第87回 スウィートポテト
2015.12.1いしだのおじさんの田園都市生活
スウィートポテトの話の続きでしょ?
・そうだったっけ?
商売の話、稼ぎの話、お金の話、でしょ?
・そんなぁ、ヒトギキの悪い。6次産業化の話、だろ。
この前は、ショーバイも大事、みんなショーバイが下手、って言っていたけどね。
・この前はこの前。だけどぉ、、、
エラソーに言っていたのを反省?
・すんません。
とりま、許す。
・でも、あくまで目標は、利用者のため、地域のため、だよ。お金はあとから。
美味しいもんの話。美味しいお酒の話、なんじゃないのぉ?
・まぁ、それは認めざるを得ないけど、、、
サツマイモ、豊作なんだって?
・うん。先週掘り終えて400㎏以上のストックがある。
スゴイねぇ。400㎏の芋って、どういうこと?
・すでに100㎏近くは売っているんで、だいたい500㎏とれている。
スゴイスゴイ。
・今年はホントに豊作で、苗1本に1㎏以上、2・5㎏とかもあった。
へぇ。
・植えた苗が400本ほどだったから、うん、やっぱり1株1㎏以上。
それって、どれくらいの畑?
・単純に、苗400本の畑は120mくらいだよ。
ちょっと想像つかない。
・実際の畑では25mくらいの畝が6本。畝のあいだが90㎝くらいだから・・・
25mプール?
・25mプールの横幅は12mくらいだから、その半分強かな。
意外と狭いように感じるね。そこで500㎏の芋かぁ。
・サツマイモの反収(1000㎡収穫量)を調べたら、1.5~2tだから、まぁ、豊作だね。
よかったねぇ。でも、ストックが多いって、それ、売れていない、ってことじゃん?
・そうとも言うなぁ。いや、いや、売れてはいるけどペースが遅い。
ダメじゃん。工夫しなきゃ。
・言ってくれるね。でも、そうなんだ。米と違って保存は春先までだから、ね。
これから1ヶ月に100㎏くらい売らなきゃ、って計算?
・そうなるね。そして、米と違って毎日は食べない。
と、いうか、たまにしか食べない。ほとんど食べない。
・うん。最近の子どもはサツマイモなんか見向きもしないよね。
美味しいのにねぇ。羊羹にしてRちゃんの弁当に入れたら、周りの子たちに取られたって。
・そりゃ、好評で良かった。
みんな、自分で作ればいいのに。
・そうだよ、レシピを広めて、芋を買ってもらってよ。
自分でやるのはキライなんじゃない。作ってあるから、食べたくなる。
・ま、そうだな。じゃ、羊羹を売ればいい。Rちゃんに学校でショーバイさせるか?
そんなことしたら退学だから。
・そうだね。ははは。せいぜい物々交換か。ははは。
芋はダイエットにもいいんだよ。
・知っているよ。米の3分の1ほどのカロリー。でも、羊羹は砂糖も入れてるでしょ。
ま、ね。
・スウィートポテトもやるでしょ。家でも。
お祭りで人気だったのと食べ比べる?
・祭りは終わってしまった。来年まで食べられない。
もう、作らないんだ?
・祭りだから作ったんだよね。いつも作るような体制はないんだ。
その体制を作りたいんだね。石ちゃんとしては?
・そうだよ。もちろん。
作れば、いいじゃん。
・そうだけどね、トップダウンでやるんじゃなくて、みんなをその気持ちにさせたい。
トップ?だったっけ?
・いや、俺は今職制上はトップでもなんでもないけど。
でしょ。
・そこにこだわらなくてもいいじゃん。
こだわるよ。
・はいはい、頑張ります。
頑張れ!
・でも、農耕に関しては実質俺が引っ張る役だよ。
でも、一人で引っ張りたくはない。
・そうだよ。組織に肥しをやって耕して、畑と同じように地力をつけたい。
地力が無いの?お宅の組織?
・そういうわけでもないけど、、、地力が引き出せていないかも、だね。大きすぎて。
畑は地力がついている?
・それも時間がかかるよ。サツマイモは地力がなくてもできるからよかったけど。
救荒作物、青木昆陽でしょ。
・知ってるんじゃン。
何度も聞かされたからね。
・まだまだ地力がついていないから。白菜やブロッコリーはイマヒトツ。
でも、このあいだの立派だったし、美味しかった。
・そういうのがたくさん取れているわけじゃない。でも、去年よりはゼンゼンいい。
肥しをやって、耕して、ですね。
・そう、それをできれば効率よくやりたい。かつコスト低く、ね。
生ゴミ堆肥?菌ちゃん野菜?
・うん、うん、その通り。
今は、組織を耕す話。
・そう。昨日、厨房の若い女の子を畑に連れて行った。初めて、だよ。
職員?
・そうだよ。初めて大根を抜いた、って、はしゃいでいたよ。
石ちゃんもはしゃいだ?
・ま、ね。
若い女の子だもんね。
・いや、そういうことじゃなくて、厨房と畑を結びつけるためだよ。
はいはい。
・厨房の大将は、頑固おやじで料理人だからいい野菜を使いたい。
そりゃ、当たり前でしょ。
・でもね、百姓は形が悪くて売れない野菜や売れ残った野菜を美味しく食べる。
それも、百姓にしてみれば当たり前だね。
・その二つのアタリマエが今は対立でもないけど、ズレテいる。距離がある。
なるほど。
・グリーンのときは、お歳暮とかも芋のパイとか自作していた。
いいですねぇ。
・それで、厨房の女の子に畑を見てもらって、、、
売れない野菜を売り込んだ、って、わけね。とりま。
・とりま、そういうこと。厨房があって畑があって、これはうまく発展させたいじゃん。
いい野菜がとれていれば問題ないんじゃない?
・それも、そうとも言うけどね。藤が丘にリバイブレシピ・テンゾっていうお店がある。
石ちゃんの地元。
・そう、俺、よく買っている。地元人気イタリアンの系列の惣菜屋さん。
それが?
・農家で売れ残って捨てるような野菜をリバイブさせる、って言うコンセプト。
へぇ。そういうお店もあるんだぁ?
・実際は、かなりオシャレなでスノッビーなお店。
ふぅん。
・昨日はね、女の子には畑に勝手に生えている菜っ葉も見せたよ。
ああ、あれね。
・そう、俺がときどき持って帰って来る大松菜とか、、、
なんなの?あれ?
・コマツナの花が咲いて種が落ちて畑に自生している。
なんか、苦いし、スジバッテいるけど、、、
・でも、柔らかいところをいいとこどりすれば美味しいじゃん。
石ちゃん好みかもしれないけど、、、
・それこそ、リサイクル野菜として食べる分にはじゅうぶん。栄養もあるよ。
なんかなぁ、、、まぁ、ただだっていうのはいいけど、、、
・で、そろそろまたスウィートポテトの話。
お祭りで大人気!あっと言う間の完売!それなら、値上げだ!でしょ。
・またぁ、、、そう言うとアコギな奴に聞こえるじゃん。
値上げしないで、いつのまにか3個入りを2個入りにするとか。
・3個でも巧妙に大きさを変えちゃうとか、、、
ははは。
・いや、目的をはっきりさせた方がいいねェ。
そりゃ、そうだ。
・利用者さんの稼ぎ、それはまずは大事。
でしょ。
・でも、仕事を創る、ということも大事なんだよ。
ふうん。
・養護学校卒業後に施設で働きたい人、や、施設を頼らざるを得ない人がたくさんいる。
一般就職はなかなか難しい、からね。
・そこを解決すべきという話もいろいろあるけど、それは置いておいて。
でも、大事な話でしょ。
・いずれにしろ、卒業後の彼らを受け止めねばならない。
で、仕事が必要?
・そう、だから6次産業化なんだよ。畑から加工場、そして飲食店。
みんなに役割があるようにしたいんだ。
・そういうこと。「総活躍社会」だよ。
そういう掛け声はキライだったんじゃないっけ?
・ま、ね。なんか裏がありそうで、、、本当にみんなを大切にするとはトウテイ思えない。
一億総活躍、って、フレーズがねぇ。勝手に巻き込まないでよ、って思うし、、、
・(民間議員の)菊地桃子は「ソーシャルインクルージョン」だって、言ったんだよ。
どういう意味?
・社会的包摂、って、いってね、人を排除しない社会ということかな。
ふうん。
・マイノリティや生産性の低い人たちも含んで社会が成り立つ、かな?
スィートポテトはその手段?
・うん。芋作って、加工場で調理して、カフェとかで提供する。
それぞれに働き甲斐のある場にする。
・利用者さんが楽しく働く場を広げて、で、美味しいって笑顔も増えれば、ねぇ。
それが、ソーシャルインクルージョン?
・ま、そのカタカナは目的でなく結果であってほしいとも思うけど。
? よくわかんないけど。
・ソーシャルインクルージョンのためにスウィートポテトがあるんじゃなくてぇ
スウィートポテトを作ったらソーシャルインクルージョンになった、ってこと?
・うん、そしてソーシャルインクルージョンは理念でなく原則。
わざと難しく言っていない、ですか?
・そういうつもりは無いけど、理念だと実現しなくてもいいことになる。
原則だと、ま、アタリマエにやること、かな?
・でも、目標でなく結果。
???
・菊地桃子頑張れ!
???
・スウィートポテトは、彼らの存在価値、仕事の存在価値、農の存在価値、だよ。
ずいぶん、オーゲサなスウィートポテト。
・ははは、NORAの野菜と果物のスウィーツバイキングもすごいらしいよ。
作り方や、売り方を、なんとかしないとねぇ。
・工夫の余地がいろいろあるってことだよ。
早く、それをやればいいじゃん
・ま、ね。
ねぇ、、、そうだよ。芋だけたくさんとれても、、、
・売れなきゃ、食べてもらえなきゃ、寂しいよね。
芋がカワイソウ。
・だから、商売!
毎日、バザーをする!
・バザーぁ?
フェスティバル、でもいいよ。
・でも、ねぇ。お祭りの勢いで売っても、ねぇ。
売れればいいじゃん。
・でも、ねぇ。福祉施設のお祭りでは、現状では絶対高く売れない。
そうかぁ。
・売値が安ければ、利用者さんの工賃は上がらない。労働の価値も上がらない。
安くても、たくさん売れれば、トータルで上がるんじゃいの?
・そのためには、働かなきゃならない。
たくさん働けば、トータルで給料は増える、、、
・そういうの「合成の誤謬」というらしいよ。
どういうこと?
・う~ん、その話は、また、別の機会に、ね。
石田周一