第90回 釜飯仲間・おこげのお話
2016.5.30神奈川・緑の劇場
農業の話?う~ん。いよいよ、民話・伝説の「かたりべ」を目指します。
2016年5月30日(月)の夜、野毛地区センターにて約1時間30分、お話をさせていただくことになりました。題して「野菜と民話と演劇をつなぐ「緑の劇場」」です。
「講師」などをさせていただくのは何年ぶりでしょう?
かつては、某大学農学部において、著名な教授や元教授の方々と、なぜか混ざってお話をさせていただいたこともありましたし、学校の先生方の勉強会にお招きいただいたことなども思い出します。若者たちの就労支援のためのプログラムで、演劇的なワークショップをさせていただいたこともありましたっけ。
~「地産地消」における神奈川の農業、利用者(消費者の立場から)~というあたりと、~日常生活における演劇の役割、市民こそ感動の舞台ができる、お芝居づくりの実際~などというあたりが担いどころだったかと思います。
で、今回いただいた(ぼーっとしている間に、たぶん自分で口走ってしまったのだろうけど)テーマは、それらを一体としてお話するようなことになってしまいました。
お話だけで、このテーマに挑むのは、気が付いたら、私には荷が重いので、これは、いつもやっていることですが、農産物の試食をしていただきつつお話をすすめたいと思うのです。
そこで、先にお話ししなければならないのは、かつてと、この数年で激変した「地産地消」の状況があります。
つまり、かつては、試食とか、食べ比べをしてもらうと、ほとんどそれで皆さんはビックリ!こんなに味が違うなんて!こんなおいしい野菜は食べたことが無い!という感じに盛り上がって、次の話に展開しやすかったのですが、今、けっこう神奈川・横浜の野菜のおいしさに気が付いている皆さんが増えているようで・・・。
へたをすると、私が知ってる○○さんのほうがもっとおいしい!なんてことになりかねないわけです。
そうなんです。以前のような話を、いまさらしてもなあ、と思うのです。
そんな中、興味深いイベントが行われたので覗いてきました。
2016年5月28日・29日の二日間、「横浜農業の彩典2016」が開催されました。主催はJA横浜、会場は、みなとみらい地区の横浜美術館となりグランモール公園美術の広場です。
横浜では、ベイサイドエリアに象徴される大港湾都市のイメージの一方で、370万人が暮らすにもかかわらず、市の面積の7.1%の農地があり、小松菜、カリフラワー、キャベツ、ほうれん草、枝豆などは、全国有数の生産量があるとのことです。
そして、「地産地消」をさらに広げ、都市農業の魅力、市民の暮らしに役立つ、横浜農業の役割を楽しく伝えたいという、主催者の熱意があふれたイベントになりました。
約1000か所の直売所がある横浜市の農家戸数は約4000戸(販売農家は2430戸)農業就業人口は5000人余りとのことです。
370万人が暮らす横浜市に5000人の農業就業者、です。
農業就業人口は、日本全体でも減少する一方です。田舎暮らしを志向したり、家庭菜園など、自ら農作物を育ててみたい人は、増えているようですが、自分のための作付と、人のための作付では、まったく違うことがある・・・・。
その話はおいといて。
JA横浜が、横浜南農協当時から、コツコツと積み重ねてきた「地産地消」の取組みが、いよいよ、組織全体をあげて、そして多くの協賛出店者、共催団体、後援団体を得て、「彩典」を催すようになったことを喜び、お祝いしたいと思います。
ごく最近、私が約30年近くになる「地産地消」の取組みを通して「師」とも「兄」とも思い、頼りにし、力をいただいてきた生産者の方々が、相次いで亡くなりました。JA横浜をはじめ、各地の「地産地消」の、今日の広がりを彼らは、どう見ているのだろう、と思います。
彼らの苦難の歴史の、私が知りえたのは、ほんの一部に過ぎないでしょう。でも、どこかで、お話する時もあるかもしれない。
ただ、今は、若い世代が目を輝かせて「地産地消」を広げよう、横浜の、神奈川の農業を多くの皆さんに知ってもらおう、としている姿に、もう、私がかつてお話したことの大半は、用が無いようにも思えるのです。
といいつつ、あえてタイトルだけは書いておきましょう。
○ 日本も、神奈川・横浜も、農業を必要としているのは、大切にしなければならないのは誰なのか?
○ 神奈川とその周辺、富士山から東、多摩丘陵から南、東京湾と相模湾に囲まれたエリアの食糧生産のこと。
○ 神奈川の農林水産畜産酪農の可能性
○ 生産者に寄り添い暮らすことのすすめ
この五月末の数日間は、けっこう目まぐるしい日々でした。
2016年5月26日・27日伊勢・志摩G7サミットが開催されました。そして、5月27日。現役のアメリカ大統領として初めて、オバマ大統領が、被爆地、広島を訪れ、原爆資料館、平和記念公園を訪問、17分に及ぶ所感を述べ、被爆者代表に話しかけ、ハグをしたことが報道されました。
また、1945年5月29日は、横浜に米軍の大空襲が行われた日です。「はまどま」のある宮元町・宿町・花の木町地域も、焼け野原になり、戦後長く米軍に接収されていたのです。近くの吉野橋が、焼夷弾の投下目標の一つだったそうで、特に吉野橋とその周辺は激しく燃えたとのことです。
近年、郷静子さんの芥川賞受賞作品「れくいえむ」をこの日に合わせて朗読してきました。横浜大空襲をはじめとして、戦争中、この横浜で暮らしてきた人々の暮らしと思いが克明に描かれた作品です。横浜大空襲の体験をした人々も、まだ幾人もこの地域にお住まいのようです。
現代と過去の出来事が錯綜します。しかし、幾年月を経たとは思えないほど、重なる出来事です。
身近かな人々が暮らしていた近い過去と、はるか昔々にさかのぼる過去の出来事。それは、民話や伝説となって、人々の暮らしの中に伝えられてきました。
しかし、戦後、急激に生活様式が変化する中で、民話や伝説の語りを聴くこともなくなり、その説話の数々は消えて失われようとしていました。
採話し、文字に残して下さった先達たちの労作が残されているからこそ、私たちは、再び、民話や伝説を語り伝えることができる、かもしれないのです。
5月30日は、時間の許す限り、川にまつわる民話を紹介できればと思います。
さらに、6月29日(水)
の川を考える会は、はまどまにて、郷土映像ラボラトリー・中川美帆さんの講演と、民族文化映像研究所の製作による記録映画の上映が行われます。
民話同様に、今、記録しなければ永遠に見ることができない、と撮影された、日本列島に生を得た人々の暮らしの記録です。
民話・伝説にしても、過去の暮らしの記録映像にしても、現代に生きる私たち、未来の世代の人々にとって、大切な、大切な財産のように思えるのです。
農業も、里山の生き物たちの営みもそうであるように。
食糧、生活資材の供給、命を育む農の過去・現在・未来
国と国の争い、戦争の過去・現在・未来
民話や伝説・映像に見る人々の暮らしの、過去・現在・未来
民話や伝説の「かたりべ」として暮らしてみたいものです。
(2016年5月29日記・おもろ童子)