第95回 第2種兼業農家

2016.7.31
いしだのおじさんの田園都市生活

泳いできた?

・うん。身体をほぐす程度だけどね。

ふうん。それって、どれくらい?

・30分で500弱かなぁ、、、若いころは1時間2500は泳いでいたのにね、、、

いや、過去のことはいいから、、、それで、身体、ほぐれるんだ?

・ま、ね。そのあとにビールを飲んで、、、

なぁんだ、結局、それだ。

・日々、身体を酷使しているからね。

何やってんの?

・うーんと、ねぇ、、、俺の仕事は、ま、福祉関係じゃん。

うん。

・でも、農業関係でもある。

まぁ、そうですね。

・でも、今、不動産関係というか、土建屋関係に出稼ぎしている。

だからぁ、それって、何なんですか?

・つまり、ま、肉体関係だよ。

イイカゲンに、しなさい。

・駐車場の草刈りをしているんだよ。稼ぎ仕事で、、、

それならば、最初からソウイイナサイ。

・あははは。

何ですか?不本意な仕事をしているテレカクシ?

・いや、そういうワケではない。結構、楽しい。

なんで?なんで楽しいの?

・人というものは、作るより壊すほうが楽しいんだよ。

そんなもんですか?

・草刈り機をブゥンブゥンやっているとアドレナリンが出る。暑さも吹っ飛ぶ。

怖いなぁ、、、

・利用者さんと出かけて行ってね、俺が草を刈って、利用者さんが集めて拾う。

ふうん。石ちゃんが主役で利用者さんは脇役みたいじゃん、、、

・まぁ、機械を利用者さんに、ってのは危険だからね。畑ではやってもらうんだけど。

そうなんだ。

・ナイロンコード、ってあってね、文字通り紐で刈るから危なくない。

へぇ、でも怖そう。

・ま、これは、畑で気を付けながらなら、利用者さんにもやってもらえる。

気を付けてよ。

・うん。駐車場では、草を集めて拾うほうが大変な場合もあるし、主役と脇役でもないよ。

そうかもね。

・それに、それに、ね。業界では「手元」って言うんだけど、助手は大事な役割だよ。

へぇ。

・親方の動きを見て手元ができれば、それは大いに可能性があるってことだよ。

なるほど。

・「手元」は「半人前」とも言うけど、まずは、そこがちゃんとデキルコトが大事。

アレコレ理屈並べて、やりたいようにやっているんじゃないの?

・なんだよ。やりたいようにできるほど甘くはないよ。

で、出稼ぎは稼げるの?

・そうなんだよ。悲しいことに、、、

稼げて悲しいことないでしょ。

・いや、畑や田んぼのウン倍も稼げてしまって、、、ちょっと、ね。

そうなんだ。農作業しているのがバカバカしくなる?

・ヒドイなぁ。そんなこと言っていないだろ。

出稼ぎだけやっていればいいんじゃない。

・おいおい。

稼げ稼げ。

・こらこら。

でも、どうなの?利用者さんたちは?

・えっ?

畑と出稼ぎとどっちがいいのか、選ぶのは利用者さんでしょ。

・そ、そ、それはそうだけど、、、

稼げるのと、稼げないのと、どっちがいいのかも、、、

・ま、ま、そうですけど、、、

それに、出稼ぎって言っても、家族と離れて暮らすわけでもないし。

・ま、正確には地域での出張仕事だね。

そうでしょ。昔、出稼ぎで本当に苦労した人たちに失礼でしょ。

・うん。『無音の叫び声』って映画を見たよ。

・農民詩人を描いたドキュメンタリー映画。日本農業ジャーナリスト賞映像部門。

・出版部門は大江さん。この間、祝う会、行ってきただろ。練馬La毛利。

話がそれていますけど、、、出稼ぎの話は?

・その映画の農家さんも、冬になると山形から出稼ぎで東京などに来ていた。

建設現場とか?

・そう、肉体関係。

シツコイし、失礼。

・ごめん。そして、出稼ぎをしないで済むようにゴミ収集業をしたりもした。

うん。

・田中角栄、日本列島改造。

また、話がそれているんですけど、、、

・いや、まぁ、そうだね。つまりね、、、

つまり?

・俺たちは、今、第2種兼業農家になろうとしている、のかもしれない。

何?それ?

・社会、勉強しなかったな。第1種と第2種の兼業農家。

ああ、あったかも、、、

・オオザッパに言うと、農業以外の稼ぎが多い農家、ってことだ。

ホント、オオザッパですね。

・ま、どっちが多いかだけだと、オオザッパすぎるよね。確かに。

うん。

・費やしている時間というか、労力がどっちが多いか、も、考えたいよね。

どっちが効率よく稼げるか。

・いや、そういうことでもないけど、、、

いえいえ、大事だと思うけど、、、

・「主業農家」「準主業」「副業的」という分類方法もある。

そうなんだ。

・フルタイムの仕事を持ちながら農業をしているという人もいるよ。

いろいろですね。

・そうだね。農業と言っても幅が広いからね。

小さな畑で自分のうちの野菜だけ作っていても農家って言うの?

・「販売農家」「自給的農家」という分類方法もあって、売らなければ「自給的農家」だね。

分類方法も、いろいろなんだ。

・どうも、そうみたいだね。農林業センサスを見るとね。

それぞれに意味があるんだろうね。

・うん。ここ15年を見ると、農家総数は312万から215万に減っている。

そんなに減っているんだぁ。ショックだなぁ。増えていると思っていたんだけど。

・増えていると思っていたんだ。

だって、周りではなんとなくブームじゃない。芸能人でもやる人いるし、、、

・そうだね。テレビで取り上げられることも増えている感じするしね。

きっと増えていると思っていた。

・あらためて数字を見るとガックリだね。

でも、販売農家が233万から133万に減っているけど自給的農家は横ばい。

・で、専業農家も数は横ばい、って、意味がよくわからないなぁ。

減っているのは兼業農家、ってことですね。

・農業をやめて、稼げる仕事に移った。のかなぁ?第2種がかなり減っているもんね。

田舎を捨てて都会に出て行った、んじゃない。

・残念だなぁ。

そう言っても、その人にはその人の自由、というか、事情があるでしょ。

・そりゃ、そうだけど、、、どうすればヤメナイで済んだか、は、考えたいよね。

周りが助けてくれるとか?

・うん。うん。でも、助けるって?具体的には?

作業を手伝ったり、、、

・「援農」かぁ、、、まぁ、ちゃんと手伝える人ってそうはいないよね。

かえって足手まといかな。

・うん。

じゃあ、買い支えるとか、高くても買うとか、、、

・それも限度があるだろうし、そもそも農業以外で稼げれば稼ぎはあまり重要でない。

そうかぁ、、、

・そうなると、、、

なると、、、?

・渦潮。

(ノーコメント)

・ラーメン。

(ノーコメント)

・うん、考えるよ。

日本の農業の明日?

・いや、自分のことだよ。

・第2種兼業農家の我々がどうすれば農業を続けられるか、だよ。

でも、農業を続けることが目的じゃないでしょ。

・ま、ね。

利用者さんたちの自立とか、そういうことが目的でしょ。

・急に本質をついてきたね。

「本当に大事なことは何か?」とか、よく言うじゃん。

・そうだね。うん。本当に大事なことは農業を続けることだと思うんだけど、、、

その理由を述べよ、でしょ。

・緑を守らなきゃ。

そこをもう少し具体的に分かり易く。

・うん。では、「つづく」ということで、、、

しっかりしてください。

・はぁい。

(本名:石田周一)

いしだのおじさんの田園都市生活