第102回 「無」について

2017.2.27
いしだのおじさんの田園都市生活

気がつけば、もう3月ですね~。

・焦るぜ。

焦っているように見えませんが、、、

・やっとこのあいだ大根をまいた。ホントは1月にまきたかった。

過ぎたるは、、、

・1月、2月は堆肥づくりをメインに頑張っていた。

ふうん。

・楽しいよ。利用者さんもみんな張り切るし。

どんなこと、しているの?

・森で落ち葉を拾って来て、乗馬場でボロをもらって来る。

拾ったり、もらったり、なんだぁ。

・いいでしょ。

ええー、いいのかなぁ?

・捨てられるものを役立てているんだから、いいでしょ、もちろん。

捨てるときはキッパリ捨てたい。

・それは、我が家のゴミの話でしょ。

ゴミだけじゃない。

・ハハハ、(オトコも捨てるか???)

ハハハ。

・捨てるもの、っていうから、なんなんだよね。循環、って言えばいいんだよ。

?コトバでごまかす?

・まぁ、どうでもいいや。

あらら、投げやり。

・とにかく、いい肥やしを作って、いい土を作りたい。

そして、いい野菜を作る、ということですね。

・いや、野菜は作れない。

ええっ???やる気がないのか???

・そーゆーわけじゃない、よ。野菜は作るものじゃないんだよ。

・野菜は「できる」ものなんだ。人が作るわけじゃない。

なんか、また、例によって、屁理屈に聞こえるけど。

・いや、謙虚に言っているんだけど、、、

(力不足や努力不足を)ゴマカシているようにも聞こえるけど、、、

・いやいや、、、ケンキョケンキョ。

まぁ、いいや。

・で、堆肥を作って土作り、も、「作る」とは言っているけど。

けど?

・まぁ、拾って、もらって、混ぜたり、水かけたり、踏んづけて、、、

いろいろやるんだね。

・発酵だよ、発酵。熱が出る。

見たことあるよ。湯気が出るよね。

・そうそう。そして熟すのを待つ。運んで、積み替えたりして、、、

ふうん。

・その過程を楽しんでいるんだ。利用者さんたちと。

楽しいなら、けっこうですね。

・そう。そこに意味があると思っているんだ。

利用者さんたちが楽しく働いて作った堆肥で土がよくなる。

・うん。でも、グリーンのときはもっと切実だった。

・この仕事で十分に身体を動かさないと生活が乱れてしまう人たち。

障害が重い人たちですね。

・ううん。やんちゃというか、エネルギーにあふれている人たち。

そのエネルギーの使い方が分からない。

・そう、そうなると「行動障害」とまで言われちゃう。

うん。

・でもねぇ、本来は素直な人たちなんだよ。

うん。エネルギーをちゃんと使う場を用意する必要がある。

・土に触れて、身体を動かして、「アースする」って、俺は言っていた。

そうかもしれない。

・今の世の中はそうじゃない人たちで動いている。

そうかもね。アースしていない人たち、、、

・ところで、堆肥は肥料だったり、土壌改良材でしょ。

そうなんだ?

・でもね、最近は、無農薬や無化学肥料だけでなく、無肥料というのも流行っている。

へぇ。どんどん、「無」になっていくんだね。

・うん。もともと人生も「無」だからね。

・「自然栽培」っていうんだよ。

へぇ?なんか聞いたことある。

・それは、もしかしたら「自然農法」のことかもしれないね。

違うんだ。ややこしいね。

・俺も正確にはわからんけど、自然栽培は耕すけど、自然農法は耕しもしない。不耕起。

へぇ。「無耕起」とは言わないんだ。

・肥料もやらず、耕しもしなければ、楽チンかもしれない、ってことでもないけど。

ハハハ。でも、肥料がなくても野菜って育つの?

・そこは微妙だけど、そういうやり方で実績を上げている人もいる。

逆に、実績を上げていない人もいる、ってこと?

・まぁ、ね。「お金にはならないけど」と言いながら取り組んでいる人もいる。

無稼ぎ?

・いや、その人の取り組みには誠実さがあるように感じたよ。

誠実じゃない人もいる?

・うん。なんか、ただ、「無」とか「不」に憧れているような人もいる、ようにも見える。

へぇ。ま、それもその人の自由でしょ。

・そうだね。どんなやり方にも、その人なりの何かがあると楽しいよね。

やる人の腕前次第、ってこと?

・それもあるけど、農法と農地の相性ってのもあるよ。

そうかぁ、、、

・それぞれの地方の気候風土もあるし、、、畑にも一枚ごと違う個性がある。

そうなんだ。個性ね。

・まぁ、何々農法とか方法にこだわりすぎないほうがいいと俺は思っている。

うん。

・かといって、慣習に従ったり、雰囲気や空気に流されるのも問題だけど。

ふうん。

・障害者の支援にも何々療法とか何々プログラムとか、あってね。

ああ、なんか言っていたよね。

・そういうものは、参考にするものであって、流派に入門するとか、そういうのではない。

なるほど。

・でも、入信しちゃう人が少なからずいるんだよね。

へぇ、入信だ。どっかで聞いたね、最近。

・個人が入信するのはその人の自由だけど、、、

まぁ、そうですね。でも、家族が困ることもある。

・「こだわり」もいい意味で使われることもあるけど、、、

窮屈になることもあるよね。

・俺は、いいとこどりしていいと思うよ。

・支援方法も農法も、そのときどきの状況に合わせて選択する。

選択するのも簡単じゃなさそうだけど。

・畑なら、農地ごと、作物ごととかで、別のやり方を考える。

難しそうじゃん。

・ま、テッキトーにやるんだけど、ね、結局は。

石ちゃんはイイカゲンだもんね。

・そんなぁ、ホメてくれなくてもいいよ。

ホメていないから。

・ハハハ。

でも、無農薬はこだわっているんでしょ。

・こだわっていないよ。前も言ったじゃん。農薬をちゃんと使える技術がないだけ。

そうだったか。無農薬じゃなくて、無技術だったか。

・農薬は使えない、堆肥は作るのが楽しい、だから無農薬有機、それが我が社のやり方。

なるほど。

・堆肥の材料もそのときにあるものを使う。

そうかそうか。あるものリサイクルだ。

・そういう意味で俺が尊敬しているのは日野のせせらぎ農園。

ああ、行ったね。

・「まちの生ごみ活かし隊」という活動が生んだコミュニティガーデン。

生ゴミの回収をしている。

・それで「菌ちゃん野菜」を栽培している。

生ゴミを肥料にしている、ってこと?

・生ゴミをエサにして菌ちゃんを増やしているという説明が合っているのかな。

うん。分かるような、分からないような、、、

・俺もよく分かってはいない。

出ました。イイカゲン。

・もともとは生ゴミリサイクルが目的で、それだけやっていた。

そうしたら、野菜作りに行きついた。

・それが、コミュニティガーデンになって、、、

いろんな人が集っている。

・子ども連れのお母さんたちも気軽に参加している。

いいねぇ。

・せせらぎが流れていて、子どもたちは水遊び。

いいねぇ。ノルマがあったりしない。無ノルマ。

・全くないわけでもないだろうけど、「いつでもだれでも参加できます」としている。

スゴイよね。

・こだわりがないことが、こだわりかもしれない。

オープンにすることがこだわり?

・こだわりが無い。無こだわり。

オープンで垣根がない、無垣根。クローズじゃない、無クローズ。

・無にもいろいろあるね。

石ちゃんは、無節操。

・ハハハ。勝手なこと言われても、無抵抗。

 

(石田周一)

いしだのおじさんの田園都市生活