第89回 里山シゴト

2016.1.31
いしだのおじさんの田園都市生活

そういえば、3週も連続で呑み会だった。帰って来なかった。

・人聞きが悪いなぁ。もう。帰ったじゃん。横浜の家だけど。

家がいくつもあるような言い方こそ、人聞きが悪い。

・ははは。でも、どっちの家でもイソウロウの身分だよ。

ははは。でも、それを利用して勝手なコトしている。

・ははは。勉強会だったんだよ「里山シゴト」の。

「里山シゴト」?

・うん、まぁ、そうだよ。

まず、わかりません。

・そうだろうね。関心の薄い人には、ねぇ。

はい。都会で仕事に追われていますから、、、

・正確には、「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」というワークショップ。

ますますワカリマセン。

・わからない人(わかろうとしない人)と話すのも、それはそれで、いいもんだ。

・青葉区や緑区には里山がたくさんある。三鷹にもそこそこある。

うん。なんとなく、あるよね。

・と、いうか、青葉区なんてもともと全部里山だった。

昔の写真、見せてもらったね。

・あれは、それでも1960年代後半だ。それよりさらに20年もさかのぼれば、、、

緑しかなかったんだろうね。

・70年前敗戦のとき、日本人の約6割が第一次産業についていたそうだ。

青葉区民のほとんどが農民だった。(「青葉区」は、無かったけどね)

・みんな里山でシゴトしていた。今、里山はわずかで、そこにシゴトはほとんどない。

でも、最近は里山への関心は高まっているんでしょ。

・うん。でも、「まち」のような経済活動の場にはしにくい。

うん。お店とかないもんね。会社とかも。

・そもそもそういうものが無いところを里山という。

ははは、そうだ。

・でも、そこには昔からのナリワイはあったはず。

農業のこと?

・うん。それだけじゃないけど、ね。いわゆる経済活動ではない人の営み。

・だけど、里山を残していくには経済活動が必要なんじゃないか?

それがシゴト?

・里山がシゴトの場になることで、そこにそれが存在している価値ができる。

そうなのかなぁ?

・うん、疑問でしょ?

いいえ、ただよくわかんないだけだけど。

・よくわかんないのは、みんなそうなんだよ。たぶん。

・まず、シゴトとはなんぞや?という話にもなる。

うん。お金を稼ぐことでしょ。

・ターンジュンッ。

ちがうんですか?

・ちがいません。ちがいません。しかし、もう少しだけ掘り下げようよ。

・俺はね、逆に、儲からなくてもいいシゴトを増やせばいい、って、意見した。

えー、儲かったほうがいい。

・いやいや、わかるけど、、、ほどほどの稼ぎで持続可能なカタチを探したい。まず。

非営利組織ってやつ?

・そう、開き直って言うなら、俺ら社会福祉はその活動で収益を上げる必要は無い。

開き直り過ぎ。

・でも、この際だから、極端な言い方も必要、、、

決めつけるのはキライなくせに。

・決めつけと、極端な表現は別もんだよ。誤解をする人がよくいるんだよ。

・俺らが畑や田んぼをしていると、職員の給料もそこで稼いでいると思う人。

うん。いるいる、と、いうか、働いているんだから稼いでいるんだろうと、思うよね。

・そうじゃないんだ。社会福祉では職員のシゴトは利用者さんの支援。ソーシャルワーク。

それで給料が出るようになっているんだよね。高くはないけど。

・ヒトコト余計だね。

ついでに言えば、本当に支援になっているかも疑わしい。

・なかなか本質をついているね。

石ちゃん、自分で言っていたじゃん。

・そうだったか。

支援のつもりで支援になっていないことがあるって、、、

・対人援助では、コネクリマワシての逆効果も多い。見ているだけでいいこともある。

なんとなく、わかる。

・そう、「支援しない支援」というのもある。

シゴトをサボる口実みたいにも聞こえる。

・ははは。いや、上手にサボることも大事。

ゴマカシの上のさらなるゴマカシ。

・また、支援をしようとする人に支援が必要なこともある。

なんとなくはわかる話、かも。ボランティアが生きがいの人とか、、、

・そう、誰かを支援することがその人自身の自分の支援になっていることもある。

うん。

・で、里山の話からずれてきたようにも思うけど、、、

ずらしたのは石ちゃん。

・ははは。でも、通じるようにも思える。

そうかなぁ?

・今はシゴトの話。利用者さんと我々のシゴトは畑や田んぼ。

それが「里山シゴト」?

・たまたま、というか巡り会わせで里山にある畑と田んぼを借りた。

巡り会わせ?偶然?

・俺にとっては必然。

どこかで聞いたようなセリフ。

・それはともかく、この活動はそれが収益を生まなくても成立している。

ヒラキナオリですね。利用者さんに還元するものが無くてもいいわけじゃないでしょ。

・それはそうだよ。だから6次産業化とかなんだとかいう話もしているじゃん。

聞いたよね、確かに。スイートポテトを値上げするとかしないとか。

・そうだった、ね、うん。

社会福祉はあまりにも儲けることに疎いもんね。

・でも、彼らがシゴトをすることを優先するという考えもある。

その日本語はよくワカラナイ。

・彼らは数字を優先しない、あまり、、、働いていて楽しいことがいちばんと思っている。

みんながみんなそうではないでしょ。

・ま、それぞれ、いろいろ、だけどね。

カネカネ言う子もいるでしょ。

・まぁね。でも、農耕が好きなる子たちは、やっぱり農耕そのものが好きななんだよね。

石ちゃんみたいじゃん。

・俺が代表かいっ?

ま、それはいいとして、、、おカネ的にショボい「シゴト」でどうするの?

・いやぁ、そもそも世の中がカネカネ言い過ぎなんだよ。金が無くても豊かに暮らせるよ。

はいはい。(やっぱり、断然金があったほうがいいと思っているから、不満げな返事)

・彼らがシゴトにやりがいを見いだして、それで日々が充実していればいい。

ずいぶんアイマイな感情論を持ち出しますね。

・そうかも。活動の良し悪しを示す基準がはっきりしないんだよね。

おカネという数字にするとわかりやすいけど、、、

・だから安易に数字化したがる。もっと見えないところを見なきゃ。

・数字じゃないのが社会福祉、というか、生産効率を上げると排除がおこる。

排除?

・生産に追われると生産性の低い人を排除したくなる。

そういうこと、あるの?石ちゃんのとこでも?

・それは常にあるよ。利用者の能力差は著しいし、シゴトのジャマする人もいるからねぇ。

そうなんだ。

・よくシゴトする人だけ集めたらスゴイよ、きっと。

でも、そういうことはしないんでしょ。

・今のところは、ね。排除はしないで、しっかり働いてもらうようにしていく。

鍛えるわけだ。

・いや、「支援」だよ。

はいはい。また、話がズレてきているようだけど、、、

・どうしてもズレるよね。でも、このズレもなんか大事な気もする。

またまた、ヒラキナオリ。

・ははは。今回、こんな感想を寄せてくれた人がいたよ。

「サラリーマン的な発想、つまりすぐ結果を求める、コストを最優先する、いいものより売れるものを作ろうとする考えでは「里山」を仕事することはできないということを思い知らされました」って。

なるほど?

・そして、こんな人も、

「色んな素材をフラスコに入れてシャカシャカ、ブレンドして、さてどんな科学反応が起きるでしょう!」(化学かな?)

予想外の展開になる?

・みなさん、里山を大事に思っている、保全したいと思っていることはマチガイない。

そりゃそうでしょ、だから、集まっているんでしょ。

・でも、予想がつかない。ズバリ、これだという処方箋や方程式があるわけじゃない。

逆に、そんなものがあったらオモシロくないんでしょ。

・そうだよ。混沌としているからオモシロい。

でも、話をまとめていくのはタイヘンそう。

・まとまらなくてもいい、と、俺は思っている。

またまた、無責任、ヒラキナオリ。

・で、あえて「儲からなくていい」なんて言っている。

意地悪だね。

・いや、社会福祉という弱者の側のゴマメのはぎしりだよ。

よく、わかりません。

・勉強会は机の上で言葉を動かしている。

いいじゃん。

・もちろん、悪いなんて言っていない。でも、俺はふだん現場で身体を動かしている。

ゴクロウサマです。

・この両方があって、言葉は混沌で、行動はまとまらなくても収斂はする。

行動も混沌のようにも見えるけど。

・でも、一個の身体が一個の動きしかできない。

まぁ、ね。

・現場と机上が両方あって楽しくなってきた。

そして、お酒も飲めるしね。

・えへへ。

 

(石田周一)

いしだのおじさんの田園都市生活