第86回 釜飯仲間・おこげのお話

2016.1.1
神奈川・緑の劇場

=神奈川野菜の食事会・皆様に支えていただき100回目を迎えます。=

70年前、日本人の95%は、農林水産業に従事するか、従事する人の家族でした。
今、日本人の95%は、この国の食糧生産と自然環境保全を5%の人々に委ねて暮らしています。

山のこと、森のこと、川のこと、海のこと、そして田畑のこと。

かつては、あたりまえに体験しながら知識とワザと経験を身に着け、次の世代に伝えてきたことが、わずか70年の間に、日々の暮らしから遠のいてしまいました。

人が、人として生きて行くために、かけがいのないこと、数千年の年月を経て伝承されてきたこと、一番大切なことを、私たちは失おうとしています。

直接、従事している、いないに関わらず、自分の問題、自分の家族の問題、子孫の問題としてとらえたい、と考えて、「野菜市」「食事会」「農作業体験と生産者訪問」を重視して取り組んできました。

神奈川で暮らす私たちの身近な季節の味、なるべく農薬に頼らず生産した味、交流できる生産者が生産した味を知り、日々の暮らしに活かし、利用の輪を広げて欲しいと願ってきました。

2016年1月30日(土)「神奈川野菜の食事会」が100回を迎えます。丸10年、積み重ねることができました。

なぜ神奈川野菜の食事会なのか、あらためてポイントを記しておきましょう。そして、多くの皆さんの支えによって100回を迎えられたことを、いよいよ「力」に変えていきたいと思うのです。里山に学び、里山を暮らしに活かす「力」です。

10年前、神奈川野菜の食事会を始めた当時は、「地産地消」という言葉は、まだ一般的ではありませんでしたが、「地産地消」は、バブル景気がはじけ、失われた10年と言われるようになったころには、経済的な自立に迫られた地方の人々から起こり、やがて全国に広がっていきました。

自らの地域を見直した時、いったい地元に何があるのか、何が魅力的なのか?山であり水であり、山林であり、田畑でした。祖先から受け継いできた食文化や、自然素材を活かした工芸などのワザでした。川が流れ、海に注ぎ、豊かな水産資源が自分たちの目の前にありました。 何も無いと思っていた地元にあった魅力的なモノとは、見慣れたモノ、当たり前にあるモノだったのです。

流通手段と保存技術の進歩は、日本中はおろか、世界中からの食糧調達を可能にし、同時に世界第二位に上り詰めた経済力によって、国内産よりも廉価に、大量に、日本に食糧が集まり、大量に廃棄し続ける、私たち、日本人の暮らし方、食べ方になったのです。

そして、地元のモノは取るに足りないもの、無くなってもかまわないもの、そんな時代の風潮の大波を最も強く激しく受けたのが神奈川の農業でした。

ビルを建てればいいじゃんか?
大根作っていくらになるのよ?駐車場にしたら?
“神奈川なんか”で、何で農業やってんの?
え~?神奈川の米なんて大丈夫なの?食えんのか?

自然環境を破壊し、汚染し、生き物の棲みかを奪いながら、そこから収穫したり、採取した食べ物は食べたくないという時代。美しい自然の残る海外からの食べ物のほうが安心という時代。

金(だけが)欲しくて農業をやるんじゃない!
金(だけ)でしか物事の価値を考えられない世の中で、金(だけ)では得られない価値が確かにある。

「地産地消」にこそ、人の暮らしの本質があると立ち上がった若者たちが、神奈川にいました。40年も以前のことです。「身土不二」「三里四方旬の味」古来から伝わる言葉もよりどころに、神奈川で生産する者と、利用する者の関係を築くことが大切だと、身近な「産直(産地直送)」を始めたのです。

農産物にとどまらず、畜産・酪農・水産・加工食品と「地産地消」の輪を広げていきました。画期的な取り組みだとして、やがて農協中央会(現・JA)やNHKからも注目され、「日本農業賞・特別賞」を受賞するに至りました。いわゆる消費者が参加した取組みが、日本農業賞を受賞した最初の事例となりました。

今、神奈川県内各地の農業は、多くの皆さんの注目を集めています。横浜では、飲食店のオーナーが連携して生産者とのネットワークを作り、横浜産の野菜を素材にしたメニュづくりに力を入れています。藤沢や相模原では、神奈川産の大豆を作ろうという市民が輪を広げています。

厚木の直売所では、「地産地消」の料理教室が人気ですし、横須賀の直売所は観光バスのコースにも組み込まれています。秦野や伊勢原でも都市住民を受け入れて農業体験、農業塾など熱心です。

このような、神奈川の農業と都市住民の交流は、ますます盛んになって欲しい。

40年前には、いや、10年前ですら考えられなかったことです。

今では、「神奈川野菜の食事会」に限らず、「はまどま」での企画には「神奈川野菜の食事付き」や「神奈川野菜を利用した」企画も数々開いてくれる仲間が増えました。

神奈川の味にふれる機会が「はまどま」だけでも増えて、多くの皆様に、それらの企画にも参加していただき、楽しんでいただければと思います。

さて、2016年のコラム「釜飯仲間~おこげのお話~」は、“釜飯仲間”の皆さんにも執筆していただきたいと思っています。

「はまどま」として、活動をはじめて8年目に入りました。「はまどま」を活動拠点に、ワザの交換、考え方の交換、なにより心の交流、仲間づくり。

執筆する仲間の輪が広がって、メルマガの読者の輪も広がって、NORAの仲間の輪が、どんどん、どんどん広がって欲しい。会員になる人が増えてほしい。

2016年も、どうぞよろしくお願いします。

(2016年1月1日記・おもろ童子)