第109回 てがりもよし
2017.9.28いしだのおじさんの田園都市生活
稲刈りは、どうなったんですか?
・今日、やっと終わったんです。今日は火曜日です。
ゴクロウサマでした。
・ホント、ゴクロウだったよ。
疲れた?
・うん。うーん。
?
・今は、なんだか、いい気分なんだ。
それは良かった。でも、気分が悪いこともあったの?
・ま、なんというか、無事に終わるか心配というか、、、
そうかぁ、、、
・一人でできるわけじゃないし、、、機械があるわけじゃないし、、、
うん。
・利用者さんの動きは、ときに想定外というか、、、
ああ、
・いや、職員も、ボランティアさんも、俺自身も、計算できない未知数なんだよね。
うん。それは、心配にもなるね。
・それに、天候が、ね、今回も予報が途中で変わって、大雨警報、、、
そうだったね。金曜が大雨で、土曜日の朝、暗い顔していたよね。
・木曜から刈り始めて、途中で降られて、対処には悩んだね。
そうだったんだ。
・刈って干さなきゃならんのに雨。干す場所も作れてなくて、田んぼで濡れちゃう。
あらら、ですねぇ。
・ナントカと秋の空だよ。
ははは、ナントカ、ね。でも、「できることをするよ」って、言って出掛けた。
・うん、最後はヒラキナオルしかない。
そうだね。
・ま、終わらなかったら、それはそれで、という気分だったね。
暗い顔だったよ。
・ゴメンよ。でも、ボランティアさんが来てくれて、濡れた稲束をサッサと掛けてくれた。
よかったね。
・いつも、ボランティアさんに助けられる。
うん。でも、犠牲とか奉仕とかのボランティアさんでもない。でしょ。
・田んぼを楽しんでくれる。いっしょに。
いっしょに楽しめば、楽しみも大きくなるね。
・うん。でも、今回、そんなに広報しなかったから、こぢんまり、だった。
大勢で、すっきり終わらせたかった?
・まぁ、こぢんまりもいいけど、終わった方が良かったかなぁ、、、
打ち上げでうまい酒が呑みたい?
・ま、それもあるけど、、、
けど、じゃなくて、そればっかり、なんじゃないのぉ?酒酒!
・ははは!ま、人生はビール、だからなぁ、、、
良いときも、悪いときも、、、
・ははは、、、で、今はいい気分なんだよ。(グビッ!)
それはそれは、、、
・結局、土曜には終わらず、日曜は休んで、月曜も他の仕事に追われて、、、
2日間も放っておいた。
・そう、でも、ヤムヲエナイ。
どれくらい残っていたの?
・田んぼの面積で、10分の1くらいだったかなぁ、、、
もう、ほんの少し、って、感じ?
・まぁ、刈って、結わいて、掛けるだけ。掛け干しの足場は作ってあったからね。
ふうん。
・土曜に少し残業すれば終わっていたくらい、だね。
すれば良かったのにぃ、、、中途半端じゃん。
・うん、そうも思ったけどね。でも、結果、今日、やってよかったよ。
なんでぇ?
・仕事は効率的に進んだ方がいいし、スッキリ片付いた方がいいんだけど、、、
そうだよ。当然。
・んだけどぉ、、、田んぼはちょっとチガウんだよねぇ。
?
・今日、いつものメンバーでまた一株ずつ稲を刈っているとき、ね、感じたんだよ。
???何を?
・田んぼにいることのシアワセを、だよね。
???
・普通の仕事は、早く終わればそれだけいい、労力が少なければそれだけいい。
ジョーシキでしょ。
・ジョーシキは疑ってみるべき。
でも、仕事はサッサとサクッと、、、
・俺もね、うん。そもそもぉ、今どき手刈りなんて、、、って思って、ね。
うん。
・なんか、グズグズしてるなぁ、って感じて、バインダーが欲しいなぁ、って思った。
でしょ?
・掛け干しもね、竹じゃあ面倒だし、俺しか組めないし、スチールのが欲しいなぁって。
うんうん。
・今はみんなスチールを使うし、だいたいコンバインだから掛け干し自体しない。
(プチ解説:コンバインは稲を刈りながら脱穀までをおこなう機械。籾は乾燥機で乾かす。手刈りやバインダー刈りは、稲を掛け干し(稲架掛け)し天日で干してから脱穀機を使う。バインダーは刈りながら結束する歩行型の機械で、これがあれば、手刈りの10倍?の作業効率。コンバインは乗用の大きな機械で、これならもう100倍?バインダーは中古で10万円以下で手に入るが、コンバインは中古でも100万円以上するし、乾燥機とそれを置く場所も必要。我々にはほど遠い。それに大きな面積をこなさないと、元は取れない。けど、横浜でももうバインダーの方が珍しいような状況なのである。)
竹を使うなんて、昭和なんだ。
・その竹も、去年補充が必要になって、冬の間にみんなして切ってきたんだよ。
ゴクロウサマ。
・それにね、今年は干ばつとその後の長雨でデキ自体が良くなくて、テンション低いし。
うん。悲しいねぇ、、、
・もう、埋めて畑にした方がいいかも、って、本気で考えた。少し、、、
石田が田んぼを埋める?
・そう、「石田が」、だよね。効率を考えたら、ひとつの選択肢。
ビジネスとして考える?
・でもね、なんか、今日、みんなで田んぼにいて、一株ずつ刈っていたら、ね。
シアワセだった?
・これはこれでいいんだ、って、思えてきて、、、
ふうん。
・シツコイけど、そもそもぉ、で、みんなで田んぼにいる時間がすごく豊かに思えた。
そうなんんだ?
・利用者さんたちは、ね、目の前のことを一生懸命やっている。
まっすぐ、って感じ?
・そう、一株一株の稲をたんたんと自分の力で刈って、結わいて、、、
上手にできる?
・上手な人もいるし、そうでない人もいるし、、、
そりゃあ、そうだ、ね。
・初めてやって、朝はヘタクソだったのが、昼にはソコソコになった人もいる。
へぇ。
・去年は無理無理だったのに、今年はこなせている人もいる。
へぇえー、なんだか楽しいね。毎年、進歩があるんだ?
・うん。でも、進歩しないところもたくさんあるよ。イライラさせられることも、、、
ダメじゃん。みんな、頑張っているんでしょ。石ちゃんがイライラなんて、、、
・そうだねぇ、、、
でしょ。
・よくあるのがね、無駄な動きをする人。
?
・例えばね、刈った稲をシートや手箕とかに並べるんだけど、それを遠くに置いたまま。
?
・作業している場所にシートや手箕を動かせばいいのに、何度も行ったり来たり、、、
なるほど?効率的じゃない。
・そもそも効率を考えていない。ビジネスじゃない。
ははは。
・イライラしちゃう。
ダメじゃん。
・でも、彼らをビジネスを忘れさせてくれる存在としてしまっても、マズイでしょ。
そうだねぇ。なんか、特別扱いというか、、、
・天使扱い、っていうか、、、
純粋で、欲のない人たち、みたいな、、、
・そういうわけじゃないんだけど、でも、いっしょに田んぼにいると、なんか、、、
なんか、シアワセ?
・それが、手刈りのペース、って感じた。
なるほど。
・たぶん、自分が食べる米を作るんだったら、手植えの手刈りでもできないことない。
自給自足?
・ま、米だけで自足じゃないけど、日本人平均の60㎏を作るなら、150㎡くらい。
??
・今回の田んぼは1,000㎡。1反だよ。
約8倍だ。
・まぁ、8人で2日のんびり頑張れば刈れるね。そんな実感があった。
へぇ。
・そういう感覚で田んぼと付き合えたら理想だと思うな。
なるほど、、、でも、ビジネスで考えたら?
・そこなんだよね。米専業の農家なら、100反(10町歩=10ha)はやらないと、、、
手刈りなら、8人で200日っ!?あり得ない!
・コンバインがあれば、1人で、条件が良ければ20日かからないんだろうね。
うーん。そういうことかぁ、、、
・バインダーでは、100反はこなせない。林くんが10反+αやっているけど。
ホント、頑張っているんだね。スゴイね。
・彼のスゴイところは、さらに売り方で工夫があるところだと思うな。
そうなんだ。
・いずれにしろ、楽しんで自給する田んぼと、ビジネスの間には、、、
大きな違いがあるんだね。
・我が社も、福祉だからと、楽しんで自給するレベルでいいのか?
福祉をクイモノニシテイル、、、
・人聞きが悪いなぁ、、、でも、そーかもね。考えなきゃ、、、
何を?考える?んですか?
・正攻法でいえば、規模拡大かなぁ、、、もしくは、なんらかの付加価値、、、
正攻法じゃなかったら???
・うーん。裏技もあるかもね。
石田周一:もうすぐ56歳。