第48回 市民皆農
2012.8.31いしだのおじさんの田園都市生活
・ 雨が降りませんね。
乾涸びているよね。
・ 畑も大変でしょ。水をまくの?
いや、まける所はいいけれど、そういう設備の無い畑の方が多いよ。
・ そうかぁ・・・
それに設備にもよるけど、そんな大した量はまけない。
・ 水道代もかかる。
俺のお師匠さんは「人間のまく水なんてたかが知れている」って言っていたよ。
・ やっぱり、雨が大事。
人間もできるだけのことはするけれどね。
・ できるだけのことをする、か・・・
なに?
・ いや、最近、していますか?
ええっ?そういう振り方ですか?
・ そう。このコラムも、どうもね。
・・・スミマセン。んでも・・・
・ ?
読みやすくて悪くないという評判も・・・
・ 理事長さんの格調高いコラムに較べると、ねぇ。
そりゃぁ、較べちゃいけませんよ。
・ 少しは見習ったら。
そーいう言い方、傷つくなぁ
・ 読んだ本の紹介してみたら。
んー
・ 『市民皆農』って、読んでいたでしょ。
そうだね、俺が前々から言っていることだよ、ね。
・ いしちゃんが言っていても本にはならないけどね。
・・・
・ でも、コラムで繰り返し言えば、それはそれで、なにかが進むかもね。
そうかいのう。
・ そうやってチャラけるから、ダメなの。
すまん、すまん。あの本はなかなかカゲキだったよ。
・ なんか飛んでくるような?
中島正さんは『都市を滅ぼせ』という著書もある過激派だよ。
・ どういうこと?
都市があって、不耕貪食の輩が成立するから人間社会が悪くなる。
・ 「不耕貪食」って?
耕さずに貪り食うということ、安藤昌益のことばだよ。
・ 安藤昌益?
江戸時代のイマジン。
・ はっ?
えっ?
・ ん?
俺の本読んでいないの?イチバンいいところ
・ 読んだけど、忘れちゃった。
不良在庫をなんとかせねばならん。
・ それはともかく「市民皆農」は?
俺の本を作ってくれた大江さんの本にも出てくるよ
・ ちょっと恐い言い方じゃない?
まぁ、「国民皆兵」を思い出しちゃうかもね。なんとなく。
・ アリエナイでしょ。
でも、女子の大好きな韓国は「国民皆兵」だよ。現実だよ。
・ また、話がそれたかも・・・
うん。大江さんの本には谷っ戸ん田もくるんだよ。188ページ。
・ へぇ、そうなんだ。
3万部近く売れたからね。谷っ戸ん田もそれだけ有名に・・・なっていないか。
・ そんなに売れたんだぁ。『市民皆農』は?
部数はともかく、山下惣一氏と中島正氏の対談なんだけど、2人の年齢を足すと160歳だぜ。
・ どんな人なの?
2人とも百姓で、ますます元気に「百姓魂」を論じている。
・ そうかぁ、「引退」とかなさそうだもんね。
俺もそうなりたいよ。いや、そうなるぞ。
・ つきあいきれない。
そうだよな。あなたはいかに不耕のうちに貪食するか、という感じだよね。
・ 悪い?
いえ、それはそれで立派だけど・・・
・ で?
山下氏と中島氏は百姓の側からの市民皆農のすすめだけど、大江氏は市民の視点。
・そもそも百姓であった人と、百姓にアコガレテイル側のちがいかな?
でも、そのカキネがなくなりつつある感じがする。自給して生きるということ。
・ 自分で作った作物は美味しいもんね。
うん。そんな単純なこと
・ 単純?
いや、することは単純ではないかもしれないけど、生き方としてシンプル。
・ そうかも。
そこにたどり着いたとき、いろいろ見えてくる。
・ 例えばぁ?
うん。その話はまた次回にしようか、ね?
・ えー、今回も内容が薄かったんじゃない?
いやー、夏バテですよ。私も・・・
・ 呑みすぎじゃなくて・・・
いや、いや。昼間、汗かいてちゃんと夏バテしています。
・ それは、それは・・・
スミマセン。
文献だけ挙げておきます。
山下惣一・中島正『市民皆農』(創森社)
大江正章『地域の力』(岩波新書)
石田周一『耕して育つ』(コモンズ)
(いしだのおじさん)