第93回 田んぼ主義

2016.5.31
いしだのおじさんの田園都市生活

 

お疲れのようですねぇ。

・うん、今朝、ちょっと起きるの辛かった。

暑い日が続いたもんね。

・まだまだ、これからだよ。暑くなるのは、、、

やだなぁ、、、

・うん。暑いのもイヤだけど、冷房がイヤだな。俺は。

おじさんだね。

・ふん。イワズモガナ。でもね、今日のツカレは心地良いツカレだよ。

そうなんだ?

・うん。ここのところずっと田んぼをやっているんだ。

へぇ、田植えの準備だ。たいへんだね。いや、楽しそうだね、かな?

・そうなんだよ。田んぼに入っているとシャーワセ。なぜか、、、

田園都市生活ですね。

・まさに!ソレなっ!ってやつ。

でも、楽しんで頑張るのは利用者さんでしょ?

・もちろん、主役は彼らだよ。

でしょう?どうもそう思えないんだよね。石ちゃんが楽しくてやっているみたい。

・俺や職員が楽しいことが利用者にとって大事なんじゃん。わかってないなぁ、、、

そうかなぁ?ま、いいや。利用者さん、楽しんでいる?

・これがねぇ、見ていても楽しいんだよ。

例えば?

・Jさん、っているんだ。ジロジロファイブって呼んでいるんだけど。(バレバレ)

なに?

・サイボーグゼロゼロ9、って知らない?石ノ森章太郎。

あったっけ?

・そのゼロゼロ5に似ているんだ。ジェロニモ。

わけわかんない。

・巨漢で屈強。Jさん。

へぇ。そんなあだ名付けられて怒らない?

・気は優しくて力持ちだから、大丈夫。

そうなんだ。

・そして田んぼが大好き。いや、農作業が全部好き。

へぇ。よく働くんだ。

・昨日は延々と角材引きをしていた。

なんで角材なんか引くの?どんな角材?

・15センチ四方の2.7mくらいかなぁ。重たいよ。

うわ。

・田んぼの泥を移動するんだよ、地ならししながら。人間ブルドーザー。

なんか、酷くない?聞きようによっては虐待?

・そんなことないよ。俺、「ねぇ、疲れたでしょ、もう止める?」って何度も聞くんだよ。

へぇ。

・たんびに「ヤメナイ!」って、明確なん返事があるんだよ。

言わせているんじゃない?

・人聞き悪いなぁ。ホント、Jさんは田んぼが大好きで、パワフルで、スゴイんだぞ。

はい。

・で、なぜか「レンコン、レンコン」って言っている。

レンコンって田んぼで作るもんね。よく知っているねぇ。

・なぜ、知っているのかは謎なんだけどね。

聞けばいいじゃん。

・それが、聞いてもよくわかんないし、、、

そうなんだ。ほかにはどんな人がいるの?

・Kさんは俺より年上。シャカンヤを上手にやってくれた。

ナニ?シャカンヤって?

・左官屋だよ。

田んぼに左官屋が必要なの?

・畔塗りって言ってさ、畔に泥を塗り付けてダムを作って水持ちのいい田圃を作る。

そんなんだ?

・上手なお百姓がやるとホントにシャカンヤみたいだよ。クワをコテのようにしてね。

へぇ、Kさんは上手?

・Kさんは土建屋さんとかいろんな仕事を経験してきていて、身のこなしもいいんだよ。

スゴイね。

・草刈り機とかトラクターが好きでね、けっこう仕事を進めてくれる。

気を付けてあげてよ。

・そうだね。このあいだ田んぼでこけた。

えーっ、しりもち?泥だらけ?

・本人も笑っていたけどね。

そのKさんも優しい人なの?

・そうだよ。優しくてまじめな人が多いんだよ。我が社は、、、

いいなぁ。

・人生いろいろ苦労して優しくなっているんじゃないかなぁ。

うん。

・Kさんは山梨の保養所にいっしょに行ったことがあって、「住みたい」って言っている。

いいですねぇ、夢があって、、、

・夢に協力したいよ。

うん。他にはどんな人がいる?

・もう一人のKさんはね、ちょっと田んぼがイヤみたい。

そういう人もいるんだ?

・もともと神経質なところがあって、子どものときは土への拒否が強かった。

じゃあ、そもそも農作業が向いていないんじゃない?

・うん。心配したんだけど、、、畑ではよくやっているんだよ。

へぇ。

・器用だから苗の植え付けなんかスイスイだし、大根とかの泥を洗うのもOK。

へぇ、スゴイね。でも、田んぼは、、、

・今は拒否している。今は、ね。

そのうちOKになる?

・それは、わからないなぁ。期待はしているけど、、、

無理はさせない?

・ううん。かまわずツッコんじゃおうかとも思うけど、、、

それはヒドイ、それはない!

・思うだけでやらないから、、、気長にチャンスを狙うよ。稲刈りとか田んぼが乾くし。

チャンス、来るといいね。

・うん。彼、もしかしたら足が消える恐怖があるのかも。

足が消える???

・田んぼで足が泥の中に沈むじゃん。見えなくなる、を、消える、無くなると解釈する。

へぇ、そんなことあるの?

・あるみたいだよ。いや、むしろ、見えないのにあると思うほうが不思議でしょ。

そうかなぁ?いろんな人がいるね。

・うん。ホント、いろいろ。俺には、逆に同じような人ばかりいる集団のほうが不思議。

同調圧力?

・?ちょっとチガウかな?その日本語。

そうかなぁ?

・いよいよ今週末、田植えだよ。

いよいよ。

・準備も佳境に入っている。今日はホンジロ。

わかりません。専門用語。

・機械でね、田んぼをガラガラガラガラ。

よけい、わかりません。

・そして、明日はもう一度角材引き。

もう、なにがなんだか、、、

・で、明後日は筋引き。

・田んぼに田植えのための目印を付ける。

・田植えを楽しむため。

・ロープの前に一斉横並び田植えは俺は嫌い。自分のペースで植えるための目印。

石ちゃんの好き嫌いじゃないでしょ。

・いや、みんなマイペースが好きなはずだよ。

そんな、勝手に自分の好みを、、、

・そうじゃないんだけどなぁ、、、

、、、ま、いいや。

・(そう言いたいのはこっちだぜ。わかっていないなぁ、、、)

、、、

・とにかく、手植えを楽しんでもらう。みんなで楽しむ。

楽しんでね。

・うん。楽しむよ。

でも、なぜか、手植えの田植えが流行っているね。あちこちで、、、

・そんな感じがするよね。

農業は大規模化効率化しないと成り立たないんでしょ?

・そうだよ。さらに、田んぼは大規模化効率化しても儲からないよ。

なのに、手植え?

・うん、どうしてかなぁ?うん、原点回帰かなぁ、、、

どういうこと?

・土や水と一体化してこそ、生きている実感があるんだよ。

そんなもんかなぁ?

・いや、誰もがそんな感性と身体でなくていいよ。

田んぼなんて、少数派。

・でも、コメを全く食わない日本人はほぼいない。それこそ少数派。実はみんな田んぼとつながっている。

それは、屁理屈。

・うん、屁理屈かもね。でも、それでいいじゃん。田んぼ主義を貫くよ。俺は。

ま、それでいいよ。石ちゃんは、、、

 

石田周一

 

6月3日(金)と4日(土)の田植えに参加ご希望の方は連絡をください。