第85回 民として
2015.9.29いしだのおじさんの田園都市生活
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
・ふぅぅ。
どうしたんですか?いきなり。
・いや、日本国憲法前文。
はい。
・ともかく、読んでみよう。
読むけど、、、
・解釈、いろいろ。議論、いろいろ、だよ。
うん。でも、ちょっと読んだだけでは解らない。
・よ~く、読む必要があるんだろうね。ちゃんと意識して読んだことがない。
そうですねぇ。
・なんでかなァ?
そもそも、1行目からつまずく、、、
・正当な選挙がなされていない。1票の格差は違憲状態。政権の得票数も。
いや、選挙自体行っていない。
・ダメじゃん。でも、俺も投票した人が当選したことがない、ほとんど。
日本国民になっていない。
・アナーキストだ、俺は。
すると、「代表者を通じて行動」する気にならない。
・でも、「諸国民との協和」や「自由のもたらす恵沢」は生活必需品。
「再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」も大事。
・なのに、「戦争法案」が成立してしまった。
反対派の石ちゃんとしては、トウテイ許せない。
・別に、オレ、反対派じゃあないよ。
えっ、でも、デモに行っていたじゃない。何度も。
・モチロン、賛成じゃあない。反対を表明した。でも、「派」ではない。一個人。
うん。派にされるのが好きじゃないんでしょ。一個人ねェ。
・うん。コールもね、一応みんなといっしょにはするけど、イゴコチ悪いこともあったよ。
そうなんだぁ。まぁ、アマノジャクだもんね。
・うん。最後は「アベハヤメロ!」って声出していたけど、最初は攻撃的でイヤだった。
甘いね。やっつけなきゃ。
・そうだけど、大勢で攻撃するのはイゴゴチ悪い。
それでくたばるやつじゃないのにね。
・そりゃそうだ。ごまめの歯ぎしり、だよね。
どうなればイゴコチガいいのかな?
・賛成と反対のシロクロ対立でなく、多様な意見とじゅうぶんな話し合いかな。
そんなこと、無理でしょ。メンドウクサイし、結論が出なくなる。
・うん。どこかでは結論を出す必要があるだろうから、それはそれでいい。
そんな、悠長な。
・でも、今は逆に結論が速すぎるんだよ。
そう?
・結論を決めてから考え始めているように見えるよ。
うん。結論は感情的に決められている。
・それな。っていうか、感情も大事だし、怒りも大事だとは思う。
思うけど、けど?
・賛成でも反対でも、相手をコキオロスやノノシルは、それこそ感情的にイヤだね。
ネットも相互の意見交換より一方的な攻撃になりがちだしね。
・そうなんだよね。あれが一番イゴコチが悪い。平和じゃないよ。
国を守ろうとか、平和だとか言いつつ、内輪もめ。
・そうなんだよ。ピースじゃない。
他人より家族に腹が立つのと同じ、かも、、、
・どういうたとえ話ですか。可笑しいけど笑えない。敵は身内にいる。
ははは。
・でも、本当に笑えないよ。戦争って、国を守ることではなく国に攻撃されることだよ。
?
・権力は国防を名目により民を抑圧し支配する方向に動く。
そうなんだ?
・今までの戦争ではそうだったんじゃないか。国から民への攻撃が激しかった。
いつもツライ目に合うのは民。
・そう。だから、もしも国と国に戦争が起きたら、民は連携して権力と戦うべきかも。
う~ん。あまり、聞いたことがないけど、、、
・国連前でアメリカ市民が安倍への抗議デモという記事があったよ。
そうなんだ。
・「市民として権力の暴走に抗議する」って。
アメリカの良識かな?
・うん。アメリカという国は戦争を公共事業とする困った国ではあるけど。
いろいろステキなところもある。
・アメリカという国は好きにならないけど、市民や文化には好きなところがたくさん。
それでいいんだね。
・国というか、権力には警戒していきたい、ということだね。
じゃあ、前文の最後にある「国家の名誉にかけて」というのにはNG?
・うん。「全力をあげて」というのも、そんなぁ、って感じ?
ここはしっくりこない表現だね。
・そんな気にさせる国家であってほしいとは、思うけど、少しだけ。
でも、そうなったらそうなったで、自分だけシラケるんでしょ。
・なんでわかるの?
アマノジャク、お見通し。
・まぁ、いい国とか、いい制度、なんて無いんだよね。マシな国くらい。
誇れるような国じゃなくていいの?
・いや、マシでじゅうぶん。
ふうん。
・なんか、建設的じゃない話になっちゃった、ね。
畑は?
・おい、いきなり足元の話になったな。
だって、そこが基本でしょ。
・稲刈りが楽しかった。今まででイチバンかも。
へぇ。
・人手が足りなくてね、あんなに這いつくばって鎌を動かしたのも初めてかも。
そうなんだぁ。
・俺、実はそんなに経験豊富ではない。ガッツリ作業したことがない。
なにやってんの?
・いつも人を動かしているんだよ。利用者さんだったり、ボランティアさんだったり、俺は現場監督みたいに自分では作業をしない。
なるほど。
・でも、今回は動かす人がいなくて、ひたすら自分で動いていた。
ゴクロウサマ。
・それが、イチバン楽しい。泥の上で無心になった。
よかったね。
・うん。気持ちよく疲れることができたよ。
お米が楽しみ。
・うん。でもね、鎌持って、一株ずつ刈っているとピースな気分になるよ。
そんなもん?
・自分の食べるものを作るレベルで身体を動かしていると、これはピースだよ。マチガイない。
国会には届かないね。そのピースは。
・どうにかしたいね。俺としては。
無茶でしょ。
・あまどぅりま、だよ。
(石田周一)