第82回 白鷺の次は、手乗りネズミ
2023.12.1映像の持つ力
水と太陽と風
とうとう来たか!
11月に入り8日目の朝、夫が仕事へ行く途中に、田んぼの稲の籾が落ち始めていることを目撃。
確認のため田んぼに向かうと稲のもみ殻だけがパラパラと地面に落ちている。
個の食べ跡はスズメ!もう鳥避けの網掛け作業は待ったなし!!
あら、ネズミ!!
霜が降りはじめたら、さつま芋の収穫も待ったなし。
11月23日、新しく借りた畑で、ひたすらシャベリング。
掘って掘って掘りすすんで行くと、小さなネズミが出てきました。
夫がそっと捕まえ、ネズミが落ち着いた頃に手のひらにのせて、鼻にゆっくり指をむけます。
ネズミの小さな鼻にあわせ、ちょんと鼻先に触れました。(見ているわたしは内心ドキドキ)
つぎに、あごをゆっくりなでると、気持ちよさそうにしています。
この状況を受けいれてくれたのか、手乗りネズミになりました。
手のひらの上の小さなネズミは、右や左を振り返り、そのあとは、じっと田んぼが広がる先を見ています。
地中に暮らすネズミは、手のひらの上から、どんな風景がみえたのかしら?
うちの新しい畑に植えた、さつま芋の地中から出てきた小さなネズミ。
毛はふわふわ。まるっこい。
家に連れて帰りたいくらい、かわいかった。
調べると、このこは、ハタネズミでした。
生態は、どうぶつ図鑑「ハタネズミ」(東京動物園協会のサイト)によると、
・低地から高山帯まで広く分布
・とくに農耕地や河川敷、牧草地などの草原的な環境を好む。
・平野部では宅地化や河川開発にともない数を減少させつつある。
(引用※1)
この、あたらしく借りた田んぼと畑は、ノラ作業をしながら富士山がみえる場所。
まさに地域は平野部。
せめて、うちの畑では、のびのび暮らしてね。
田んぼは、翌日に鳥避け網を張りました。
わたしが一人で網張り作業をし始めたその時、一匹のスズメが上空にやってきました。
うちの稲穂の真上をなぞるように飛んでゆく様子は、まるで偵察隊のよう。
ほんと、スズメは良く見てますよね。観察すると、群れでコミュニケーションを取り、フォーメーションを組みながら、次々と食料を確保してゆきますもの。
やれやれ、網掛けが間に合ってよかった。お陰さまで、スズメからお米を守ることが出来ました。
今年のお米づくりは、7月に畑の陸稲を移植したうえに、田んぼに水が入ったのは52年ぶり。
うちの稲が登熟期を迎える9月には、用水から水の供給は止まってしまいます。
そんな条件のなか、稲はなかなか立派に育ちました。
稲刈りは、本日完了。嬉しい(>ω<)。
二週間の天日干しを終えると脱穀が出来ます。
種籾を選抜し保管。残りの稲を脱穀し、手箕をかけ、籾付米の保管が完了です。
ようやく、田んぼを始めてから14年、途絶えることなく育ててきた種を継ぐことができます。
何とありがたいことでしょう。
種を畑に埋めただけで育った柿の木。鈴なりに実をつけました。
実生ですから、どんな実が成るかは食べてみないと分かりません。
あぐ。渋柿でした。渋のえぐ味で噛めないし喉も通らない。
でも大丈夫。干し柿にすれば美味しく頂けます。
あれだけの渋みが、天日に干すだけで消えます。
しかも、糖度は甘柿よりも高いのです。
柿の半端ない渋みの衝撃が甘さに変わる。
ここにはどんな作用が働いているのでしょう。
水と太陽と風を利用して、
食べ物の性質を変えて、余すところなく命をいただいてきた、
先人の知恵には頭がさがります。
小さな森のある畑では、小豆が鈴なりです。
モズは、小さな森のある畑のそこらに育つ果樹の木の枝に早煮えをのこしています。
カエルは畑の地中で冬眠中。収穫のとき、起こしてごめんなさいね。
果樹は花芽を出して春の準備をしています。
あと二ヶ月もすると、花芽がふくらみ、春告げ花の梅が咲きはじめます。
畑に植え替えた実生の梅は、枝いっぱいに満開に花を咲かせそうです。
生態系のなかで、人間は他の生き物に捕食されることはないけれど、人が食べものをつくることは、生きもの多様性に欠かせない。
田畑の生きものにいざなわれ、わたしたちも自然の摂理の時間を追いかけよう。
人も自然の一部。
(中川美帆)
<引用>
※1 どうぶつ図鑑「ハタネズミ」/東京動物園協会のサイト
https://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=383