第81回 自家採種、お米の種を継ぎ14年目
2023.11.1映像の持つ力
お米の種を継いで14年目。
晩生(おくて)の緑米を待ち、五色の稲すべてが穂先を下げ揃いました。
ありがたいことに、籾は胚乳が十分に溜められているように見えます。
まわりの田んぼに残る稲が刈りとられる前に、うちの稲がスズメに狙われないように、網掛けが必要です。
今年は、生育の差を観察するため、こうして水田に植え替えた稲と畑につくった小さな田んぼに残した稲と2ヵ所でお米をつくっています。
さて、小さな森のある畑につくった、小さな田んぼの稲の出来はどうでしょう。
籾の数は少なく、中身がスカスカのしいなも目立ちます。
天水のうえに陸稲、そして水不足ですから、当然よね。
ほんとうに、水田を貸していただけ、ありがたい。
相棒くんが自然農の田植えを始めてから14年。
おかげさまで、一年一年と、つなぎ続けた種籾を、途切れることなく来年に継承できます。
なんと、ありがたいことでしょうか。
地域のみなさま、お天道さま、ありがとうございます。
小さな森のある畑にある果樹は、春の準備に入っています
小さな森のある畑にある梅や杏子にスモモ。
枝に花芽をつけ、春の開花へ向かっています。
スモモは、毎度のこと、冬を待たずして、葉は毛虫にすっかり食べられました。
そんな葉が無いことはお構いなし。しっかり花芽をつけています。
あれれ? いくつかの枝にぱらぱらと、春に咲くための花芽が開いてます。
時期はずれの、急な気温の上がり下がりに反応したのね。
毛虫に葉を食べられたことで、休眠を誘導する植物ホルモンが足りなかったから?
それとも、狂い咲きは、樹木全体じゃないから、
異常気候に反応して、早く実をつけようとしたのかしら?
ごめんなさい。せっかく花を咲かせたのに実をつけられなくて。
一粒の種に秘められたその不思議
キュウリの種も継げそうです
雨不足で、去年に続き今年もキュウリは、ほとんど実を結んでくれませんでした。
種とりさえも諦めていたところ、11月を前にして、畑に横たわるキュウリを発見。
2本もあります。うれしい。種採りとしては十分の量だわ。
数年前までは、毎週、毎週、食べきれないほどに成長するキュウリに困っていたのにね。
たぶんバターナッツ
植えてないから分からないのです。
畝をお構いなしに、幾つもまたぎ、ぐんぐん蔓を伸ばした、これ。
この動きそして、葉柄から察するに、カボチャのはず。
ひとつ実がついていました。
見た目はバターナッツのようです。
バターナッツとすると、畑に戻したコンポストに入っていた種が発芽したのでしょう。
この実が、バターナッツだとすると、落ち葉堆肥農法でつくられた種の可能性があります。
どんなお味かしら。わくわくします。
うちの畑は、肥料や農薬なし、耕さない畑です。
人間の代わりに、ミミズが、土を肥やし、土壌をふかふか団粒構造にしてくれます。
しかも落ち葉堆肥農法をルーツに持つ種のうえに、肥料を入れていない畑で種が勝手に自生したカボチャ。
そんな野性力が発動されて育った、この実。
どんなお味でしょうか。
40億年もの時をかけつくられた命のひとつながり
この丸ナスは、自家採種して数年が経ちます。
今年も成長期に、天候不良です。暑く水不足の時期は、ずっと結実しても小さいままでした。
高温で水不足の時期は、実を大きくし種をつくる生殖成長をとめ、その時を待っているようです。
でも大丈夫。うちのナスは、秋を迎える終盤からが強い。
例年どおり、まずまずの大きさに成長しました。
お味は、もっちりなんです。ナスとは思えない。
味わいを含めた、ナスの個性は、うちの畑の生態系に対応した親種が、次世代に継承されることを繰り返し確立されます。
ずいぶんと、ナスの生育の様子、食味は、安定しています。
丸ナスも、うちの固定種になってくれそう!。
その土地独自の生物の多様性は40億年もの時をかけてつくられたもの。
先人がつくりあげた、里山は、どれだけその生態系の多様性の仕組みの緻密さに、そして命のにぎわいの発動に貢献したことでしょうか。
うちの、小さな森のある畑は14年目。
その命の営みの、その端に、ひとつながりのお仲間入りをしているのかぁ。
毎年、生き物がふえていく、この畑や、田んぼにいくと、元気になるのもうなずけます。
生きもののにぎわいが、まぶしいわけです。
こいった感覚はきっと、自然の摂理という絶対的なその仕組みの中で存在している、人間に備わった反応。
それを大事だと思う精神性は、人がここまで、成長する過程でつくりあげらえた価値観なのでしょう。
食べものは、体の一部になります。
食べることは、美味しいだけではなく、40億年の命のいとなみのひとつながりと、一体になれることなんですね。
人間は自然の一部。食べること、そのものが、あらわしています。
(中川美帆)