なのだ。
安易に初心者に扱わせるべきではない。
代掻き用のロータリーがあれば代掻きのときには活躍する。
少し大きめのタイヤとロータリーが分かれているタイプの耕耘機。
な~に谷っ戸ん田で使ったのは、Kubotaの土の助(現行モデルは菜ビstyle)。
これは扱いやすく、安定感もある。
ロータリーの逆回転があるタイプだと、少々硬い土でも耕せる。
しかし、これで田んぼ1反を耕すのは気の遠くなる話だ。
やったこと無いけど、多分10時間以上かかるだろう。
それに表面を浅く削る程度で仕上がりも不十分だ。
楽しくない。
と、俺は思うが、初心者さんは、「機械で耕す」ということだけで、ウキウキ。
そんな姿を見ているのも楽しい。
馬力のある大きめの耕運機。
な~に谷っ戸ん田の園主が持っていたのは昭和のディーゼル。9馬力のテーラー。
スターターが手動回転式で、なかなかかからないし、ケッチンもある。
が、かかれば力はある。
左右に曲がったり回転するには手元のクラッチで片方のタイヤを止めておこなう。
これが不慣れだと、なかなかできないし、危険もある。
扱いにくいが、これくらい大きいと、熟練者ならば、1反2時間ほどか?
初心者がおたおたしながら恐る恐る作業するのを見るのも楽しい。
「機械を使っているんだか、機械に使われているんだか、わかんねぇな」と笑われる。
昭和40年ころは、「耕耘機のある家には嫁が来る」と言われたそうだ。
ということは、無い家の場合は、、、
「朝鮮牛はよく働いたぞ」と、昭和の終わりころにT町のSさんに聞かされたことがある。
O町あたりの農家の庭先に牛がつながれているのを子どものころに見たこともある。
(元号は基本的に使いたくないのだが、どうしても「昭和」で表現してしまう俺がいる)
10馬力ほどの乗用耕耘機。ヤンマーのアグリカ。
これは、グリーンで利用者にも職員にも扱いやすいだろうと導入した。
今、幸陽園農耕班でも使っている。
クラッチが無くて、レバーを押し込めば前進し、ブレーキを踏めば止まる。
右左折や回転は車と同じ丸いハンドルだし、基本走行の扱いが容易だ。
乗って運転できることは楽しい。
車の免許など絶対に取れない利用者たちが嬉々として運転できる。
グリーンでも幸陽園農耕班でも任せて大丈夫な利用者が何人かいる。
機械が進む速度は人が歩くくらいなので、まぁ、大丈夫。
楽チンに耕耘ができるのだが、タイヤが沈めばロータリーも当然沈む。
その部分ばかりが深く耕されてしまい、地面が凸凹に波打ってしまう。
ボコンボコンと上下しながら耕す様はカッコ悪いし、あとあとの作業に響く。
田起こしは、深く耕してはいけない。
10センチくらいに浅く、均等に耕されていることが望ましい。
その下は耕盤というのだが、ここが大事。
トロトロの泥の田んぼになったときにちゃんと硬い底があることで作業が楽になる。
そして、これが全体に凸凹の無い均等の深さであることが大事。
人間が歩くのにもそうだが、特に機械で作業するには、これが本当に肝。
凸凹の地面を田植え機を真っ直ぐに走らせるのは素人にはまず無理。
私も最初はこれを知らなかった。
耕すという行為は深く深くすることが大事だと思っていた。
初心者はみんなそうかな?
4月だと田んぼの表面には草もあってそこに前年の切り株も残っている。
草の緑と切り株の薄い茶色が耕されることで黒々としてくる。
耕耘機のエンジン音、爪(ロータリー)の回転、耕され色の変わる地面。
田起こしは、楽しい。
大勢でワイワイやれば、なお、楽しい。
な~に谷っ戸ん田のとき、田んぼのあちこちでいろんな機械が動いていてオモシロかった。
な~に谷っ戸ん田の園主は35馬力ほどの最新のトラクターを持っていた。
大人の肩ぐらいまである大きなタイヤ。
キャビン内はエアコンやオーディオがあり、乗用車並みに快適。
なにより耕耘作業を確実にする装置がいろいろあり、その一つがモンローだ。
自動水平制御装置。
地面が凸凹していても、ロータリーは水平を保ち、均等に耕せる優れものだ。
(文章で説明するのが難しいが、、、)
素人がいろんな機械で耕し凸凹になってしまった田んぼが均質に近づく。
しかも、あっという間。
これはプロが使う機械。
私もこれは触らなかった。
田園ふれあいランドには、、、どうかな?
当面は必要ないかな?
なんせ300万円以上するし、、、
15馬力くらいの古い小さなトラクターもあった。
横浜などの都市農業ではこのクラスが一般的。
30馬力以上を使っている農家は少数派。
北海道などでは100馬力以上となる。
しかし、やはり、素人にはトラクターは難しい。
な~に谷っ戸ん田でも、実際にトラクターを運転するメンバーはごくごく少数だった。
グリーンがトラクターを所有したのは、農地が1ha以上となってから。
それまでは、小さな機械でボチボチというか、えっちらおっちらやっていた。
田園ふれあいランドは、素人が自給的に耕作をする集団。
大きな機械は、基本的には必要ない。
ほどほどのものが数多くあった方がそれぞれが楽しめるだろう。
そして、もちろん、手作業もある。
鍬、スコップ。
鍬は、田起こしなら、3本鍬や4本爪のマンノウとなるか?
小さな谷戸田での作業はそうなるだろう。
私も初めて田んぼを耕したのは、舞岡での手作業だった。25歳ころか?
土の上に立ち身体全体を躍動させて、土を起こしていくことに興奮したのを覚えている。
青葉区J町の谷戸の小さな田んぼで活動しているみなさんはこのスタイルだろう。
な~に谷っ戸ん田は谷戸田ではあったが、1枚が1反5畝(1,500㎡)あった。
実は、もともとはズブズブの小さな谷戸田だったところを埋め立てて作り直したもの。
農地造成。
この農地造成のときには、貴重な生き物たちを救おうと恩田の谷戸フアンクラブが活躍。
(このことは、簡単に書けることではないので、また、別の機会に)
春の田起こしの楽しさを書こうと思ったら、機械の話になってしまった。
人こそが主役であるはずなのに、人が楽しむことこそが趣旨なのに、、、
しかし、田園ふれあいランドという組織がどういう機械を持つか?
田んぼを耕作するには機械も必要で、共同耕作の組織であるからこそ、そこは大事だ。
そんなことを思いながら、妄想と言いつつ少し具体的に書いた。
来月は種まき苗代づくりの巻かな?
石田周一