石田のおじさんの田園都市生活

第78回 春の混沌

2015.2.27
いしだのおじさんの田園都市生活

どうして勉強会って言って出かけて、ヨッパラッて帰って来るのかなぁ?
・いやいや、懇親会、コンシンカイ。
いちいち呑む必要ある?
・こんしんかいで、ね、こんしようかい、ああしようかい、って、ね。
ナニ言っているんだか。
・呑んで語り合うと、発想が広がったり深まったりするんだよ。
そして飲み過ぎて、勉強したことも忘れちゃうんじゃない?
・いやいや、歴史は夜つくられる、って言うだろ。
聞いたことないけど。
・ま、これは、ね、解釈はいろいろ。
なんか、最近、勉強会が多いね。年度末、って関係あるの?
・どうかなぁ、ただ農業関係は今の時期、比較的時間の融通が利くんじゃないかな。
なるほど。で、実際、参加して役に立つの?
・そんな、すぐに実りがあるわけじゃないよ。肥しをやって、耕して、種まくわけで。
でも、収穫物を食べてきたんでしょ。
・うん、今日はね。山形の月山福祉会さんのスモークチキンとか。
美味しそう。
・うん、美味かったけど、ほんの一切れしか食べられなかった。
あらら。人気だったんだ。
・会場が、またね、法政大学多摩のエッグドームのスローワールドカフェ。
なんだかよくわからない。
・やまぼうし、っていう障害福祉のNPOが運営しているカフェ。
大学内福祉?
・そうともいうかな?やまぼうしさんは明星大でもカフェをしているみたい。
利用者さんの仕事場?
・うん、今回、利用者さんはお休みだったけど、やまぼうしは、いろいろ展開している。
ふむふむ。
・柚木かたくりの会って、前にパン買いに寄ったじゃん。そことももつながりがある。
そうだったっけ
・アウトレットに行った帰り。
憶えてないよう。
・俺は95年ごろ、あのへんに行っているんだよね。鈴木牧場とか。
ずいぶん昔の話。
・林くんもいっしょだったよ。彼は学生だった。
石ちゃんも毛がフサフサだった?
・『農はいつでもワンダーランド』って本があってね。
へぇ。
・コモンズの大江さんが、コモンズを創る前に編集した本。
そうなんだ。
・八王子の柚木で地元の人たちと新住民とのファーマーズクラブ。
横浜でもあるでしょ、そういうの。
・ま、谷っ戸ん田もそんな感じだったけど。ただ、横浜と多摩は個性がかなりチガウ。
どっちがいいの?
・いや、そうやって較べて優劣をつけてもしょうがない。
どっちがいいの、じゃなくて、どうチガウの、って聞けばいいんだね。
・少しわかってきたじゃん。
そう言われると、ウレシイ、と言うよりクヤシイけど、、、
・ま、ま、でもね、福祉との融合は柚木から日野へずいぶん進んでいる。
横浜、負けている?
・って、やっぱり、カチマケにしたいのか、ハナシを、、、
ゴメンゴメン。
・ま、ちょっとお付き合いが途切れていた間にあちらはいろいろと展開していたのは事実。
カフェ以外にも?
・畑に始まって、パン屋やカフェなどもだけど、特区の提案までしている。

・八王子市市街化調整区域でのアグリビジネスを軸とする障害者雇用創出特区の提案。
スゴイね。
・知事もその構想に満更でもないとか。
へぇ。
・それに若者たちが農業の株式会社を作っている。
会社?
・それらが互いに刺激し合って協働したり、、、
着実なんだ。
・そうだね、うん、なんかね、先を行っている、って感じかなぁ。
刺激されたんなら、それは、よかった。
・うん。やっぱ、刺激的だった。
で、石ちゃんは?
・俺もいろいろ考えてはいるけど、、、今はまだ種をまき始めるかどうか、って感じかなぁ?
グズグズしている。
・横浜には横浜のあり方があると思うし、、、俺には俺の、、、
グズグズしている。
・そのぶん、家事はケッコウしているじゃん。
そんな、全然チガウ話に持って行く?
・ゴメン。でも、昨日の参加者たち、休日も多動に仕事しまくっている感じだったよ。
そうなんだ。
・みなさん、明日はナニナニがあるけど、来ませんか?みたいな勢いだった。
焦る?そういうの聞くと?
・少しね。でも、ほどよく肥しをやって、ていねいに耕して、春を待つよ。
待っているだけでいいの?
・もちろん攻めたり、追いかけたりも、ね、けど、まずはその体制を作らないとね。
ふうん。
・先週は別のところで筧次郎さんという方の話を聞いてきた。これも場所は多摩だった。
どういう人?
・茨城で百姓暮らしをしている哲学者、かな?
かな?って?
・京都大学で哲学を学んだあとにはパリで勉強していたそうだ。
パリから百姓?
・いやぁ、フランスは農業大国だよ。
でも、、、
・パリで自由、平等、博愛とはいえない現実を見てしまったことも影響している、とか。
どういうこと。
・植民地支配の名残りで、アラブ系の人を冷遇している問題など。
でも、だから、日本に戻って百姓?
・いや、その間にいろんな思索があったはずだよ。その話を聞いてきたんだよ。
どうも、なぜ百姓になったか、わからない。
・うん、わからないことからスタートしてみていいと思うけど。

・本、読んでみる?『百姓入門』
別に、特に入門したいと思ってはいないから。
・サブタイトルが「奪ワズ汚サズ争ワズ」。
どういうこと?
・だから、読んでみたら、、、
聞いたっていいじゃない。
・ま、ね。興味持ってくれるだけでもよしとしないとね。
でしょ。
・現代を生きていると、奪ったり、汚したり、争ったりが多くなる。
誰のこと?
・誰もが、というか、この先進国と言われる国々に生きている人たち、、、
そんなこと、していないよ。私は、、、
・いや、構造的にそうなんだよ。「豊か」といわれる北側に生きているだけで、、、
納得できないけど、そーいうの。ゴーインな理屈。
・ま、ま、とりあえず、納得できなくてもいいけど、、、
じゃ、とりあえず、納得しない。
・けれども、百姓暮らしはそれをしないですむ。と、そういうことかなぁ?
よくわからないけど、、、
・経済的な搾取や格差、環境破壊そして競争社会、、、
うーむ。
・北と南だけでなく国のなかにもある。(家族の中にも、、、と言わないように、、、)
しょうがない、じゃない。
・でも、百姓として自立して生きていければ、「奪ワズ汚サズ争ワズ」なんだよ。
その人はいいけど、他の人はそんな世間で順応してサバイバルしなきゃならない。
・そうだね。巻き込まれないようにするのもたいへん。肯定はしなくても否定しきれない。
それで百姓のできる人はいいけれど、子どもに百姓になれって言えないでしょ。
・それは、もちろん自由。ただ世の中の構造に想いをはせてほしいとは思うよ。
自由でいいでしょ、自由で、、、
・自由にさせてないじゃん。アーセイコーセイっていつも言っているじゃん。
それは、日常のことだから、、、人生は自由。
・その自由を獲得するのが難しいわけで、また、何が自由かを考えれば難しいし、、、
なーんか、メンドクサイ。
・ま、哲学的に考えれば、だよね。俺たちには哲学が無い。
気楽な方がいいよ。
・筧さんの話を聞いて家に帰ったら、夕食がコストコのピザとサラダだった。
いけない?
・いや、自由だよ、自由。
でしょ。
・(でも、消費というか、グローバリズムにからめとられている、というか、、、と、思いつつも)自由はいいよね。(と、ここではそう言うしかない。)
ちゃんと、ピザを食べて、ビールをグイグイ、ワインもククク、だったでしょ。
・メンボクない、、、(話は本質をそれた)
で、今日は霞ヶ関?
・うん、大臣が交代した農水省。ハハハ。もちろん、そんな話題は出なかった、けどね。
何の勉強?
・いまや、農福連携はちょっとブームなんだよ。
ふうん。
・事例発表がどんどん進化深化しているんだ。
また、石ちゃんはオイテケボリじゃん。
・そうかもね。
なんか、百姓もあって、農福もあって、アグリビジネスもあって、、、
・里山もあって、地産地消もあって、来月は明峯さん追悼の会。
どうなってるの?
・明峯さんは、俺にとっては別格。
それにしても、いろんなことがありすぎ。
・うん、俺も今は混乱しているんだよ。どちらに進もうか、、、
進めるならいいけどね。
・そうだね。ウダウダ迷っているうちにさらに混乱が深まるかも、、、
ちゃんと整理したら、、、
・いや、「美は乱調にあり」だよ。

石田周一