石田のおじさんの田園都市生活

第40回 TPPとな~に谷っ戸ん田 その2

2011.12.31
いしだのおじさんの田園都市生活

な~に谷っ戸ん田5年目の年の瀬、
最後の活動日は恒例のもちつきだった。

20人ほどの大人と6人の子どもが集った。
大人の7割は設立時からの仲間。
毎年のもちつきで身のこなしが板についてきている。
子どもは、6人中4人が今年加入。
3年生3人、2年生1人、幼稚園2人。
広い自由空間をニギヤカに走り回る。

前日の準備でひやかした米は約30kg。
(前日準備のみなさん、ありがとうございます)
今年初めて、自分たちで作付けて収穫したもち米だ。
昨年まではコシヒカリと赤米を作付けていたが、
今年は、話し合いで、「もちつきの米を自分たちで」
となり、赤米を休み、もち米を植えた。
これまで、もち米は園主から提供してもらっていた。
園主は1町5反以上の田んぼにいろんな米を作付けている。

園主の小屋の前に石臼を設える。
少し離れたところにへっついを二つ。
小高い丘の上の広々とした会場。
周囲から独立した空間なので、
我々は近くの車の往来を意識しないし、
近隣もこちらが出す煙も気にならない。
とても恵まれた場を使わせてもらっている。

薪は雑木林に無尽にある。
今年は特に多い。
台風と低気圧が木を倒し枝を散らしていったから。
前の週にその一部を拾い集めた。
私はチェーンソーで倒木を刻み、小3の坊主に運ばせた。
それらはまだじゅうぶん乾いていないから、
燃やすと燻される。
だが、私は自分が焚き火臭くなるのが好きだ。

もちつきが始まると気持ちが浮き立つ。
「コーフンするんですよ」と、
若い頃は自慢と冗談半分で言っていたが、本当だ。
なぜだろう。
仲間たちも笑顔が広がり、声が大きくなる。
そういうものだ。

今年から臼が石臼になった。
園主が世田谷の知り合いの農家から譲り受けたそうだ。
「捨てるなんて言っていたから」とのこと。
園主のネットワークや世田谷の農業の状況など
あれこれ気になったが、
それ以上は聞かずに想像・・・

杵は下ろすときでなく持ち上げるとき力を入れるものだ。
そして、重力を利用してもちの中心に落とす。
落としたら跳ね返らないように止める。
これらの動作で肝心なのはあくまで足腰。
腕力でナントカシヨウとしてはイカン。
と、ことばで解説しても始まらないが・・・
農の技は目でわかり、身体でおぼえるものだ。

よく蒸したもち米はつき始める前にこねる。
杵でこすりつぶすようにする。
これが実はつくよりもキツイし難しい。
しかし、役得がある。
「半殺し」を食うことができる。
米からもちになる途中のぼたもち状態。
こいつが美味いので、つまみ食いをするのだ。

そして、つき始めると手返しが要る。
このペアのリードをするのは基本的には手返し、
だと、思う。
私はそうしている。
今年は、3組の夫婦がペアを組んでもちをついた。
うん、楽しく見せてもらった。

大人が楽しみながら杵を振るっていれば、
子どもたちも「ヤリタイ」「ヤラセテ」だ。
子ども用の杵はない。
大人に手伝ってもらいながら、つく。
一人でつける3年生もいる。

つきあげたもちは、伸しもちにし、食べるのは一部。
餡、黄粉、辛味、納豆、海苔では、海苔が人気だ。
大福をつくるのも楽しい。
伸しもちはなかなか均等な厚みにならない。
だが、それも、いや、それこそ、手作りの妙味。
やっていくうちにいい形になる。
タカラモノのおみやげができる。

30kgの米を12臼でついて、伸しもちは20枚。
一通り終わったら乾杯だ。
すでに迎え酒を始めている御仁も・・・
運転のある何人かはノンアルビー。
昨年などはそのまま忘年会にしたが、
今年は別に地元野菜のイタリアンで忘年会を済ませている。

谷戸で蜂蜜を採っているwさんが鹿肉を差し入れてくれた。
ときに自分で撃った猪肉などくれる方だが、今回はエゾ鹿。
熾を並べ、網焼きにしていただく。
もちをぱくついていた子どもたちが肉に群る。
私がオカワリをした豚汁は子どもには不人気。
自分たちの里芋、大根、白菜が入っているのに・・・
まぁ、食べたいものを食べればいい。

自分たちの米、野菜、味噌・・・
春夏秋冬と自然の中で仲間と過ごしてきた。
かけがえのない谷戸の自然。
そして仲間。
ここにある時間そのものが宝。

これがTPPへのな~に谷っ戸ん田の回答・・・
だ、と言っても、
ワケガワカンナイ、ですか?

身近な自然と共にあり、
そこで農作物ができていく過程に寄り添う、
そして仲間と美味しくいただく。
そんな生き方・・・

効率的な生産をする経営体による農業ビジネス、
それも必要かもしれない。
しかし・・・
あえて小さな農に手間をかける。
そんな「市民の自給」こそ大事にしたい。

(いしだのおじさん@三鷹)