神奈川・緑の劇場 vol.27
2023.9.30神奈川・緑の劇場
「みんなで農作業をすることがもたらす豊かさについて」
ブルーベリーの摘み取り
幼い子どもでも一緒に作業できるのがブルーベリーの摘み取り。観光農園ではないが、親子、友人、会話しながら。常連の一家は、今年は何キロ取れたか?かなり「本気」で収穫する。子どもたちも経験すみ。家族の絆づくり、出会った家族同士のコミュニケーション、生産者との再会。 ふだん聞けない生産者の話を聴けることも貴重だ。
みかんの収穫作業
ブルーベリーが、炎天下の、熱中症に注意しながらの作業に対して、みかんの収穫作業は、天候に恵まれれば、富士・箱根・相模湾に続く景色を堪能しながら、心が癒される農作業になる。みかんの木の下や間をくぐったり、木の上をよじ登ったり、大人では苦労する作業も 子どもたちにはうってつけかもしれない。太陽が一つ一つの蜜柑の実になったような、メルヘン中、心地よい疲れの帰路となる。
玉ねぎの収穫作業
味では、全国トップレベルの玉ねぎを収穫。大産地では機械化する作業だが、小規模な神奈川では、人手を要する。しかし、誰でもできる農作業だ。ただし、多少は力仕事になり、本格的な農作業の一端を経験できる。
同様に人手を必要とするが単純な作業の連続だ。そして、自分が植え付けた玉ねぎの収穫までも体験できる企画も組むことができる。
畑の草取り
除草剤を使わない畑で、雑草対策は様々あるが、例えば人参の場合、人参よりもはるかに成長の早い雑草を抜く作業があった。しかし、人参も一緒に抜いてしまいがちなのだ。少しでも人参の根を動かしたらその人参は成長しない。緊張を伴う作業だ。生産者にしてみれば、ロスは覚悟で体験してもらう作業になる。
米作り
一連の米作りの過程を余すことなく体験する企画と、部分的に田植えだけ、稲刈りだけなどを体験する企画など様々だが、あえて、昔ながらに泥田に裸足で入って田植えをしたり、 稲刈りを手刈りし、稲架かけで天日干しの作業をするなどの体験も貴重だ。泥の感触、稲わらの匂いや温もりも体験したい。
有機農法の一つに合鴨農法がある。合鴨のヒナを田植えに合わせて田に離し、稲と一緒に成長させる。稲刈りの前に陸に上げ餌を変えて食肉用に太らせる。合鴨農法は、合鴨の肉用への出荷と合わせた農法だ。そして、合鴨を絞めて食する体験をする。命をいただいて、いきることを実際から学ぶ。
竹林の手入れから竹細工の作品づくり
森の手入れ、竹林の手入れは、林業に属するようだが、里山では農作業の一環だ。森や竹林の手入れができず荒れた状態で耕作地や人家に迫り、耕作できなくなるばかりか、けものたちの侵入を許し、食害を受ける。里山の手入れは、農業生産とも直結している。
未来にますます必要な取り組み
これらの農作業の体験が、参加した一人一人にどのような影響を与えることになるのだろう?それぞれの今の状況によって、与えられるもの、得ることができることは多様であろう。 だが、現代人、未来の人々にとって、土に触れ、光を浴び、風を受けて仲間と力を合わせ語り合う体験が、ますます大切になる。
「参加した人たちの具体的なエピソード」 多くの皆さんの大切な居場所
参加した人たち、一人一人に物語があることは疑いがありません。特に、生産者が受け入れる農作業では、生産者とその家族、一緒に働く方々との出会いが大変に貴重なものと思います。そのような中で、学校に通えなくなった女の子が、父親と定期的に畑に通って、今では元気な社会人に成長している姿や、同様に、学校や家庭に居場所の無い男の子が、明るい笑顔で、ここにいるのが楽しいと言う姿が胸に迫ります。 子どもや青年に限らず、あらゆる世代で生きづらさが問題となる時代に、「里山」と「里山を守る人々」の役割はますます見直されることと思います。
農作業によるコミュニティー作り、アートや地域文化とのつながりを中心に
里山との関わりのなかから、文学が生まれ、音楽が生れ、舞踊が生れます。映像文化や、絵画にもなるでしょう。未来に向かい、伝承されてきた祭りや民話・伝説を、あらためて見直す時と思います。人間の営みの原点が里山にあると思います。 そうして、すでに「地産地消」も当たり前になり、学校給食にも取り入れるなど、地域の食文化に注目が集まる時代になりました。山河と海との繋がりを俯瞰した神奈川エリアの豊かさ、多彩な自然と文化・歴史をあらためて見直し、一方で横浜市内18区それぞれの見事なまでの個性の違い、魅力にも注目して、未来の子どもたちに手渡していきたいものと考えます。
時代とともに変わる体験の意味
この40年の間に、「体験」の意味合いが変わってきたように思います。 変わらないことは、「未経験な皆さんに知ってもらいたい」ということではあるのですが、今の農業の現場は、受け入れる側の個人差があるとはいえ、全体としてはゆとりが無く、必死になってきているということです。ゆったりと体験してもらう、よりは、精いっぱい応援に来てもらいたい(かつてはそんなことはありませんでした。「遊び相手」だったのです。)
体験したい方も、求めるものに変化があるのでは
これも、当然個人差はあることですが、なぜ、体験したいか、に強い要求が出てきている場合が増えてきているのではないでしょうか?コミュニティーとか、地域文化にもつながるのではと思います。 安全な食べものが欲しい。化学物質過敏症、アレルギー、発達障害等々、食べものが影響する困難から、安全な食べものを得る機会を探りたい。 人間関係に疲れる。土に触れ、自然に触れ、一つ一つ積み上げるように重ねていく森や農地の作業から得る生きる力の魅力。 家庭菜園からでも、自分で畑づくりを始めたい。
専門か非専門か、専業か非専業か、に関わらず、携わる時代
農林水産業の担い手が、今後、高齢化によって急激にリタイヤする時代です。一方で、世界の人口は増え続け、気候変動、地下水の渇水、ロシアのウクライナ侵攻のような不測の事態によって、自らの食べ物の確保が不安な時代です。 食べものや暮らしの身の回りの品々を廻っては、健康にも深刻な問題が次々と明かになり、例えば、マイクロプラスチックによる海洋汚染、有機フッ素化合物PFASによる住民の血液検査が必要とされる環境汚染、ネオニコチノイド系農薬・グリコサートの健康被害、ゲノム編集食品、人口甘味料・異性化糖による健康被害、香りによる香害など、放射性物質汚染にとどまらず私たちをむしばみます。
横浜市南区では特に、子どもの居場所づくり団体と提携して、NORAの活動を、子どもたち、青年たちの役に立つかたちに繋げていきたいと考えています。
NORAが掲げる「里山の知恵を暮らしに活かす」「都会の中に里山の入り口を!」というテーマがいよいよ大切になるな時代。日本列島の七割近くが森林。その中で、人々の暮らしと密接に関わり 暮らしに利用してきた身近な自然、里山からは燃料にする薪炭林、枯れ葉 を堆肥にして畑に施し、山菜、キノコの採集、建設用材、竹林も余すことなく資材として利用し、様々な生活道具となってきました。また、雑木林と言うように多様な植生があり、生き物たちの命が育まれ、最近では、億を超える土壌の微生物の働きが注目されています。そして、生物多様性をたたえた里山からは、豊かな栄養を含んだ水がもたらされ、作物を栽培する農地を潤し、川となって海に流れ出ます。やがて、海の生き物たちを育むのです。
循環型社会の典型的な姿を里山に見ることができます。大切なことは、人が適切に関わり、暮らしに利用することで豊かな里山が保たれるのです。
1950年代後半からの高度経済成長期に、私たちを取り巻く暮らしは一変しました。自然環境も破壊され深刻な汚染が進みました。
私たちが暮らす、横浜・神奈川もその最大の影響を受けた地域の一つに違いありません。わずかに残された里山も利用されなくなって荒れていきます。一例をあげれば、薪炭として更新されなくなった木が大木化して、伐採するにもできなくなっているのです。
農地もまた、条件の厳しい山の上から耕作放棄が始まり、瞬く間に荒れ野となってしまいます。繁殖力の旺盛な竹林は、森や農地を侵食し、住宅までも脅かします。竹もまた、利用されなくなったためです。
横浜市には現在30近い森の手入れに携わるボランティア団体が活動しています。
神奈川県は、耕作面積は47都道府県の中で、下位の面積しか残されていませんが、農業生産額では全国で35位前後を保っています。
横浜市は、県内の市町村でトップの生産額ですし、神奈川の新規就農率は、全国に比べれば低くはないのです。それでも、農業従事者の高齢化は進んでいます。危険を伴う森林保全ボランティアの担い手も高齢化し、次の世代への継承が急務となっています。
(2023年9月30日記三好豊)
・京都で振り売り(伝統的な農産物の移動販売)をする角谷香織さん→★★
・日本の農産物流通に3つの提案 神奈川野菜を届けて36年 三好 豊→■■三好 豊(みよしゆたか)
“50年未来づくりプロジェクト”を提唱します。
“もりびと”が木を植えて育てるように、子どもたちが社会の真ん中で活躍する時代のために、今日できることを一つずつ。老いも若きも一緒になって50年のちの日本の景色を想い描きたい。
1954年に生まれ父親の転勤により各地で育ちました。 1975年10月、杉並区阿佐ヶ谷南の劇団展望に入団。1982年退団して横浜に戻り演劇活動に参加してきました。1987年5月、(有)神奈川農畜産物供給センターに入職し、県内各地、各部門の生産者に指導を受けることができました。2004年に退職し「神奈川・緑の劇場」と称して県内生産者限定の野菜の移動販売を始めました。NPO法人よこはま里山研究所・NORAの支援はたいへんに大きく、これからも都市の暮らしに里山を活かす活動の一環として生産者との関わりを大切にしたいと考えています。また(株)ファボリとその仲間たちとの繋がりには、心躍るものが生まれています。