石田のおじさんの田園都市生活

第47回 夏草

2012.7.31
いしだのおじさんの田園都市生活

夏は草取り

・ 「上農は草を見ずして草を取る」と言うんだよ。
また、さっぱりわからない話から始まるんですね。
・ 「中農は草を見て草を取る」
ウスターは?
・ 言いますねぇ
トンカツも・・・
・ 言いすぎ。
ケチャップも・・・
・ おいおい。
ごめん。(だって、メンドウクサイんだもん)
・ そして、「下農は草を見て草を取らず」だ。
で、どういうこと?(って、聞けばいいわけ?)
・ 草が生え始めるときにササッと土をひっかいてやれば草は生えない。
それが上農?
・ ま、別に上中下のランク付けをしたいわけではないんだけど。
ランク付けは好きじゃない?
・ 墓穴を掘るのが見えているからね。
ふふ。
・ とにかく、楽に草取りを進めたいんだよ。
それはそうですね。
・ 「草を見ずして草を取る」ができたら、と、思ってやっているよ。
どんな感じなのかしら?
・ 想像してみてよ。イマジン・・・目に浮かぶ?
ごめん。全然想像できない。
・ 小さな草がひっかかれてしなびる姿。
うーん。
・ あるいは鍬で土をかけられて埋まる。
うーん。
・ 「中耕除草」と言う。
ううーーん。草の生えない畑にしたいわけね。
・ 雑草が少ないほど優秀な畑なんだよ。普通は、ね。
そうか? まぁ、そうでしょうね。
・ というか、草が少ないほどその後の効率もいい。
ふうん。
・ 生えてしまってから取り始めるとやたら時間がかかる。
そりゃ、そうかも。
・ 草が大きくなれば力も必要で・・・
うんうん。
・ 言葉で伝わるかな?このたいへんさ?
たいへんなの?
・ ときどき、そういうことがあるよ。谷っ戸ん田でも。
田んぼで?
・ 田んぼでも、畑でも、山でも、だよ。
そう?
・ 例えば、田んぼでドジョウやコイで草を取る方法がある。
合鴨は聞いたことがある。
・ 理屈は同じで、泥を混ぜていれば草は生長しない。
そうなんだ。
・ ついでに、ドジョウやコイや合鴨は食べられる。
一石二鳥。
・ 「一鳥万宝」と古野さんは言っている。
だれ?
・ 福岡の古野隆雄さん。
オトモダチ?
・ いや、お友達ではないけど、お宅にお邪魔したことはあるよ。
呑んだ?
・ そりゃぁ、もう。昼から合鴨をつまみに、ね。
昼から呑むのが上農なの?
・ あたた。まぁ、他にもお客さんがいたからだよ。留学生とか・・・
なんだかねぇ。
・ いや、古野さんは世界的に有名なんだよ。ダボス会議にも参加している。
・・・
・ 話がそれたね。谷っ戸ん田の話だった。草の話だった。
ぜんぜん、有名じゃない谷っ戸ん田。
・ まぁ、ね。とにかく、世界中で夏は草との戦いだよ。
世界中ですか?
・ いや、まぁ・・・
草は敵ですか?
・ いや、撲滅すべき敵ではない。役にも立つ。
雑草も?
・ 例えば、雑草を抜いて作物の根元などに置いておくと土がよくなることもある。
堆肥にもなる。
・ まぁ、堆肥にする場合は種のついている草は要注意だけどね。
堆肥を撒いたら同時に雑草の種まきになる。
・ そういうこともあるから、ね。
このあいだ、自然農の本、あったね。
・ うん。「耕さず、草を敵とせず」というやつね。
どうなの?あれは?
・ まぁ、草を全て排除しようと考えなくてもいいとは思うけど・・・
けど、なに?
・ 草と共生できる環境を作るのも難しい。
自然農には、それはそれで技術がいる?
・ そうだね。やってみたいけどね。
なんか、いろんな生き物がいるのはいい感じ。
・ そうなんだよ。でも、普通の農法と両立とかミックスはなお難しい。
どちらかを選ばないとならない。
・ そうなんだよ。有機農法ともまたちがうからね。
一般ピープルにはよくわかんない世界かも。
・ そうそう。知人でね、夫婦で農業しているんだけど。
うん。
・ 夫は有機農法、妻は自然農で、畑は別々っていうケースがあるんだよ。
へええ。
・ 二人で有機農業を始めたんだけど・・・
今じゃ、別々にやっている?
・ そう、まるでセクト争い。
セクト争い?
・ もう死語かな。また、話がずれたから草取りの話に戻そう。
うん。谷っ戸ん田の田んぼはどうなの?
・ おかげで今はさほど草も無く、いい状態だよ。
大勢で草取りしたから?
・ そうだね。回数も多かったし、みんな上手になっているし・・・
それは、よかったですね。(私は食べるだけでよかった)
・ まぁ、よかったと言えばそうなんだけど・・・
えええ、またなんか不平があるの?
・ いやぁ、人手と時間をかけ過ぎかなと思えてきて、ね。
いいじゃない。大勢でやるほど楽しいんでしょ。
・ うん。それが基本だし、効率は追い求めない、も基本だった。
あらら、過去形?
・ いや、追い求めたら楽しくないけど、全く無視してもなんか気持ち悪い。
ワガママに聞こえますけど。
・ 草取りって、チョウド良くやるのも難しいんだよ。

・ 庭の草を取るようにていねいにやっていたら、畑では時間がかかりすぎる。
そりゃそうだ。
・ 田んぼだってそうだよ。終らない。
それはわかる気がするけど・・・
・ 大勢でやるとそれがわからなくなることがある。
そうなの?
・ やっぱりていねいにやりたくなるんだろうけど、それで全体が見えなくなる。
それで?
・ せっかく人数がいるのにやりのこしがでちゃったりする。
うん。
・ きれいになったところと手付かずのところのマダラだったりもする。
うん。
・ なかなかちょうどよくならない。
それはそれでシロウトっぽくていいじゃない。
・ そう思えばいいんだけどね・・・
けどね、なに?
・ 1枚の田んぼを丁寧にやりすぎていたら、田んぼを増やせない。
増やしたいわけ?
・ いや、そういう意見もあって、ね。言っている本人が時間の使い方が下手。
まぁ、まぁ。あんまり言うとギスギスしちゃうんじゃないのぉ。
・ そうだね。やめておこう。
話をまとめてよ。
・ 農作業って、単位が小さくなるほどより手をかけたくなるものかもしれない。
そうね。一本の野菜をいつくしんじゃう。
・ それはそれでいいんだけど。でも、庭と畑と農場はチガウ。
農場としてやりたいのね。
・ うん、そして上農でありたい。
オチがついたね。

(いしだのおじさん)