第79回 時代を駆け抜ける
2015.3.31いしだのおじさんの田園都市生活
またまた、勉強会とかナントカ言って、ヨッパライ。
・楽しいお酒を呑んできたんだよー。
それは、それは、、、
・立教大学、ステキだった。
どんなステキ?
・建物がカッコイイからか、雰囲気が基本的に。
石ちゃんの母校だって、そこそこカッコイイじゃない。
・そんなこと、思ったことない。
そう、、、ま、大学のミテクレの話じゃなくて、お勉強のナカミは?
・うん。「時代を駆け抜けた明峯哲夫を語る」。内容濃かったよ。
誰が語ったの?
・かなり多彩な人たち。俺も語ったんだよ。
ええーっ、語れるの?
・う~ん、いちおうシャベッタけどね。まぁ、どうだったんだろう?
なんか、タヨリナイね。
・そうなんだよ。
どういうこと?
・明峯さんと俺は『街人たちの楽農宣言』(コモンズ:1996)という本の共編著者。
うん、見たことはある。
・読んだことは無い、だよね。
まぁ、ね。
・背表紙で名前が並んでいるけど、言ってみれば格がチガウ。
ふうん。
・うん。
でも、較べなくてもいいんじゃないの?
・、、、めずらしく、イイコト言うね。
そういうイイカタもないでしょ。
・ゴメン。
で、どんな話をしたの?
・何を話そうかと思って、前の晩から『楽農宣言』を読み返していたんだ。
うん。
・多彩な人たちがいろんなことを書いていて、なかなかいい本なんだよ。
はい。
・で、俺、あんまり自分の原稿は読み返したくなかったんだけど、、、
どうして?
・たいていね、自分の書いたもの、しかもかなり前に書いたものって、イヤなもんだよ。
へぇ。
・でもね、読んだんだよ。
なにをモッタイぶって。
・そうしたらさ、切れ味がいいんだよ、書いていることも文章も。今よりゼンゼン。
ふうん。そうなんだぁ。でも、どうして?
・若気のいたり、って感じかな?
えっ?
・あのころの俺は、若くて、多動で、コワイモノナシで、、、
今は?
・すご~くコワイモノアリ。まず、コワイコワイ女の人。
ブッ!それって、イマイッショニスンデルオンナノヒト?
・そう。いや、あのころはむしろ周りが見えていなくて、リスクは考えなかった。
ふうん。
・田んぼを始めたときも、「田んぼをやりたい」という気持ちだけで走った。
それでいいんじゃないの?
・村社会にヨソモノが入っていくんだから、リスクはいろいろあった。
結果的には?
・そのときは大丈夫だったけど、、、
その後、いろいろあったんだね。
・まあ、、、
イキオイだけで走ったほうがうまくいく、ってこと?
・それが、若気のいたり、ってことで、それはもうできない。トシだから、、、
そのぶんいろいろ経験を積んでるんじゃないの。
・ま、ね。話を戻すとね、「あの切れ味は明峯さんのオカゲ」という話をしたんだよ。
影響を受けた、ってこと。
・そうだけど。それだけじゃないような、、、
でも、影響を受けても、もともと何もない人なら書けないわけでしょ。
・そうだね。うん。褒められているんだか、どうだかワカランけれど、、、
いい方に取ればいいじゃん、この際。
・うん。あの本の編集は、俺が明峯さんに初めて会ってから1年も経たないときだった。
うん。
・そもそも「市民が耕す研究会」っていうことの意味がわからなかった。
うん。
・そんなことをオオマジメに議論する明峯さんやその場が俺にはイミフメイだった。
うん。でも、なんでそこに付き合っていたわけ?
・イミフメイ、違和感、が、新鮮だったのかも?新鮮な感動?
よく、わかりませんね。アイカワラズ、、、
・ただ、本の編集と同時進行で明峯さんの本を読んだし、現場にも足を運んだ。
そういうところがエライよね、石ちゃん。
・ま、酒が呑める、って言うのもあったからね。
結局、それかぁ。エライって言ったの取り消す。
・でも、俺もグリーンを始めて2年目くらいでなんかヨルベない感じだったんだよね。
自信が無い?
・そう。評価してくれる人も無かった、というか、コキオロサレテいたからね。逆に。
誰に?誰だ?ソイツは?
・う~ん、その話は止めよう。古い話だし、カゲグチみたいなことは言いたくないし、、、
、、、じゃ、話はどこに戻す?
・明峯さんとの出会いかな。
どうぞ。
・第一印象は、アツい人、そして、大きいんだけどなんか少し、、、
少し?
・世間のフツーの人とはちょっと、いや、かなりチガウみたいな、、、
酷くない?そういう言い方?
・いや、褒めているんだから。酷くないよ。ラディカルって、わかる?
?
・アナーキーは?
?
・俺、学生時代からラディカルとアナーキーに憧れていたんだけど、、、
?
・ついぞ、そういう人を見なかった。ノンポリ、消費文明世代。なんクリ。
それは、石ちゃんのそのころの交友範囲での話でしょ?
・まぁ、そうだよね。
それが、畑に行ってみたらそういう人がいた?
・オモシロいこと言うね。でも、そうだな。畑がラディカルなんだな、きっと。
そうじゃない畑もあるでしょ。きっと。イロイロだから、、、
・そうなんだよ。わかってきた、ね。
ふん。
・とにかく、本を読みながら現場に足を運んだ。
どんな本?
・『僕たちはなぜ街で耕すか』(風濤社、1988)、名著!立教大学での講義のライブ。
難しそう。
・いや、平易な話し言葉で読みやすい、し、臨場感がある。
どんな内容?
・明峯さんはこんなふうに書いている。
「この講義では食べ物や農業の問題が語られた。けれども私としては、そのことを語りながら、現代の社会をそして何より我々一人一人の生き方を語りたかった。」
食べ物が生き方?
・目次、紹介してみようか?
1、 国際分業論とその批判
2、 環境制御技術とその批判
3、 都市文化とその批判
4、 自給農業に活路を見いだす
5、 生き物との共生
6、 全身で食べる
うん、よくわからない。
・そりゃ、目次だけで分かっても困る。一年間の講義だからね。
このとき、明峯さんは「やぼ耕作団」というグループをやっていて、
それも本になっているんだけど、市民という立場で自給にこだわっていた。
うん。自分の食べるものは自分で作る、ってこと。
・そう、実践家の立場なんだよ。常に、、、
ジッセンねぇ。
・講義では、ときにゲストも呼んでるよ。有機農業者の金子美登(ヨシノリ)さんとか。
聞いてみたら、オモシロいかも。
・でしょ。
「自給」って、聞くとダッシュ村を思い浮かべてしまう、どうしても。
・いや、それはそれで、あれはあれで、農業が楽しくカッコイイって紹介してくれた。
アイドルがやるわけだから。農業がカッコイイわけじゃなくて、、、
・そうかもね。でも自分で食べ物を作ること、全身で食べることを考える機会にはなる。
う~ん。
・そして、『自給自足12か月』(創森社(アウトドア術シリーズ):1996)
もうズバリですね。
・まさに実践編。立教の講義から8年経って、少しポップかも。
ポップ?
・春夏秋冬の田畑と食べることを書いていて、ちょっとマニュアルのようでもある。
季節ごとに読めるね。
・俺は、実際そうしてきた。ただ、マニュアルとして読むのでなく、やはり、、、
やはり?
・何をどうやって食べるかは生き方の問題だと思う。
生き方、ねぇ。そうかなぁ?それは大事だけど、生き方なのかなぁ。
・そして、この本の最後の章で明峯さんは書いている。
この国の自給率が低いことにたじろぐ人がいるだろうが、
人間一人ひとりの自給率を顧みる人は少ない。
自給率がゼロでも飽食が可能だということは、考えてみればおかしなことだ。
地球大で帳尻を合わせ、生存を考えることは大いなる錯覚だ。
農民や農村が多くの人の食を請け負うと大型機械や工業技術に依存せざるを得ず、
農業は生み出す営みではなく消費する営みとなる。
この不条理を解決するには、誰もが農民になり、自然や生き物と交わり、
汗をかき、自然の一部として生きることだ。
誰もが自給自足すべき?と?そこまで言うわけ?
・それが、ラディカルでアナーキー、ってことだよ。
よくわからないし、できないよ、そんなこと。誰もがお百姓さんになるなんて、、、
・確かに、誰もが田んぼや畑は無理だよ。少しでも目を向けてみることかなぁ。
ま、我が家も少しだけど自給できているもんね。
・そうだよ、きのうのサツマイモケーキもうまかったし、菜の花もよかった。
うん。新鮮で美味しい野菜を食べられる。
・ベランダでナスやトマトやキュウリを作っていたこともあったじゃん。
そうだった。
・谷っ戸ん田はやめちゃったけど、また次の田んぼのことも考えるよ。
よろしく。
・谷っ戸ん田では、農業に関心を持って、好きになって、少しはできる人ができた。
そうだった。
・広い意味で「自給」する人を増やす。俺なりの「私移民が耕す」。
明峯さんに近づいた?
・いや、それはないかな。別格であることには変わりない。
そうなんだ。
・そういう人がいることはシアワセだよ。
そうかもね。頑張って。
石田周一
明峯さんの著作(買って読んでほしいけれど)
ほとんどが絶版となっている。
上記の4冊など、ご興味ある方は連絡くださればお貸しできます。