第89回 余す所なく丸ごといただけるのは人間だけ

2024.7.1
映像の持つ力

日の出すぎ、田んぼに足をつけ、屈んでいるのは、私と夫と白いサギだけ。
白いサギはクチバシを水中に入れ捕食中。

私たちは朝の4時に起き、朝飯と通勤前の田植え。機械は使わない、一本一本、手で植えます。
早朝だけが、六月におそう猛暑日の中で、涼やかな空間で作業できる貴重なとき。

短冊状に伸びた苗代田が続く上空には、うっすら富士山が現れます。
ありがたいことに、手前に田園が広がるこの場所は、年中、富士山を見ながら野良しごとが出来るのです。

52年前に、耕作をやめたこの田んぼには、ホウネンエビ、ダルマガエル、ドジョウの他にフナ、ヨシノボリなどの魚も生息しています。

ぶるっ。水中の底に手を入れると、ブルっと大きな力が伝わります。アメリカザリガニだ。
泥で透明度が低いため姿は追えません。

あれ?ノコギリ状に削られた痕がき千切れた稲の葉っぱが漂ってきます。

田んぼを見渡すと、立派に分けつした苗が水面から出ていたのに、いつの間にか一本になっている。
ううっ、あの、アメリカザリガニが・・ 切ったの?食べたの?

全ての稲が切られていなく、ばら蒔きした神仁穂や、取り除いた稗も切られてはいません。

うーん、アメリカザリガニの動き、生態、田の水位の変化、稲の状態をたどり、今年の捕植はどうするか、
来年の田植はどう対処するかなど構想しながら、1本1本植え進めていきます。

あこちらに手をつけられた、無惨な葉を見ると、もし食べるなら、1本丸ごと食べてくれたらいいのにと思わずにはいられません。

小さな森のある畑と、田んぼの、野良しごとを記録した、ノラ日誌は15年目に入りました。

この記録は、異常気候や翌年の手がかりにもなるから、眠い目を擦りながらも続けています。

田植えの最終日、夫と二人、観察の様子や生態など調べたことを話し合う中で、アメリカザリガニ対策のヒントを見つけました!!

(中川美帆)

 

 

映像の持つ力